街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園の新展示場施設の建設  ~  偉大なるデビーの遺したもの

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デビー (1966- 2008) Photo(C)Larry Trupp

カナダ・マニトバ州 ウィニペグのアシニボイン公園動物園 (Assiniboine Park Zoo)といえば、2008年11月に当時世界最高齢の42歳で亡くなったデビーが暮らしていた動物園であり、そしてそのデビーが産んだ最後の子供で現在は仙台・八木山動物公園に暮らすナナが生まれた動物園でもあります。 この動物園内に最近、野生で孤児となったホッキョクグマや負傷したホッキョクグマを収容する施設であるホッキョクグマ保護・厚生センターが完成した件についてはすでに投稿しています。
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アシニボイン公園動物園 Photo(C)Shahnoor Habib Munmun

さて、このアシニボイン公園動物園2008年11月のデビーの死後はホッキョクグマが不在になってしまいましたが、やはりホッキョクグマの飼育・展示をやめてしまうという方針ではなく新しい施設を計画していたようですが、2011年の10月にリチャードソン財団がこのアシニボイン公園動物園の管理委員会に500万(カナダ)ドル(約4億円)という多額の寄付を行い、総工費6900万ドルというこの新しい飼育展示場建設計画が実行に移されることになりました。 完成のあかつきには世界最高のホッキョクグマ飼育展示場になるだろうと同動物園の管理監督者であるカーチス氏は語っています。 そしてこの新施設である “Journey to Churchill” の工事が現在進行中で完成は2014年となる見通しです。 この施設の概要を下の映像で見ると、いかにこれが壮大な施設となるかがわかります。



また、工事中の現在の様子がマスコミに公開されましたのでこちらをご覧ください(最初にCMが入ります)。 (*後記 - 上の映像がyoutubeでもアップされましたので下にご紹介しておきます。)


デーヴィッド・カーチス氏は1978年からこのアシニボイン公園動物園に勤務しており、今は亡きデビーとそのパートナーであったスキッパーがまだ若かりし時代からこのペアを見ており、飼育下に見事に適応して水中を泳ぎまわるのが好きだったこの素晴らしいペアの黄金時代の思い出が目の裏に焼き付いている様子です。 デビーが亡くなったときの人々の大変な悲しみ、そして500人以上の人々がお別れ会にやってきた様子を感慨深げに語っています。 デビーとスキッパーというペアはこうしてこの地域の人々のコミュニティーに溶け込んでいたわけでした。 地元ウィニペグの人々のこうしたホッキョクグマに対する思い入れやアシニボイン公園動物園関係者の熱意に加えて資金調達面での裏打ちがあったことが、今回の新しい施設の建設計画が実行に移された理由だろうと思います。

同動物園の管理責任者であるシンクレア・スミス氏はホッキョクグマの素晴らしさを以下のようにあまりにも見事に表現しています。 私のホッキョクグマに対する感じ方と全く同じなので、下にご紹介しておきましょう(笑)。

"I think polar bears capture the imagination of people.
They’re huge. The cubs are cute, the adults are cool
and their white colouration makes them stand out."
 


さて、このアシニボイン公園動物園で2008年11月に42歳の高齢でこの世を去った偉大なるホッキョクグマ、デビー(1966- 2008)については以前2回の投稿で触れていますが(過去関連投稿参照)、デビーと彼女のパートナーであったスキッパー(1964 – 1999)のペアとの間に生まれた子供たちを調べてみましたところ以下のような記録が残されていますので簡単にまとめておきます。

■1965年  カナダ・バフィン島で母を失ったスキッパーがアシニボイン公園動物園で飼育されるようになる。
■1967年 ロシアから孤児となっていたデビーとデニスの双子がオランダ経由でアシニボイン公園動物園に到着。 デビーはデニスのパートナーとなる。(デニスは1971年にカルガリー動物園に移動)
■1975年 デビーが(前年)出産した第一子(雄)が京都に送られる (*これが京都市動物園の今は亡きポールです)。
■1977年 デビーが(前年)出産した双子(雄雌)がドイツ(ルール地方)に送られる。
■1982年 デビーが(前年)出産した雌の双子が2頭とも北アイルランド・ベルファストの動物園に送られる。
■1985年 デビーが(前年)出産した彼女最後の子供(雌)が仙台に送られる (*これが仙台・八木山動物公園のナナです)。
■1999年 スキッパーが34歳で亡くなる。
■2006年 デビーの40歳の誕生日を祝う。
■2008年 デビーが42歳で亡くなる(11月17日)。
*(記載を統一するために元資料の記述を若干補正しました。)


