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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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2012年の日本のホッキョクグマ界を占う(前) ~ 方程式の解に「札幌+モスクワ」は可能か?

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イコロ (2011年11月3日撮影 於 おびひろ動物園)
2012年の日本のホッキョクグマ界を占う(前) ~ 方程式の解に「札幌+モスクワ」は可能か?_a0151913_0313177.jpg
アイラ (2011年12月17日撮影 於 円山動物園)

昨年後半、及び今年初頭は2011年(今年)のホッキョクグマの繁殖目的の移動について予想した投稿を何回か行っています。来年2012年の移動についてまた同じように予想を行ってもよいのですが、今回は全く別の角度から来年2012年の日本のホッキョクグマ界について予想をたててみたいと思います。今回は一つの動物園にスポットを当てます。それは東京都恩賜上野動物園(以下、上野動物園または単に上野と略記します)。何故上野動物園にスポットを当てるかといえば、この動物園の動向が来年の日本のホッキョクグマ界の動向を左右するのではないかと考えているからです。今回の話は全て具体的個体名で考えていきます。漠然とした話ではなく、全て具体的な話として考えたいからです。



御存じの通り上野動物園は今年ホッキョクグマ展示場が新装オープンしたわけで、現在2頭のホッキョクグマ(雪夫とレイコ)が飼育されています。報道によれば実は昨年上野動物園はモスクワ動物園にホッキョクグマの購入を申し入れたところ、「行列の順番待ちだ。」という回答があったことが明らかにされています(2010年8月13日付け朝日新聞)。
>80年に世界の199施設に633頭いたホッキョクグマは、07年には135施設356頭になった。「価格」は5~6年前の倍になり、輸出国のロシアなどは環境の良い施設を選ぶようになっているという。このため、メスが高齢となった上野動物園はホッキョクグマ舎を500平方メートルを超える国際水準に建て替え中だ。それでも、モスクワの動物園からは「順番待ちの列は長い」と言われたという。

つまり、雪夫とレイコのさらなる高齢化に備えて今から幼年個体を獲得したいという意欲があったわけです。新装ホッキョクグマ飼育・展示場には産室も完備されているそうですので、上野動物園は将来的にホッキョクグマの繁殖に力を入れたいという意欲もあるわけです。となれば、獲得を望んでいるのは雄雌の幼年個体2頭に違いありません。この2頭を獲得するパターンとしては以下の3つがあります。

①2頭とも国内から調達する。
②1頭は海外から調達し、もう1頭は国内で調達する。
③2頭とも海外から調達する。


①は非常に困難でしょう。1頭はララの子供たちが考えられますが、もう1頭ララの血統以外の幼年個体を調達することができません。南紀白浜のミライちゃんは、まず血統上の問題があり、そして彼女は公営の施設で飼育されているわけではありませんし人工哺育で育ったという点でも難点があります。ですので選択肢にはなりません。 豪太/クルミのペアが繁殖に成功すればその子供を...という考えはありますが、あまりにも不確実性が高く現時点では確実な見通しがありません。

②は可能でしょう。1頭はララの子供たち、もう1頭はモスクワ動物園で誕生した(誕生する)個体を獲得するということです。これをペアにすることは十分に有り得ます。

③は予算次第では可能でしょう。この場合モスクワ動物園から2頭を獲得するということになります。具体的にいえばシモーナの子供とムルマの子供です。このパターンは今年に入ってから北京動物園とソウル動物園がモスクワ動物園からそれぞれ2頭のホッキョクグマを獲得した際にも適用されたペア選択の方法です(過去関連投稿をご参照ください)。 シモーナの子供とムルマの子供をペアにしても、それ自体は近親交配には全くなりません。(ただし次々世代の繁殖に難点が出てきますが。)

上野動物園が昨年暮れから今年初頭にかけてモスクワ動物園にアプローチした際にはこの②と③のどちらを想定していたかは定かではありません。また現時点で上野動物園がモスクワ動物園からホッキョクグマを購入したいという意欲が依然としてどれだけあるのかどうかもわかりません。しかしルートは太いか細いかは別にして、現在も維持されていると見て間違いないでしょう。また、上に引用した朝日新聞の記事の中で、「輸出国のロシアなどは環境の良い施設を選ぶようになっている。」という記述と「順番待ちの列は長い」というモスクワ動物園の返答は、実はホッキョクグマ獲得を求めてアプローチしてくる世界の動物園に対してモスクワ動物園がとりあえずの回答をする際の決まり文句であると考えうる種々の状況がロシア側にありますので、それをそのまま文字通り受け取ることは注意が必要です。 また都市のネームバリューから考えてもモスクワ動物園は過去の経緯等を考慮に入れると上野動物園を軽視するとは考えにくいです。

