街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語

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イヌクシュク Photo(C) Torstar News Service

カナダよりホッキョクグマの移動のニュースが公表されています。 それは、トロント動物園で飼育されていた間もなく10歳になる雄のイヌクシュク (Inukshuk) が10月1日にコクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村 (Polar Bear Habitat and Heritage Village) にトラックで10時間かけて移動したとのニュースです。 コクレーンには現在、間もなく三歳になるサンフェリシアン原生動物園生まれの雄のガヌークがケベック水族館から移動してきたのは今年の6月のことでした。 このガヌークの父親が今回移動してきたイヌクシュクであるわけですから、コクレーンに父と息子が揃い踏みとなったわけです。 ちなみにこの前投稿のトロント動物園で人工哺育されたハドソンの父親もイヌクシュクです。 トロント動物園でのイヌクシュクの姿を一つご紹介しておきます。



なぜイヌクシュクがトロントからコクレーンに移動してきたかが今一つはっきりとしませんが、推察するにトロント動物園で雌のオーロラ(彼女がハドソンの母親です)との間で繁殖行為があったためにオーロラの出産準備のためにイヌクシュクをコクレーンに移動させたのだろうと考えられます。 同時に、人工哺育されたハドソンを広い展示場に移すためにはハドソンをイヌクシュクと同居させることができないため、イヌクシュクをコクレーンにローンの形で一時移動させた...これもあるでしょう。 イヌクシュクは1か月の検疫期間を終えた後にコクレーンで一般公開されるそうですが、当然息子であるガヌークとは別展示になるそうです。

このイヌクシュクが野生の孤児として2003年に捕獲された時の様子がホッキョクグマ保護教育生活文化村より紹介されています。 それによりますと、2003年にオンタリオ州警察のメナード氏は狩猟によって母親のホッキョクグマが射殺された連絡を受けて、その狩猟者から生後10週間と思われるホッキョクグマの赤ちゃんを取り戻し、人間用の監獄の鉄格子の中で保護したそうです。 「その場所が一番安全だった。」と考えたわけでした。 しかしその監獄で赤ちゃんは泣き続けていたためにメナード氏は自らもその鉄格子の中に入っていき、赤ちゃんはメナード氏の膝の上で眠りについたそうです。 メナード氏はその体勢のまま何時間も動けなかったといいます。 やがて地元の人々が赤ちゃんのために魚やトナカイの肉をもってきてくれたそうで、メナード氏はそういったものを赤ちゃんに手で与えたそうです。 「子供なのに前脚が大きかったよ。 私の腕よりも大きかったんだ。」とメナード氏は回想します。 この赤ちゃんはこの後、トロント動物園で保護されることになったわけでした。 この赤ちゃんがイヌクシュクであるわけです。 コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村では準備ができた段階でメナード氏を招待してイヌクシュクとの再会を果たしてもらう予定だそうです。 「もう到底彼をだきしめるなんてことはできないだろうね。」とメナード氏は笑いながら語っています。
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イヌクシュクとメナード氏(2003年)
Photo : Animal Planet /Cochrane Polar Bear Habitat

(*追記) 以下、トロント動物園保護された以降のイヌクシュクの姿をご紹介しておきます。 最初の2枚は2003年の5月、3枚目は2003年の7月に撮影されたものだそうです。
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Photo:A World Through Lenses (Phoenix)

イヌクシュクは立派なホッキョクグマに成長しました。現在の体重は486キロだそうです。 彼はすでにサンフェリシアン動物園でタイガとガヌーク、トロント動物園でハドソンという合計3頭の子供たちの父親になっているわけです。この下の映像はイヌクシュクがサンフェリシアン動物園で雌のエサクバク (Aisaqvaq) との間で繁殖行為を行っている映像です。



上の映像の時点(2008年4月)で実はイヌクシュクはまだ5歳だったわけです。 この年こそ繁殖には成功しませんでしたが翌年見事にパートナーのエサクバクは双子の赤ちゃんを出産したわけでした。 優秀な雄のホッキョクグマというのは早い年齢でこうして繁殖の最前線に立つという証でしょう。 ちなみに雌のエサクバクもイヌクシュクと同じ年齢です。

(資料)
Moose FM (Oct.11 2012 - Inukshuk Joins Son Ganuck at Polar Bear Habitat)
Cochrane Polar Bear habitat (Oct.1 2012 - Inukshuk Arrives)
c-townweb (Oct.2 2012 - Inukshuk Arrives at the Cochrane Polar Bear Habitat)
(*追加資料)
A World Through Lenses (Jul.11 2003 - New polar bear cub in the zoo)

(過去関連投稿)
カナダ・コクレーン、ホッキョクグマ保護施設のナヌークの死 ~ 安住の地で波乱の生涯を終える
カナダ・オンタリオ州、コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村の苦闘 ~ 新しい個体を求めて
カナダ・サンフェリシアン原生動物園の双子、旅立ちの時来る ~ 2頭共にケペック水族館へ
カナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村にホッキョクグマ戻る ~ ガヌークの近況
by polarbearmaniac | 2012-10-16 01:00 | Polarbearology

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