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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

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男鹿水族館の印象 ~ 理念と現実の狭間で

男鹿水族館の印象 ~ 理念と現実の狭間で_a0151913_15522476.jpg
      Photo(C)朝日新聞社

もともと人の書かないことや言わないことを発言したり紹介したりするのがこのブログの目的ですから、男鹿水族館(以下、GAOと略)に対する不満(アクセスの悪さetc)を今さらここで私が繰り返してもしょうがありません。そんなことは他の方々が言ったり書いたりしてきましたし、これからもそうでしょう。ですので、私はここではあえて週末に訪問したGAOの素晴らしかった点を挙げましょう。

まず、このGAOには明らかにその設計段階での理念(「哲学」といっては大げさですね)があって、それが具現化されている点には感心しました。それは、あそこにはホッキョクグマを海洋生物の「頂点」として位置づける考え方によって展示の設計・構成がなされている点です。それは何も、「強さ」とか「食物連鎖」とか、そういったこととはやや異なる点からです。そしてその「頂点」に位置するホッキョクグマの先にだけは海岸がある....そういう構成です(まあ、実際には豪太は海には出られませんが)。 秋田県の知事さんが、なぜあれほどまでにホッキョクグマに固執したのかの理由がよくわかりました。GAOの存在理念には「頂点」としてのホッキョクグマの存在が不可欠であったということです。「非日常的な空間」おける、こういった一種の見えざるヒエラルキーの存在は、あそこを訪れた人が展示を見て散漫な印象しか抱かなくなる危険性を回避する役割を果たしているように思われました。

こういった点は実によいとは思うのですが、そのGAOの設計理念の素晴らしさは「諸刃の剣」でもあったわけです。あそこに一度行ってみて比較的すっきりと整理された印象を持つが故に、その点においてリピーターが存在しうる可能性に対する否定的な要因となってしまっていますね。 「1回の体験」で見事に完結してしまい、次がない....そういった感じがしました。

パリにおいて、なぜルーブル美術館よりも、展示作品の少ないオルセー美術館のほうがリピーターの比率が多いのか...印象派以降の身近な近代絵画を展示しているからなのだと言ってしまえばそれまでですが、私に言わせればオルセーのほうが「ヒエラルキー」の存在が希薄だからだと考えています。オルセー美術館は1回の訪問で完結することがないわけです。 何度行っても前回見逃した新しい発見があるからです。

男鹿水族館....その理念がうまく具現化しているが故に、その将来は多難かもしれません。
by polarbearmaniac | 2010-09-06 17:00 | 動物園一般

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