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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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モスクワ動物園の幼年個体、ペアとして中国・北京動物園へ

モスクワ動物園の幼年個体、ペアとして中国・北京動物園へ_a0151913_1740139.jpg
雌のモスクワの一人っ子ちゃん 2010年7月30日 於 モスクワ動物園
モスクワ動物園の幼年個体、ペアとして中国・北京動物園へ_a0151913_17401644.jpg
雄のサイモンとサムソン 2010年4月29日 於 サンクトペテルブルク・レニングラード動物園


とうとうその日がすでに来てしまっていたようです。しかもほとんど秘密裡に。

モスクワからのモスコフスキ・コムソモーレツ(Московский Комсомолец)紙(2月17日付け)の報道によりますと、モスクワ動物園の幼年個体(雄と雌)が中国の北京動物園に送られました。雄についてはサンクトペテルブルクのレニングラード動物園から移送されてきていた個体だということですから、これは一昨年暮れに双子で生まれたあのロッシーの弟のサイモンに違いありません(過去のこの投稿、 「ロシア・サンクトペテルブルクのツインズ別離の時来る ~ 1頭がモスクワ動物園へ!」をご参照下さい)。サイモンと双子の兄弟のサムソンはすでに韓国・ソウル動物園に昨年秋に送られています(過去のこの投稿、 「サンクトペテルブルクからソウルに旅立つサムソンの映像」をご参照下さい)。この双子の兄弟、こうしてソウルと北京で暮らすことになったのです。一方、今回モスクワからこのサイモンと共に送られ、北京動物園でペアを組むことになる雌といえば、これはあのムルマお母さんが一昨年暮れに生んだ一人っ子ちゃん(過去のこの投稿、 「ムルマお母さんと一人っ子ちゃん」をご参照下さい)に違いありません。なぜそうなるかといいますと、モスクワ動物園で一昨年暮れに生まれた他の赤ちゃんとしてはシモーナお母さんの生んだツインズ(過去のこの投稿、 「モスクワツインズとシモーナお母さん」をご参照下さい)がいるわけですが、このツインズはサンクトペテルブルクのウスラーダの孫です。北京動物園に行く雄のサイモンはウスラーダの息子ですから、これはペアを組むことができません。よって自動的に、雄のサイモンとペアを組む雌はムルマお母さんの娘の一人っ子ちゃん以外にはありえない...そういうことなのです。以下、この一人っ子ちゃんとムルマお母さんを映像で見ていただきましょうか。



実はモスクワ動物園の幼年個体が中国に送られるらしいという情報は以前からありました。それは、モスクワ動物園の獣医部の責任者のミハイル・アリシネツキー氏がすでに昨年の12月の初旬の段階でロシスカヤ・ガぜータ(Российская газета)紙のインタビューに答える中で、モスクワ動物園のホッキョクグマを中国に送るための出国動物検疫の予定があることを述べていたからです。私が昨年秋に北京に行きましたときにこの動物園に行きましたが、ホッキョクグマはいなかった件については以前の投稿、 「北京動物園から消えたホッキョクグマたち」で御紹介しています。今回送られたこの雄と雌のペア、あの飼育環境で本当に大丈夫でしょうか? 心配ではあります。今回の2頭(サイモンと一人っ子ちゃん)の送られた北京、そして昨年秋にソウルに送られたサムソン、いずれも私がロシアで会ってきた個体ですので、彼らの今後が心配です。でもまあ、北京もソウルも思い立ったら翌日というような感じで簡単に行けますから、時々様子を見に行ってきましょう。私にとっては気分的には北京もソウルも男鹿水族館(GAO)よりも近いです。それにしても北京動物園、血縁関係の無い雄と雌のペアをモスクワ動物園からいとも簡単に入手したようです。モスクワ動物園には相当多額の金銭を支払っていると思われます。GAO(秋田県)は雄と雌のペアを入手するために各地の動物園や動物商などをあたって莫大な労力を費やしたようですが、GAOがそういうペアを探した年回りが悪かったと思います。北京動物園はモスクワ動物園だけを交渉の相手にして、こうして血縁のない雄と雌のペアを入手したわけです。

雄のサイモンについてはすでにサンクトペテルブルクでウスラーダお母さんとの親子の別れを経験していたためでしょう、数分間だけ効く軽い麻酔注射で簡単に移送用ケージに入れることができたそうです。数分経過して目が覚めたときにはサイモンはケージの中でしたが、比較的落ち着いていたようです。
モスクワ動物園の幼年個体、ペアとして中国・北京動物園へ_a0151913_1753085.jpg
Photo(C) Московский Комсомолец/Владимир Романовский.

