街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係

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リア(右)とハドソン(左) Photo(C)The Courier-Mail
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リア(右)とネルソン(左) Photo(C)goldcoast.com/Kit de Guymer

南半球のオーストラリア、クイーンズランド州のシーワールドのホッキョクグマたちにとっては今が春たけなわといったといころなのでしょう。 オーストラリアの報道によりますと同施設の飼育されている3頭のホッキョクグマのうち11歳の雌のリアと8歳の雄のネルソンはここのところ非常に仲が良かったそうですが、とうとう繁殖行動へ移行し、このような繁殖行動が2週間続いたそうです。 その後リアはネルソンの相手をすることを止め、今度はネルソンの双子の兄弟であるハドソンと遊び始めたようです。 もし仮にリアとネルソンとの間の繁殖行動が成果をもたらせてリアに出産があれば、それはオーストラリアでは約30年振りのホッキョクグマの赤ちゃん誕生となるそうですのでシーワールドの飼育員さんもこういった様子を非常に注意深く観察し、なんとかリアの繁殖を成功させたいと意気込んでいるようです。 こうしたシーワールドでのホッキョクグマたちの様子伝える映像がありますのでこちらをご参照下さい。
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リア Photo(C)goldcoast.com/Kit de Guymer

さて、今回出産が期待されているリアについては以前ご紹介しています通り2000年12月にロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダメンシコフとの間に生まれた双子のうちの一頭です。 双子のもう一頭のリューティクと共に2001年の11月にレニングラード動物園からこのオーストラリアのシーワールドに送られたときの様子は以前の投稿である「ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ」を是非ご参照下さい。 シーワールドの強い要請によって2頭に絶対に麻酔は用いないという方針を貫き、いかにしてこの双子を輸送用のケージに収容したかについてもその投稿ご紹介しています。 実はこのリアとリューティクがサンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダお母さんと遊んでいる大変貴重な映像がありますのでご紹介しておきます。こちらをクリックしてみて下さい。この冒頭のシーンがそうです。これは、この二頭をいかにして無事にオーストラリアまで移送するかをドキュメンタリーにした映像のうちの一部です。
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シーワールドでのリアとリューティク Photo(C)Australian Stainless

サンクトペテルブルクのレニングラード動物園のウスラーダお母さんはすでに15頭の子供を出産していますが、そのうち雌は3頭だけというアンバランスです。 その3頭の娘とはシモーナ(現 モスクワ動物園)、コーラ(現 チェコ・ブルノ動物園)、そしてこのオーストラリア、シーワールドのリアです。 シモーナについてはもう何を申し上げる必要もないでしょう。 今回の三つ子を含めてすでに12頭を出産しています。 コーラについても何度もご紹介していますが、有名なトムとビルの双子を産んだお母さんです。 となれば当然、女帝ウスラーダの娘としてこのシーワールドのリアの繁殖も非常に有望なはずで、大きな期待をかけてよいように思われます。双子であるリアももう一方の雄のリューティクは2006年の夏にこのシーワールドからアラスカ・アンカレッジのアラスカ動物園に移動しています。 

さて、このシーワールドに飼育されている8歳の雄のネルソンとハドソンですが、この双子はともにカナダで野生孤児として保護されケベックの施設からシーワールドに移動してきたわけですが、何を隠そう実はこのネルソンとハドソンの双子のうちの1頭が2004年の9月の段階では日本の男鹿水族館に移送される方針が決まっていました。 しかしとりあえずこの双子の2頭はオーストラリアのシーワールドに移送されました。 オーストラリアのマスコミの報道によれば、この時の移送関係者の言葉として、「まだ日本(秋田県)では施設が完成していないので、完成したあかつきには1頭が日本に移動することになる。」 と述べています。 ところがシーワールド側と当初の送り出し元であったカナダ側が、この双子の孤児をその段階で引き離すのはその成育上問題があると判断され、1頭の男鹿水族館への移動が一端中止になります。 その代わりにシーワールドから無期限貸与で日本の男鹿水族館に送られたのが2003年11月にモスクワ動物園でムルマお母さんから生まれ、その後にシーワールドが所有権を獲得したもののまだモスクワ動物園で飼育されていた、後に「豪太」と命名された雄の個体だったわけでした。このあたりの状況は以前の投稿である「モスクワ動物園のムルマ(5) ~ 豪太の日本への旅立ち」を是非ご参照下さい。 また、豪太が2004年3月9日にモスクワ動物園で一般公開されたときの映像を「豪太(男鹿水族館) のモスクワ動物園での初公開日の映像」という投稿でご紹介していますので、是非ご覧ください。

