街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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フィンランド・ラヌア動物園の赤ちゃんの名前が公募によってランツォに決定 ~ 名前の雄雌識別について

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(C)Ranua Zoo

フィンランド・ラヌア動物園に昨年11月18日にヴィーナスお母さんから誕生した雄の赤ちゃんの名前が公募されていましたが、その名前が「ランツォ(Ranzo)」に決定したそうです。 32000 もの応募があった今回のこの赤ちゃんの名前募集でしたが、この名前を応募したのは31人いたそうです。 ラヌア動物園は応募のあった他のいくつかの名前を公表しています。以下のようなものが有力であったようです。

Lumi, Lumipallo, Kuura, Hile, Viti, Kide, Huurre, Nuoska,
Nietos Amor, Aamon, Herkules, Zeus, Venasse, Vemasse,
Veman, Mave, Mavenus, Sauli, Väinämö, Onni, Otto, Urho,
Rauno, Elmeri, Aslak, Veeti, Söpö, Pörrö, Vilperi, Vilpertti,
Sisu, Ranua, Aunur, Ranu, Rane, Nua, Hilla,

やはりフィンランド人の考える名前というのはフィンランド語の音感に合うものが大多数のようですね。 単に投票数から言えば、Sulo が一番多くて600通もの票があったそうです。 Sulo というのはやはりフィンランド語独特の感覚の名前のような気がします。 ちょっとローカル色が濃すぎる感じもしますね。 ラヌア動物園としては今回選出された「ランツォ(Ranzo)」は音が少し強く、そして同時に柔らかく、しかも国際的にも通用する名前であり、赤ちゃんの生まれたラヌア動物園にも因んだ名前だと考え「ランツォ」に決定したそうです。
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ランツォ Photo(C) Ranua Zoo

このランツォはあと1年はヴィーナスお母さんと一緒に過ごし、その後は欧州内の他の動物園に移動することになるだろうというラヌア動物園の見通しを報道は伝えています。

さて、このホッキョクグマの赤ちゃんの命名なのですが、今回ラヌア動物園が重要な選考基準としていたのは、やはり赤ちゃんの名前が国際的にも認識しうる音韻であることを一番念頭に置いていたのではないでしょうか。 この赤ちゃんが将来国外に出ても、その国でも親しまれ違和感のない名前であることが必要だったのだろうと思います。 さらに、名前を聞いただけで雄か雌かがわかる名前であることも重要だったろうと思います。

一般的に言えば、名前の最後が子音字か又は -o で終わる名前は欧米の言語・語学感覚では雄です。 逆に、-a や -e で終わる名前は雌です。 この感覚で言えば、ピリカ (Pirka)、アイラ (Aïra) は欧米人がこの名前を聞いてもすぐ雌だと理解してくれるでしょう。 上野動物園のデア (Dea) はさすがにイタリアで命名されただけあって -a で終わる名前ですし意味が「女神」ですから雌であることは明白です。 アンデルマ、ウスラーダ、シモーナ、ムルマ、マレイシュカなどのロシアの偉大な雌たちの名前は全て-a で終わっていますので当然雌の名前です。 

雄について言えば、ゴーゴ(Gogo) は -o で終わりますから雄。 ロッシー(Rossy/Russy) は子音字で終わるので雄、これは問題ないでしょう。イコロ(Ikor) は「ピリカ」同様アイヌ語の名前ですが、これは子音字で終わっていますから欧米でも雄と認識されるでしょう。 そのアナロジーで言えば、今回のラヌア動物園の雄の赤ちゃんが「ランツォ(Ranzo)」 という名前になったのは理屈にあっていることになります。

(*追記) 余談になりますが、かなり以前にアイヌ語に詳しい人の話を聞いたことがあります。 その方の言うところによれば、札幌・円山動物園に生まれたイコロのアイヌ語のアルファベット変換表記は Ikor であって Ikoro ではないということです。 それはアイヌ語をアルファベット表記に変換する場合に Ikor と綴る、発音に裏打ちされた変換ルールがあるからだそうです。 ところがキロル(Kiroru) の場合は Kiror ではなく Kiroru と変換して綴るのが正しいそうです。 さらに、ピリカ (Pirka) を Pirika と綴るのは正しくないとのこと。 アイヌ語では ir 音の中に軽い「リ」の音を含んでいるそうで、「ピリカ」をアルファベット表記に変換するときには Pirka とするのが発音表記上のルールだそうです。 仮にキロルの表記を Kiror とするとアイヌ語では「キロラ」という発音になるそうです。 「キロラ」ではなく「キロル」にするためにはKiror ではなくKiroru と表記しなければいけない...そういうことだそうです。 以前札幌・円山動物園に勤務していらっしゃった樋泉さんが何かの機会で「イコロ」「キロル」「ピリカ」を正確に Ikor, Kiroru, Pirka と表記していたと記憶していますが、やはり樋泉さんはアイヌ語の専門家から事前に情報を得ていたのだろうと思います。

(資料)
Etelä-Suomen Sanomat (Sep.3 2012 - Ranuan jääkarhunpennun nimeksi tuli Ranzo)
YLE (Sep.3 2012 - Ranuan jääkarhunpennun nimeksi Ranzo)
Ranua Zoo (News Sep.3 2012 - Finally, we will be celebrating the christening of the Ranua polar bear cub)

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by polarbearmaniac | 2012-09-04 01:00 | Polarbearology

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