ところがムルマお母さんの一人っ子ちゃんの雌のほうは大変だったようです。 今までここでお母さんと一緒に生活していたために、引き離すにはちょっとした詐術が必要でした。日中の早い時間から内部の寝室に赤ちゃんが好きそうなごちそうを置いておくと赤ちゃんだけが中に入ってそれを平らげ、また外のお母さんのところに戻ってきます。そういったことを何回かやっておき、こういった状態が普通のものにしておくわけです。いよいよ移送準備の日、中に入ってごちそうを食べている赤ちゃんとお母さんを内側の扉で遮断してしまう...そういうことのようです。「だまし討ち」なわけですね。スタッフは早速赤ちゃんに注射をし、移送用ケージに入れるということです。モスコフスキ・コムソモーレツ紙によりますと過去からもう何頭もこうしてホッキョクグマの幼年個体を海外に送り出しているモスクワ動物園ではあったものの、さすがにスタッフは赤ちゃん(幼年個体)をお母さんから引き離すときには、その場にいたスタッフは皆、涙を浮かべていたそうです。外の飼育展示場にいるムルマお母さんが自分の娘とはもう会えない状態になっていることに気が付いて慌てふためく直前に、外の飼育展示場の別の扉が開きます。そこから出てきたのは赤ちゃんの父親でありムルマお母さんのパートナーである雄のウムカ(*)です。こうしてムルマとウムカの同居生活が再スタートしたわけです。彼らの間にはまた春に繁殖行動があるでしょう。そして年末の新しい赤ちゃんの誕生を期待する....まさに人生(熊生)はこうして次のフェイズに入るわけです。

今年の年末のモスクワ動物園とサンクトペテルブルクのレニングラード動物園、再び赤ちゃん誕生のニュースが大いに期待できます。

(*注1)この「ウムカ」ですが、ロシア極北のタイミール半島で野生孤児として捕獲されたために極北に住む少数民族の言葉でホッキョクグマを意味する総称の「ウムカ」と名づけられています。しかし過去にも、そして現在にも何頭かの「ウムカ」という名前の個体がいるためにモスクワ動物園では対外的にそういった他の個体と識別するために途中から「ウンタイ」という名前にしたわけです。ですからここでいう「ウムカ」と「ウンタイ」は同じ個体です。しかしモスクワ動物園内部の飼育記録では現在でも「ウムカ」としていますし、このブログでも以前から「ウムカ」で御紹介していますので、今後も「ウムカ」と表記いたします。

(*注 2)このムルマとウムカ(別名ウンタイ)がGAOの豪太の両親であることに関しては、その誕生日その他のデータから言えば間違いないようにも考えられます。そうなると今回北京動物園に送られたのは豪太の妹とロッシーの弟が北京でペアとなるということですね。しかし私は、豪太の両親がムルマとウムカであるという件については、このブログではデータと生身の個体移動の一致を重視する立場から100%そうと完全に断定することについては留保しています。


(資料)
Московский Комсомолец (Feb.17 2011)
Российская газета (Dec.2 2010)
Polar Bear Husbandry at the Moscow Zoo (by I.V. Yegorov and Y.S.Davydov)
(過去関連投稿)
ロシア・サンクトペテルブルクのツインズ別離の時来る ~ 1頭がモスクワ動物園へ!
サンクトペテルブルクからソウルに旅立つサムソンの映像
ムルマお母さんと一人っ子ちゃん
モスクワツインズとシモーナお母さん
いざ北京動物園へ!
北京動物園から消えたホッキョクグマたち
2010年第一回ロシア遠征(サンクトペテルブルク、モスクワ)関連投稿総覧
(2010年4月5月
2010年第二回ロシア遠征(モスクワ、ペルミ)関連投稿総覧
(2010年7月8月
by polarbearmaniac | 2011-02-21 19:00 | Polarbearology

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