街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ラトヴィア・リガ動物園、創立100周年を迎えての苦悩 ~ ホッキョクグマのロメオを守る園長さんの決意

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ロメオ Photo(C)LETA

今年の2月に「ラトヴィア、リガ動物園のロメオに外国の動物園が食指 ~ 『小さくて弱い』」 動物園に対するイジメか? 」という投稿をしていますが、整った環境の施設を持つ外国の動物園がバルト海に面したラトヴィアの首都リガの動物園で飼育されているホッキョクグマのロメオの獲得を狙っているものの、園長さんはホッキョクグマを手放さない意向であることをご紹介しています。

このリガの動物園は今年の秋に創立100周年を迎えるそうです。 本来はそういった節目にはなにかのお祝いの催しや何かの特別展示が行われるのが普通ですが、このリガ動物園が悩まされ続けている財政危機によって大掛かりなお祝いをやっていられるような余裕がな悩みを地元のマスコミが報じています。

少ない予算でリガ動物園が取り組んでいるのは獣舎の修理・補修といった程度のことで、新しいホッキョクグマ飼育展示場の建設などは予算上当然無理な話です。 リガ動物園は「欧州動物園・水族館協会」(EAZA - the European Association of Zoos and Aquariums)に加盟しているためホッキョクグマの飼育に関して勧告がなされている状態だそうです。 EAZAのホッキョクグマ展示場の基準(これはバックヤードなどの室内部分を除いた純粋な展示場という意味でしょう)は最低2000平方メートルが必要で、しかも芝地を設置せねばならないという条件ですがリガ動物園のホッキョクグマ展示場は300平方メートルしかないといった具合で、リガ動物園には到底これを満たすだけの新しい飼育展示場を新設することができないことを見越して、欧州内の動物園が頻繁にリガ動物園に接触を図ってきているそうです。 目的はもちろん、ホッキョクグマのロメオの入手を狙ってのことです。 園長さんは「リガ動物園の来園者のために決してホッキョクグマのロメオは手放さない。」と発言しています。 リガ動物園は開設100周年を迎えたものの、依然として苦境の道を歩まねばならない状況がしばらくは続きそうです。
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ロメオ Photo(C)LETA

さて、このEAZAのホッキョクグマ(飼育)展示場の基準である2000平方メートル(含 芝地)という面積について考えてみることにします。 私は飼育下のホッキョクグマにとって一番重要なのは「居心地の良さ」だろうと思います。 しかし、彼らにとって何が「居心地の良さ」なのかは我々人間には実は客観的にはよくわからないというのが本当ではないでしょうか。 我々人間はそれがわからないがために一応、「居心地の良さ」イコール「面積」なのだと推定して飼育展示場の面積を広げることに意味を見出しているわけです。 私はこの考え方は基本的には間違ってはいないだろうと考えます。 しかし私はこの「面積の広さ」以外に実は何かがあると考えています。 そういう要素を根拠をもって抽出・断定することは私には困難です。 「住めば都」という考えで、長く住んでいる場所だから狭くても「居心地が良い」のだと言ってしまったら身も蓋もないことになるでしょう。

発想を逆転させて考えてみましょうか。札幌・円山動物園のララは非常に稀ではありますが夕方に収用される時間でもないのに室内への扉を激しく叩く時があります。以下のようなシーンです。



ララがこのようにするのは、少なくともその瞬間に彼女は何か「居心地の良くない」ものを感じているからなのではないでしょうか。 ではこの瞬間に彼女に「居心地の良さ」を与えてやるのにはどうしたらよいでしょうか? 一つには取りあえずのところ扉を開けてやるという方法が考えられます。 ただし、それだけで彼女が満足するかどうかは全くわかりません。

以下は私の憶測で科学的な根拠はありません。 これは私が海外の動物園をいくつか回って気が付いたことですが、私の印象ではどうも「死角」の存在の有無が「居心地の良さ」に何か関係があるのではないかということです。 戸外の展示場にあっても来園者の視線から身を隠すことのできる場所の存在です。 たとえば大きな岩とかがそうです。

サンクトペテルブルク、ペルミ、カリーニングラードといったロシアの都市の動物園のホッキョクグマ展示場は狭いのですが、室内への扉が開放されていてホッキョクグマたちはいつでも室内に入ることができるようになっています。 こういった動物園ではたとえ展示場が狭くても(モスクワは広いですが)、「死角」となりうる場所があるということになります。 展示場がたとえ広くなくても、それをある程度補い得るものがあれば「居心地が良い」と感じる可能性があるのではないかと感じています。 今回のこのリガ動物園のホッキョクグマ展示場はどんな感じでしょうか? 前回ご紹介したロメオの映像を再び見てみることにします。



この映像で見ると比較的死角となりそうな場所があるような印象を受けます。 この300平方メートルしかないという展示場ですがロメオは意外に「居心地の良さ」を感じているのかもしれません。 もっともそれは、この飼育環境の貧弱さの全てを補い得るものではないことは言うまでもないでしょう。

(資料)
Delfi (Jul.31 2012 - 100 лет Рижского зоопарка: с белым медведем, но без слонов)
Chas.lv (Nov.5 2010 - Красная рыбка - белому мишке)
Riga Zoo (Leduslācis)
The Baltic Times (Jul.11 2012 - Riga Zoo is one species that continues to evolve)
Zoo Chat (Polar Bear Pit, Riga Zoo)
TVnet.lv (Feb.13 2012 - Zoodārzs no baltā lāča Romeo neplāno atteikties)

(過去関連投稿)
ラトヴィア・リガ動物園のホッキョクグマ・ロメオの不本意な「引退」
ラトヴィア・リガ動物園のロメオ、21歳の誕生日の苦渋 ~ 雄の繁殖能力年齢の上限は? 
ラトヴィア、リガ動物園のロメオに外国の動物園が食指 ~ 「小さくて弱い」 動物園に対するイジメか?
by polarbearmaniac | 2012-08-01 23:45 | Polarbearology

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