街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・ハドソン湾南岸にホッキョクグマの巣穴の数が予想以上に存在することが判明

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ホッキョクグマの巣穴を調査するマニトバ州自然保護官
Photo(C)The Canadian Press

カナダからの報道によりますと、マニトバ州の自然保護管のハドソン湾沿岸の調査によって、ホッキョクグマの出産のための巣穴が予想以上に存在しいてることが判明したとのことです。 今回の調査で注目されるのは、チャーチルのさらに南側にあるワパスク国立公園 (Wapusk National Park) のさらに南東の地域とネルソン河の東側というホッキョクグマの生息地の南限であるために従来あまり注目されていなかったエリアに、従来の予想を上回る数の巣穴が存在しているということで、マニトバ州の自然保護管は驚きとともに胸をなでおろしているそうです。 少なくともこのハドソン湾地域のホッキョクグマの頭数は現時点では安定していることを示しているとも述べています。
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空からの調査ではこの地域の現時点におけるホッキョクグマの頭数は推定で約1000頭であり、その数は2004年に別の方法で行った調査で得た頭数と変わっていないことも明らかにしています。 実は2004年時点での予想では、ホッキョクグマの頭数は2011年に650頭に減少するという見通しをたてていたわけですので、このハドソン湾岸の地域に関するならば、ひとまずは現時点までに限っていえば安心してよいのかもしれません。 以下、カナダのCBC が今回の件について伝えている映像です(最初にCMが入ります)。



しかし一方で、北極圏全体を視野に入れれば以下のような事実があります。 独立行政法人・宇宙航空研究開発機構 (JAXA) が衛星「しずく」による北極海の氷の面積を調査した結果についてマスコミが報じています。 夏期に小さくなる北極海の氷の面積が、今年は観測史上最速のペースで縮小しているそうです。 面積が最小だった2007年の約425万平方キロを下回る可能性があると報じられています。 アメリカの人工衛星が観測を始めた1978年以来で最小記録は2007年9月24日の約425万平方キロだそうです。 今年は2007年より10日早いペースで減少しているそうです。これは実に憂慮すべき状態です。ホッキョクグマにとってはますます厳しい状況になってきています。
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「しずく」による今年8月18日現在の北極海の氷(白色)の分布(左)と、アメリカの衛星による昨年8月15日の氷の分布(右)
(C)宇宙航空研究開発機構(JAXA)

以下は1980年以来の北極海の氷の減少の変化を示したものです。



こういった状況が今後ホッキョクグマの頭数にどのような変化を生じさせるでしょうか?  実はこのホッキョクグマの生息頭数の調査には大きく言って2つの方法があり、その2つの方法で得られた数の評価をめぐって見解の相違があるわけです。 本当にホッキョクグマの数は減っているのかいないのか、意外に思われるかもしれませんが実はこれには議論の余地があるのです。 そして今後の生息頭数の見通しについてすら実は意見の相違があるわけです。

こういった「ホッキョクグマの生息頭数」の評価について近々、海外の複数の専門家のいくつかの異なる意見とその論点を整理してご紹介してみたいと思っています。 実はこれは一般に考えられているように単純な問題では決してないということです。 地球温暖化とホッキョクグマの生息数との関係、ホッキョクグマの進化の過程が今後の生息数の変化の問題とどう関係があるのかなど、これはホッキョクグマを論じる場合に避けて通れない大問題です。 そして実はこれらの点こそが、諸々のホッキョクグマに関する研究の論点のうちで最も難解なものだと言っても過言ではありません。 資料は日本語のものは一切存在しませんので(つまり日本語ではホッキョクグマに関して現在提起されている重要な問題については何一つわからないので)、全て外国語のものを用いることになるなど、多大な労力を必要とする投稿がいくつも続くと思いますが、どうしてもこれは逃げることなくやっておかねばならないと思っています。 近日中に始めたいと考えています。

ちなみに余談になりますが、最近の投稿で「ホッキョクグマの起源について」という4回の投稿をいたしました。 これらの投稿はホッキョクグマの起源についての諸説を整理したものですが、その第4回目の「ホッキョクグマの起源について(4) ~ 衝撃的で強力な新説の登場により通説が遂に崩壊へ」で御紹介した「核DNA完全解析による500万年前説」についてほとんど全ての先進国の一流と言われる複数のマスコミはその新説の内容を詳しく一般向けに報道していますが、日本だけは全く報道されていません。 そうこうするうちにもう海外では、この「核DNA完全解析による500万年前説」に対する疑問を述べる研究者が出てきたという、もうさらに次の段階まで行っているわけです。 日本語ではホッキョクグマに関して現在提起されている重要な問題は何一つわからないということの一例です。 またもう一例をあげれば、2年ほど前に動物園のホッキョクグマの体が緑色になった件について日本の複数の動物園は国内の某大学に原因の究明を依頼しました。 ところがホッキョクグマの体が緑になる件についてはすでに10年も前にアメリカで徹底的な調査・研究がなされ原因が完全に究明されており研究雑誌だけではなく一般紙にすらその研究結果が大きく紹介されていたわけです。 こういったものが日本語で紹介されていなかったがために日本の動物園はそういった貴重な研究結果の存在に気がつかなかったということです。 気がついてさえいれば、新たにまた某大学に調査を依頼するなどという無駄なことをする必要など全くなかったはずです。 こういった状況は早急に改善すべきでしょう。

(資料)
Winnipeg Free Press (Aug.21 2012 - They can bear-ly believe it)
CBC (Aug.21 2012 - Polar bear dens found near Manitoba-Ontario border)
毎日新聞 (Aug.21 2012 - 北極海:氷の減少、最大か JAXA観測)
by polarbearmaniac | 2012-08-22 07:00 | Polarbearology

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