街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・ペルミ動物園が間もなくミルカ(ユムカ)の出産準備体制移行へ ~ 運気を引き寄せる流れに乗る同園

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ミルカ(ユムカ)
Photo(C)Пермский зоопарк/Екатерина Мельникова

ロシア・ウラル地方のペルミ動物園はこのところ自園で飼育しているホッキョクグマの動向を発信する機会が多くなってきたようです。実に素晴らしい傾向です。二日ほど前にペルミ動物園がアンデルマ、セリク、ミルカ(ユムカ)の三頭のホッキョクグマたちの近況を発表していますが前回投稿したように間もなく4歳になる雌(メス)のミルカ(ユムカ)には妊娠、そして出産の期待がかかっているわけで、今回の発表ではミルカ(ユムカ)は一層体重が増加し体を動かすことをしなくなっているそうです。食べ物の選り好みが激しくなっているそうで同園としては彼女の妊娠は確実であり、あとは出産を待つのみという認識を抱いている様子を感じさせます。

同じく間もなく5歳になるであろう野生出身の雄(オス)のセリクは多くの時間をプールでの遊びに費やしているそうで、おもちゃ遊びにも余念がないようです。間もなく33歳になるであろう御大アンデルマは非常に健康状態がよいそうでこれから迎える冬にそなえて摂食量も増えているようで、水に中でセリクの相手などもしてやっているそうです。アンデルマというのは水に入らないホッキョクグマだったのですが、今年あたりから急にプールに入るようになってきたのは驚きです。
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ミルカ(ユムカ - 左)、セリク(右)、アンデルマ(奥)
Photo(C)Пермский зоопарк/Екатерина Мельникова

少なくとも現時点では上の写真のようにこの三頭はさほど広くもない飼育展示場に同居しているわけですが、セリクがミルカ(ユムカ)にちょっかいを出さないようにアンデルマがプールでセリクの相手をしてやっていることはミルカ(ユムカ)にとってはありがたい話でしょう。アンデルマはそういったことを意識して行っているかどうかは別にして、こういったことが彼女の「人(熊)徳」なのです。
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アンデルマ Photo(C)Екатерина Мельникова

おそらく10月に入ればミルカ(ユムカ)はアンデルマやセリクと別飼育となって左側にある別区画に入れられるでしょう。その後で時期を見計らって産室に入れられると思います。そうなるとメインの飼育展示場はアンデルマとセリクだけになると思います。こういったあたりはペルミ動物園ならばうまく事を運ぶだろうと思います。
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ミルカ(ユムカ)
Photo(C)Пермский зоопарк/Екатерина Мельникова

非常にうまく運気を引き寄せる流れに乗っているペルミ動物園です。こういった流れを作り出しているのがアンデルマの存在なのです。ホッキョクグマの繁殖にもこういった運気といったものの存在をバカにしてはいけません。日本の動物園にはそういったものを引き付けようといったものが感じられないわけです。いつも逆風に立ち向かっているのが日本の動物園だという気がします。ペルミ動物園はロシアの地方都市の小さな動物園ですし予算もそれほど多くはないだろうと思います。しかしスタッフの方々はよく頑張っていますし応援してやりたいと思います。

ここで以前にご紹介していた映像ですが、ミルカ(ユムカ)とセリクがペルミ動物園に来園したことを報じる地元TV局の2013年秋のニュース映像を再度ご紹介しておきます(というよりもこれは本ブログをご覧いただいているノヴォシビルスクのファンの方々のためにですが)。まず最初の映像では2013年秋に極北の地でセリクが野生孤児として、しかも密漁者から狙撃されて負傷した状態で保護された時の映像、そしてペルミ動物園で飼育されるために入園した直後の映像です。


いかにセリクは保護されたか - Как спасли белого медвежонка

次の映像はミルカ(ユムカ)がペルミ動物園に入園することを報じるTVニュースの映像ですが冒頭にカザン市動物園時代のミルカ(ユムカ)が母親であるマレイシュカと同居している貴重な映像が挿入されています。私がカザン市動物園で撮影した映像以外でちゃんとしたものとして残っているものとしては非常に数の少ない貴重な映像です。


ペルミ動物園でのユムカ(ミルカ)とセリクの飼育について - Юмка и Сэрик: сердца белых медвежат соединит Пермский зоопарк