上野動物園は日本の首都である大都市・東京の動物園として、どうしてもホッキョクグマの飼育・展示を行い続けるのだという理由はそれ自体間違いではありません。では、②と③のどちらを選択したほうが有利なのか...これは難しいですね。まず②を考えてみます。

②の場合、国内調達の1頭はララの子供たち、ズバリ言えばイコロかアイラでしょう。キロルということはないと思われます。キロルはホッキョクグマ繁殖検討委員会の調整によってバフィンが大阪に移動するためにホッキョクグマの存在が空白になる浜松に送られたわけで、これは繁殖プロジェクトによる大移動の一環として位置付けられています。ですから、このプロジェクトの枠の外にいる上野動物園がキロルを獲得したいと所有権を持つ円山動物園(札幌市)に交渉を持ちかけてもそれは無理でしょう。そうなるとイコロが雄としては候補になります。 そして仮にイコロを獲得した場合、雌のパートナーをモスクワ動物園から獲得するということになります。先月モスクワ動物園で生まれている赤ちゃんは3頭である確率がきわめて高く、そうなるとシモーナとムルマの生んだ子供たち(あるいはこれから生む子供たち)のうち雌を獲得するということになりますが、血統的にはムルマの娘のほうが幾分有利でしょう。ムルマは男鹿の豪太の母親でもあるわけですから上野がムルマの娘を獲得するならそれは血統的には豪太の妹ということになります。血統的には豪太とダブりますが豪太と彼の妹が2頭とも繁殖に成功することは無いだろうという割り切った考えでいけば問題はないかもしれません。一方シモーナの娘をイコロのパートナーにするのはいささか危うい点があります。シモーナの娘はすなわち旭川のイワンの妹ということになります。要するに「アンデルマ/ウスラーダ系」となるわけです。これとララの子供たちをペアにする危険性については何度かここで指摘してきましたし円山動物園も同じ考え方です。そういった危険性を認識しつつもイワンとピリカとの間の繁殖を考えざるを得ないわけですから、さらにまたイコロにイワンの妹をパートナーにさせるのはやはり危ういですね。「アンデルマ/ウスラーダ系」は他にゴーゴ、ホクト、カイ、ロッシーがいるわけですから、なおのこと極めて大きな危険性が付きまといます。 ともかく、仮に上野動物園がイコロを獲得する場合を想定してみれば、つまり円山動物園(札幌市)がイコロの上野動物園(東京都)への所有権移転に合意したとすれば、それはおそらく来年比較的早い時期となるはずで、春にもイコロはおびひろ動物園から直接、上野動物園に移動する可能性があるかもしれません。 

さて、次に上野動物園が国内調達個体として雌のアイラを獲得しようとした場合ですが、これは雄のパートナーはやはりモスクワ動物園からの獲得になるでしょう。 この場合はシモーナの息子(すなわちイワンの弟)かムルマの息子(豪太の弟)がアイラのパートナー候補になります。この場合もやはりイコロの場合と全く同じ血統上の問題が生じてきますが、ムルマの息子とのほうが幾分有利でしょう。 仮に上野動物園がアイラを獲得する場合を想定してみれば、つまり円山動物園(札幌市)がアイラの上野動物園(東京都)への所有権移転に合意したとしても、アイラの札幌から上野への直接の移動はないと思われます。 アイラの場合はどこか別の動物園への移動がワンステップとして挟まるような気がします。 

イコロとアイラを比較すれば、円山動物園(札幌市)はイコロの上野動物園(東京都)への所有権移転には合意するかもしれませんが、貴重な雌であるアイラについては難色を示す可能性が考えられます。 よってイコロかアイラかと選択肢が限定されてしまうとすれば、イコロが上野に行く可能性のほうが幾分高いように感じられます。

さて、ここまでの予想はあくまで上野動物園がホッキョクグマ1頭を国内調達しようとした場合に限っての予想の話です。 つまり仮定の上に仮定を積み上げた話でしかありませんので御留意下さい。 また、私に特別の情報があるわけでもありません。可能性を探って突き詰めていけば、こういうことになるだろうという予想の話です。

さてさて、では....(続く)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマ繁殖計画(Polar Bear Survival Plan)の日本版作成が急務
モスクワ動物園の幼年個体、ペアとして中国・北京動物園へ
韓国・ソウル動物園がモスクワ動物園よりホッキョクグマ2頭を入手! ~ モスクワ動物園の個体選択
モスクワ動物園でホッキョクグマの3頭の赤ちゃん誕生! ~ 繁殖実績世界一の貫録を見せつける
by polarbearmaniac | 2011-12-24 23:00 | Polarbearology

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