こうして後に「豪太」と命名された雄の個体が日本(秋田県)にやってきたわけです。 さて、送り出し元のカナダ側にしてみても双子を生後1年にもならないうちに引き離して1頭をイメージの悪い日本までわざわざ送りたくない気持ちはよくわかります。 またシーワールド側も、モスクワ動物園からムルマお母さんの息子をオーストラリアに連れてきて、さらにカナダの孤児の双子の1頭を日本に送るという二重のリスクを生じさせるよりは、モスクワの個体を日本に動かすという単独のリスクだけに留めておいたほうが無難であると考えただろうと思います。 (*注 - 秋田県はこの一連の事情に関して別の理解をしている可能性もありますが、カナダ、及びオーストラリアの報道を総合しますと上記のようになります。)

実はこのシーワールドは現在のリア、ネルソン、ハドソンの3頭飼育体制になる前には2000年から2004年まで中国の北京動物園から1995年生まれのピンピンという雄の個体を借りていたわけです。
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ピンピン Photo(C)theage.com.au/Angela Wylie

ピンピンに関しては以前、「モスクワ動物園のシモーナ(4) ~ 消息不明の息子は何処に? (上)」という投稿で少しだけ触れたことがありました。このピンピンが北京動物園から送り出される映像の一部をこちらで見ることができます。 ピンピンは2004年の11月に貸借契約期間の満了により北京動物園に戻されたわけですが、この時にはオーストラリアでピンピンの北京への返還に対して反対の声があがりました。 「飼育環境の良くない北京動物園に戻すとは何事か!」といった声でした。 しかし契約は契約であり、シーワールドの園長さんもどうすることもできなかったわけでした。

このピンピンとシーワールドでペアを組んでいたのが雌のカヌークで、このカヌークは2000年にアメリカ・アリゾナ州のレイドパーク動物園からシーワールドに移動してきた個体でしたが2004年6月に腎臓病を患い19歳で安楽死という方法で亡くなっています。 このカヌークとピンピンの間の繁殖には成功しませんでした。
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2004年に亡くなったカヌーク  Photo(C)ABC TV

そういったわけでこのシーワールドでは雌のリアの繁殖に大きな期待を寄せているわけです。 いくつかの映像を見てみましょう。まずこの下の映像、これはリアでしょうね。


この下の映像では3頭が全て登場しているようです。



こうやってホッキョクグマのバックグラウンドを知っていくと同じホッキョクグマ見るのでも、より以上に興味深く見えてくるものです。

(資料)
Gold Coast Bulletin News (Aug.30 2012 - Sea World's romantic recipe for polar cubs)
Brisbane Times (Aug.30 2012 - 50 shades of polar love)
Sky News Australia (Aug.30 2012 - 50 Shades of White spice up Sea World)
The Daily Telegraph (Aug.30 2012 - Sea World keepers create Fifty Shades of White to get polar bears in breeding mood)
The Courier-Mail (Jan.6 2012 - Sea World's handsome Hudson melting ice queen Liya's heart in quest for love)
Sea World (Polar Bear Shores)
Sea World (History)
BBC (Dec.22 2012 - White Christmas for Australian polar bears)
TVF International (Bringing Home the Bears - Episode 1)
TVF International (Bringing Home the Bears - Episode 2)
TVF International (Bringing Home the Bears)
ABC (Nov.23 2001 - Baby polar bears touch down in Brisbane)
ABC News (Jun.30 2004 - Sea World puts down polar bear Kanook)
Animal Liberation Queensland (Nov.4 2004 - SEA WORLD’S POLAR BEAR “PING PING” TO BE SHUNTED AROUND THE GLOBE AGAIN! )
Nunatsiaq News (Sep.24 2004 - Orphaned polar bears destined for Japan, Australia)
ABC News (Nov.18 2004 - Sea World takes in polar bear orphans)

(過去関連投稿)
ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ
モスクワ動物園のムルマ(4) ~ 危機の克服、そして豪太の誕生
豪太(男鹿水族館) のモスクワ動物園での初公開日の映像
モスクワ動物園のムルマ(5) ~ 豪太の日本への旅立ち
モスクワ動物園のシモーナ(4) ~ 消息不明の息子は何処に? (上)
by polarbearmaniac | 2012-08-30 21:00 | Polarbearology

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