そして次はユムカ(ミルカ)のペルミ動物園への入園のニュースです。


ユムカ(ミルカ)の入園 - в Пермский зоопарк привезли медведицу

「通常単独生活を送るホッキョクグマは原則として雌雄別々に飼育することが望ましい」という一昨日の天王寺動物園の発表の中の記述ですが、それは Zoological correctness です。近年ではノヴォシビルスク動物園のゲルダとカイ(クラーシン)ヤクーツク動物園のコルィマーナとロモノーソフミュルーズ動物園のセシとヴィックスのように幼年期から同居させて見事に5歳前後で繁殖に成功しているといった事例があるわけです。ペルミ動物園のミルカ(ユムカ)とセリクもそれに続きそうです。飼育下における実践では Zoological correctness に対する反証としての海外での成功事例はあまた存在しています。「単独生活」という点で言えば、最近の欧米の動物園では雌(メス)の幼年・若年個体はむしろ複数で同居させる方向になっています。そのほうが繁殖成功率が高いということだそうです。

(資料)
Пермский зоопарк (Sep.20 2017 - Белые медведи в сентябре)

(過去関連投稿)
ロシア・ペルミ動物園がミルカ(ユムカ)の妊娠・出産の可能性を言及 ~ 無名の彼女が脚光を浴びる日を期待
# by polarbearmaniac | 2017-09-23 00:30 | Polarbearology

大阪・天王寺動物園がゴーゴの帰園に対する考え方を発表 ~ 両立せぬ大阪と白浜の飼育・展示方針

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ゴーゴ (Белый медведь Гого / Eisbär Gogo)
(2012年4月19日撮影 大阪・天王寺動物園)

大阪の天王寺動物園が自園所有の12歳の雄(オス)のホッキョクグマであるゴーゴ(ロシア名:クライ 2004年12月3日 ロシア・ペルミ動物園生まれで現在は白浜のアドベンチャーワールド - 以下 AWSと略記 - で飼育)の今後についてファンから寄せられた意見への回答の形を取って9月21日付けで説明を行っています(「ホッキョクグマのゴーゴに関していただいているご意見について」)。いったいどんな意見が寄せられていたのかについての具体的記載はありませんが、その記述("心配をおかけしてることを申し訳なく思っております")から推し量ると二つのことが類推できます。一つは、ゴーゴの大阪についての見通しが示されないことへのファンの不満、もう一つはAWSにおけるゴーゴの扱いへの不満.....そういうことではないでしょうか。こういったことは私が大阪に行ったときにもファンの方々の口から聞いたことがあります。
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ゴーゴ (Белый медведь Гого / Eisbär Gogo)
(2012年4月19日撮影 大阪・天王寺動物園)

率直に言って今回の天王寺動物園の回答は非常に良く練られた回答ではあるものの幾分優等生的であって、関西の熱心なゴーゴファンにとっては必ずしも十分に満足できる回答ではないのではないかと思います。しかし内容的には妥当であると私は感じました。要点は以下の二つでしょう。

(1)ゴーゴの帰園については現時点では具体的には決まっていない。
(2)AWSのゴーゴが質の高い生活を送れるようにAWSと連携したい。

(1)についてですが、ゴーゴの帰園時期は早くても2019年であることを示唆しています。(2)についてはAWSの取り組みが不十分であると天王寺動物園は一応はファンに対して認めたという意味でしょう。
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ゴーゴ (Белый медведь Гого / Eisbär Gogo)
(2012年8月25日撮影 大阪・天王寺動物園)