さっとこんな感じです。 4回の出産で6頭が成育したということになります。 この6頭のうち現在も生存しているのはナナだけかもしれません。 (*追記 - オランダ・ヌエネンの動物王国にあと1頭、1981年生まれのウォシュというのが生存しているようです。)  実はここに大変貴重な映像があります。それはデビーの死についてのロイター通信のニュース映像ですが、開始後25秒あたりからデビーとそのパートナーであるスキッパーが同居している映像を見ることができます。 つまりこれが仙台のナナ、そして京都の故ポールの両親の姿であるわけです。
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デビー Photo:Waatp

このアシニボイン公園動物園のデビーこそ、飼育下のホッキョクグマの歴史に永遠に名を留めるであろう名ホッキョクグマなのです。 ドイツの報道の表現を借りれば "Biblische" Debby、「聖典のホッキョクグマ」というわけです。 その偉大なるデビーの最後の娘である仙台のナナの存在が格別の意味を持っていることを我々は知るのです。
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遺灰となって北の海に帰るデビー 
Photo(C)Frontiers North Adventures Inc.
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アシニボイン公園動物園内のデビーの記念像

(*追記) 以前何回かご紹介していますが飼育下での最高齢記録はアメリカ・デトロイト動物園で飼育されていたドリス(1948-91)であることに間違いないようです。 "How Long Things Live" という本に記載があります。 このページをご参照下さい(クリックすると該当ページが開くように設定してあります)。 さらにこちらのページを開いていただくと雑誌 Life の1964年8月21日号での当時のデトロイト動物園のホッキョクグマの写真を見ることができます(クリックすると該当ページが開くように設定してあります)。 写っている3頭、そしてその下の5頭のホッキョクグマのうちの1頭が間違いなくドリスだと思われます。 さらにその下に双子の赤ちゃんとお母さんの写真がありますが記述によればこのお母さんはヒルダという名前になっています。 そして15歳だと書いてあります。 そうするとヒルダと記載されているこの写真のお母さんはこのLife誌が発行された1964年には年齢的には1948年生まれのドリスとぴったり同じですので、ひょっとしてこの写真のお母さんは名前はヒルダと記載されているものの実は世界最高齢記録を持つドリスの姿なのかもしれません。 その可能性は高いかもしれないと思います。 デビーは私が検証したところ歴代第三位である可能性が強く、ひょっとして第二位かもしれません。 多くの報道その他の記述では第二位としているものがほとんどです。 この件については以前の投稿の後記に詳しく記載してあります。

(資料)
Winnipeg Free Press (Nov.2 2011 - Future polar bears to follow in Debby’s footsteps)
Winnipeg Free Press (Feb.3 2011 - Zoo to hold world-class polar bear exhibit by 2013)
Edmonton Journal (Aug.31 2012 - Assiniboine Park in Winnipeg undergoes a rebirth)
Winnipeg Free Press (Sep.6 2012 - Arctic paradise takes shape)
Global Winnipeg (Sep.5 2012 - Media given tour of the 'Journey to Churchill' exhibit Wednesday)
MetroNews Canada (Sep.6 2012 - A little bit of Churchill coming to zoo)
n24.de (Nov.18 2008 - Ältester Eisbär der Welt gestorben - "Biblische" Debby )
CBC News (Nov.18 2008 - Tributes pour in after oldest polar bear dies in Winnipeg)
Tails from the Zoo (Debby, A Short History)
dalje.com (World's oldest polar bear dies)
Frontiers North Adventures Inc. (Debby the Polar Bear)

(過去関連投稿)
高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (上)
高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (下)
偉大であったホッキョクグマのデビー、その娘であるナナと再会した猛暑の仙台
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園内に建設中のホッキョクグマ保護・厚生センターについて
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園内にホッキョクグマの保護・厚生施設が完成
by polarbearmaniac | 2012-09-07 21:00 | Polarbearology

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