街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園がコーラの出産に園の浮沈をかける ~ 食害の瞬間を映した貴重な映像記録の公開

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コーラ Photo(C)Blesk.cz/Zoo Brno

ホッキョクグマを飼育している世界の動物園の中でこのチェコ・ブルノ動物園のコーラほど動物園自身がその出産を切望している雌のホッキョクグマはないかもしれません。 このコーラは1998年の11月にロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダメンシコフの4番目の子供として双子で誕生しました。 ですから、モスクワ動物園のシモーナの妹ということになります。 同時にカイ(仙台)とロッシー(静岡)のお姉さんにもあたるわけです。 このコーラが2007年11月にトムとビルの双子の兄弟を産んでいる件は以前投稿しています。 そしてこのコーラが2010年11月に赤ちゃんを出産したものの食害で失われた件、そして昨年11月の出産でも食害などによってまた赤ちゃんが失われてしまった件についても投稿しています(過去関連投稿)。
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コーラ Photo(C)Týden.cz

こういったコーラの出産についての情報に関してブルノ動物園では異例ともいうべき積極さでネットを通じ、またチェコのマスコミ各社を通じて世界への情報発信を試みているわけです。 昨年暮れなどはコーラの産室内の映像を赤ちゃん誕生の直前からネットで世界中に生中継するという画期的なことまで行いました。 昨年のこのライブカメラ映像のサイトをこのブログでもご紹介しましたので、何人かの方もコーラの産室内を見ていただけたのではないかと思います。 私などはその映像を見るために徹夜までして翌日の仕事は休みにしまったという思い出すらあります。 飼育員さんも世界中のファンも、そのモニター映像を見てホッキョクグマの赤ちゃん誕生の誕生に一喜一憂したわけでした。
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2011年11月16日に2頭目(後に食害で死亡)を出産した直後のコーラ
Image : Zoo Brno

結果としては2頭の赤ちゃんは食害などで失われてしまったわけですが、その瞬間の時間は私はPCから離れていて確認することはできませんでした。 ところがブルノ動物園がこの食害の瞬間を鮮度の高い別のカメラで見事に捉えていたようで、その映像を後からマスコミに公開しています。 ここをクリックしていただき、画面上の時間の11/16/2011, 08:39:26 あたりから後にご注目下さい。
(*後記 - 以下でご覧下さい)


この食害の瞬間をカメラで捉えた史上初めての映像だと思われます。 そもそもホッキョクグマの産室内にモニターカメラが入り始めたのはこの10年ほどのことであり、そういった最近の映像の中ではまだ食害そのものがカメラに収められていなくても不思議ではなかったわけです。 しかしこのブルノ動物園の産室内モニターカメラがホッキョクグマの食害がどのようなものであるかを実際に映像として捉えたという貴重な記録だと思います。 こういった映像を決してグロテスクで興味本位なものと考えるのではなく、我々がホッキョクグマの食害をいうものがどう行われるのかを知る「知の探究」としての啓蒙的・教育的な資料的価値の高い映像として考えるべきでしょう (実際今回のものはそれほどグロテスクな映像ではありません)。 今年の11月にもまたブルノ動物園はこの産室内ライブ中継を行うと思いますので、その際にはまたご紹介したいと考えます。
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2007年11月誕生のトムとビル、そしてコーラお母さん
Photo(C)Česká televize

さて、ブルノ動物園が何故これほどまでに情報公開にこだわるのかは、私のみたところ理由があると思われます。 それは、ブルノ動物園の台所事情でしょう。 以前の投稿でも書きましたが、このブルノ動物園の最近の財政的な厳しさです。 報道によればこの15年間に総額1400万コルナ(約5600万円)ほどを外部からの寄付で受けているそうですが、毎年の寄付額が減少の傾向にあるそうです。 ところが2008年に突然、過去最高の寄付額を記録したわけです。 その原因は、ホッキョクグマのコーラの産んだ双子の赤ちゃんのトムとビルが大人気となり、入場者数が1989年以来最高の年間32万人を達成し、その結果として寄付額が増加したということなのでした。 ところがこのビルとトムがブルノ動物園から移動した後はまた入園者数と寄付額が減り、そしてブルノ市からの援助も減らされることを通告されて、苦境に立たされているブルノ動物園なのです。 とにかく入園者を増やし寄付額を増やすためにもホッキョクグマのコーラの出産に期待するという内容のことを園長さんが語っているほどです。 要するにホッキョクグマの赤ちゃん頼みという状況なのですね。 そのためにはコーラの出産前からネットやマスコミを通じて情報を多く発信し人々の関心を集めたい...そういうことなのだと思われます。
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コーラお母さんとトムとビルの双子 Photo(C)ara

実はこのホッキョクグマの赤ちゃんの集客力というものは、かなりのものだというのは世界の動物園の事例をみてもはっきりしているわけです。 私が数字まで把握しているのは2園だけですが、ブルノ動物園でトムとビルが公開された年は入園者数が前年比28%増、札幌・円山動物園でイコロ、キロルが一般公開された年は入園者が前年比32%増といったところです。

さて、今年の11月、または12月にまたコーラの出産があるでしょうか? 春の繁殖行動は確認されているそうです。 夏になって氷のプレゼントやらおもちゃのプレゼントもったそうで、ブルノ動物園がコーラにかける期待の大きさは間違いないようです。 今年の11月のコーラの出産を固唾をのんで見守っているブルノ動物園の関係者でしょう。

(資料)
Deník.cz (Jun.28 2012 - Medvědi dolovali ryby z ledu, vlčata dostala čipy)
ekolost.cz (Sep.1 2012 - Zoo Brno získala na darech 14 milionů, jejich výše se ale snižuje)
Blesk.cz (Nov.15 2011 - Medvědice Cora narozené mládě sežrala!)
Novinky.cz (Medvědice Cora hýčkala mrtvé mládě celou noc. Pak je sežrala)
Hobby.cz (Nov.16 2011 - Medvědice Cora sežrala po pár hodinách obě narozená mláďata)
Týden.cz (Nov.16 2011 - Zoo Brno: medvědice Cora nakonec sežrala obě svá mláďata)
ahaonline.cz (Oct.7 2011 - Lední medvědice Cora: Bill a Tom budou mít sourozence!)
Česká televize Brno (Nov.15 2011 - Medvědice Cora z brněnské ZOO porodila dvě mláďata, nepřežilo žádné)
Lidovky.cz (Nov.15 2011 - Medvědice Cora nakonec sežrala obě mláďata)

(過去関連投稿)
チェコ・ブルノ動物園での別れ(前) ~ トムとビルを愛した人々
チェコ・ブルノ動物園での別れ(後) ~ トムとビルを愛した人々
チェコ・ブルノ動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
チェコ・ブルノ動物園で誕生のホッキョクグマの赤ちゃん食害の犠牲に!
来シーズンの繁殖に向けて動き出したチェコ・ブルノ動物園 ~ コーラとウムカの同居開始
チェコ・ブルノ動物園のコーラに11月の出産の期待
チェコ・ブルノ動物園のコーラの出産が秒読み ~ 画期的な産室内部のライブ映像中継
チェコ・ブルノ動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生! ~ 1頭が生存中
チェコ・ブルノ動物園で誕生の双子の赤ちゃん、2頭目も死亡!
by polarbearmaniac | 2012-09-05 20:30 | Polarbearology

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