先に述べた大阪のファンの抱いているらしい二つの不満というのは実は根本的に同じことを意味していると思います。要するにAWSでのゴーゴの扱いに不満があるので早く大阪に戻してほしいということだろうと思います。私は以前には(つまり本ブログ開設以前)にはAWSに何回か行ったことがあります。あの施設は横浜・八景島のシーパラダイスと同様に飼育展示場は室内にあり(現在でも多分そうでしょう)温度などは完全に管理されているためにホッキョクグマたちは夏の暑さに悩まされるということのない施設です。しかし正直言ってあのような室内の飼育展示場は私にとっては息の詰まるような閉塞感を感じてしまいます。これもまた後日続編を投稿しようと準備中なのですが、先日から内容をご紹介し始めている「ロシアの動物園のホッキョクグマ飼育ガイドライン ("МЕТОДИЧЕСКИЕ РЕКОМЕНДАЦИИ по содержанию белых медведей в условиях зоопарков России")」においてはホッキョクグマの飼育展示場は屋外でなくてはならないと定めているわけです。つまり八景島のシーパラダイスや白浜のAWSはこのガイドラインの基準には合わないことを意味しています。こういった条件はAZAの基準には定められておらずロシア独特の基準だと思いますが私には納得できる内容です。話がすっかり横にそれてしまいました。今回の天王寺動物園の発表から察しますと、大阪のファンの不満はAWSの飼育展示場が室内にあることではなく、エンリッチメントの不足に向けられているように思います。だから天王寺動物園は「エンリッチメントなどの取り組みを加速していただいております。」と述べているのでしょう。
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ゴーゴ (Белый медведь Гого / Eisbär Gogo)
(2012年4月19日撮影 大阪・天王寺動物園)

しかしどうでしょうか、AWSという施設はホッキョクグマの個体識別を無用なものと考えて名前すら公表や表示なども行わない、つまり「種としての展示に徹している」という独特の方針を貫いている施設です。それは展示だけではなく飼育に関しても同じなのです。ところが一方でエンリッチメント、たとえばおもちゃを与えたりするといった飼育方法の底流に流れているのは種としてではなく個体として飼育動物を取り扱うという考え方が根底にあるわけです。つまりAWSが貫いている飼育方針とエンリッチメントの考え方の前提には相容れないものがあるといっても過言ではありません。もっと別の言い方をしてみましょう。現在、天王寺動物園でシルカに対して行われているエンリッチメントは彼女の来日した経緯とか彼女の性格を考えて行われているやり方なのです。つまりエンリッチメントは個体別に異なるやり方を行いことが前提として存在しているわけです。一方でAWSはそもそもホッキョクグマを個体としては捉えず種としてのみ捉えるわけです。個体差を重視しないわけですから、そこにはエンリッチメントが存在する前提はないというわけです。これらは正反対の考え方なのです。私の見たところ、旭山動物園のホッキョクグマの飼育に対する考え方は個体よりも種として捉える考え方、つまり飼育に関してはAWSに近い考え方をしているように思います。ただし旭山動物園は展示に関しては飼育展示場にホッキョクグマの名前、誕生日、誕生地、性格などを詳しく記載しており、来園者にとっては非常に有益な個体情報を提供している点でAWSとは全く異なるわけです。性格まで紹介している動物園はあまりないでしょう。つまり旭山動物園は飼育に関しては個体としてよりも種としての考え方を優先し、展示に関しては種よりも個体としてを優先しているわけです。AWSは飼育も展示も、個体よりも種としてを圧倒的に重視するわけです。エンリッチメントという概念は実は根本的に種よりも個体を重視した意識から出てくるものであって、その逆ではないと思われます。ですからAWSは根本的には天王寺動物園が現在シルカに対して行っているようなエンリッチメントをゴーゴに対して行ったとしても表面的なものに留まるだろうと思います。つまり、大阪のゴーゴファンの不満は不満としてあり続けるでしょう。飼育哲学の違いは如何としても埋めがたいというわけです。


活魚のプレゼントを待つゴーゴと水中での捕食 - Gogo the Polar Bear's Meditation before catching live fish, at Tennoji Zoo, Osaka, Japan, on Aug.25 2012.

AWSのオホトも間もなく26歳です。もうこれ以上、彼女の繁殖に期待することは難しいと思います。つまりゴーゴがAWSに留まる意味はもうないとも言えるでしょう。私でしたらゴーゴをとりあえず神戸の王子動物園に移動させるようにリクエストしますが、大阪と神戸という二つの都市の関係には微妙なものがあるのでしょう。関東に住む私にはよくわかりません。

総括すれば、今回の天王寺動物園の回答は妥当な内容だと思いますし誠意も感じられる回答だと思います。

(資料)
天王寺動物園(Sep.21 2017 - 「ホッキョクグマのゴーゴに関していただいているご意見について」)
# by polarbearmaniac | 2017-09-22 01:00 | Polarbearology

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