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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園、スキーバ園長来日へ

ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園、スキーバ園長来日へ_a0151913_19294975.jpg
ロッシー(ピョートル) 2010年11月13日 於 日本平動物園

2月17日付けの朝日新聞(静岡版)にサンクトペテルブルクのレニングラード動物園長のイリーナ・スキーバさんが20日に来日する旨の記事が出ています。記録用に記事をコピーしておきます。

>静岡市立日本平動物園(駿河区)の人気者、ホッキョクグマの「ロッシー」(オス、3歳)の「お嫁さん」探しが本格的にスタートする。国内にいるホッキョクグマはオスが多いこともあり、欧米など海外育ちのメスから候補を探す可能性が高いという。 20日から24日まで、ロッシーが生まれたレニングラード動物園(ロシア)から、イリーナ・スキーバ園長と獣医長のエレーナ・スイソエワさんが来静。ロッシーの成長ぶりを確認したうえで、海野隆至園長らと繁殖計画について話し合う予定となっている。 スキーバ園長の来園は2年3カ月ぶり。海野園長は「すぐには(お嫁さんが)見つからなくても、ロシアや欧米にいるメスの状況などについて情報交換し、パイプづくりはしておきたい」と語る。 他に、肉球を痛めがちなロッシーのけが予防策などについても意見交換する予定。

以前このブログで「ロッシー(日本平動物園)の繁殖を考える」、「ロッシー(日本平動物園)のパートナー探し開始について ~ その『希望』と『危うさ』」という2回の投稿でこの件をいろいろ考察したことがあります。スキーバさんに同行されるのは獣医のエレーナ・スイソエワさんだそうですが、これはロッシーのケガの治療に対するアドバイスを得るためでしょう。下の写真の、向って左の方ですね。
ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園、スキーバ園長来日へ_a0151913_19393017.jpg
Photo (C) Комсомольская правда

海野園長さんが「情報交換とパイプづくり」という2点を挙げているのはもっともなことだと思います。これはどうしても重要です。「ホッキョクグマ繁殖検討委員会」は当面のところ国内個体に限定した繁殖プランを構築することに没頭せざるを得ないでしょうが、もう日本のホッキョクグマ界における繁殖は国内個体だけで維持することは到底困難だと思いますので、一方で海外から新しい血を入れることも行わねばなりません。「ホッキョクグマ繁殖検討委員会」の活動とは別に、海外個体の導入を可能とさせるためには日本平動物園がレニングラード動物園と協議していただくことも大いにやっていただきたいと思います。「海外育ちのメス」ということは、欧州やアメリカではありえなく、すなわちロシアの個体ということを意味するでしょう。

しかしやや気になることが2点ほどあります。まず第1点、それは最近モスクワ動物園が若年のロシアのホッキョクグマの譲渡・売却に関する集中管理を行っているかのような行動が目立っているからです。そして、一昨年生まれた3頭の赤ちゃんに関する情報を表に出さないようになっています。レニングラード動物園は数年間にわたってモスクワ動物園から逆鱗をくらっていたわけで(そのあたりの簡単な事情は以前ここで投稿しています)、レニングラード動物園の現在ロシア国内のホッキョクグマに対する繁殖配置への発言力と影響力は以前ほど強くなくなっているのが現実です。ロッシーのパートナーとなりうる雌の個体の候補は、まずロシア国内の動物園で飼育されている(あるいはこれから生まれる)「アンデルマ/ウスラーダ系」以外の個体なわけですが、問題はこれを貸与という形で日本に送り込むだけの影響力を行使できるかどうかです。レニングラード動物園が影響力を持ち、そして口利きできるロシア国内の動物園は、おおむね「アンデルマ/ウスラーダ系」の個体が飼育されていますので、そうではない血を持つ個体を提示することは容易ではないようにも思われます。一方、動物園で飼育されている個体でなければ野生の個体となるわけですが、これは連邦政府の「自然管理局」の許可さえあれば国外に出すことは可能ですが、その許可を得るプロセスは不透明です。
ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園、スキーバ園長来日へ_a0151913_1945028.jpg
Photo (C) Ильи НАЙМУШИН / РИЦ "ТАСС-Сибирь"

私がスキーバ園長さんならば、以前御紹介していますこのタイミール半島で野生の孤児として保護され、現在クラスノヤルスク動物園で飼育されている1歳になったばかりの雌の2頭の赤ちゃん(上の写真)のうち、2~3年後にカザン動物園に移動することが決まっている1頭の個体を狙ってみたいですね。しかし問題は連邦政府の「自然管理局」の許可を取り付けられるかどうかと、カザン市動物園、そしてその後ろにいるであろうモスクワ動物園を説得できるかどうかです。非常に長い道のり作業となるでしょう。
ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園、スキーバ園長来日へ_a0151913_19464888.jpg
スキーバ園長 Photo(C) Петербургский дневник / Марина Алексеева

次に第2点目。一昨日も御紹介していますレニングラード動物園の「黄金のペア」であるウスラーダとメンシコフですが、レニングラード動物園としてもそろそろこのペアの次世代の後継ペアのことを考えるべき時期に来ているからです。ちょうどそれが、ロッシーの年齢のホッキョクグマあたりが候補になるわけです。ロッシーのパートナー候補と「黄金のペア」のウスラーダの後継の雌、この2つがバッティングする可能性があり、スキーバさんも頭が痛いかもしれません。しかし、ホッキョクグマに対して並大抵ではない愛情を感じているスキーバ園長さんですから、私は何らかの奇手を用いてロッシーのパートナーを探してくる予感がします。何事も魑魅魍魎としたロシアですから、何が起こるかわかりません。良いほうにそれが起こってくれることを期待しています。

(資料)
朝日新聞 (静岡版)(Feb 17 2011)
Комсомольская правда (Dec.13 2009)
Петербургский дневник (Aug.30 2010)
(過去関連投稿)
ロッシー(日本平動物園)の繁殖を考える
ロッシー(日本平動物園)のパートナー探し開始について ~ その「希望」と「危うさ」
静岡・日本平動物園、ロッシーの繁殖に向け驀進
ロシア・サンクトペテルブルクのツインズ別離の時来る ~ 1頭がモスクワ動物園へ!
モスクワ動物園、ロシア国内の幼少ホッキョクグマの売却一元管理を開始か?
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by polarbearmaniac | 2011-02-18 09:00 | Polarbearology

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