街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの物語 ~ 双子姉妹と繁殖との関係

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オーロラとニキータの姉妹 Photo(C)The Daily Planet

以前に「アメリカ・オレゴン州 ポートランド、オレゴン動物園のコンラッドとタサル ~ 別離なき永遠の双子兄妹」という投稿で、アメリカ・オレゴン州ポートランドのオレゴン動物園で飼育されているコンラッドとタサルの双子の兄妹が27歳になっても別れることなく同じ動物園で暮らし続けていることをご紹介しています。 それほどまでの年齢ではないにせよ、常に一緒に何度かの移動を共にしてきた双子の例をここでまたご紹介しておきます。 それはここ数日連続して取り上げてきたカナダのトロント動物園、そこで飼育されているオーロラとのニキータの双子の姉妹です。
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2000年の2月、カナダ・オンタリオ州のハドソン湾から南に突き出たジェームズ湾の沿岸で生後4か月ほどと思われるホッキョクグマの双子の赤ちゃんが、とぼとぼと歩いているのを発見されました。 周りにお母さんの姿は見当たらず、どうもお母さんは狩猟者によって殺されてしまったものと思われます。 この双子の赤ちゃんは早速トロント動物園に移送され、そこで保護されることになったのでした。
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Photo(C)A World through Lenses

トロント動物園においてこの双子の孤児の赤ちゃんの名前の公募が行われ、2頭はオーロラとニキータと命名されました。 このオーロラとニキータがトロント動物園でその年の5月に一般公開されたときの映像を以下にご紹介しておきます。



(*後記 - 後日トロント動物園が公開した同園でのオーロラとニキータの写真を以下にご紹介しておきます。)
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Photo(C)Tronto Zoo

この双子の姉妹はトロント動物園で1年を過ごした後にケベック州のサンフェリシアン原生動物園を経てコクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村に移動し、そこで5年間を過ごすことになります。 このコクレーン時代のオーロラとニキータの映像を一つご紹介しておきます。



さて、この姉妹ですがコクレーンにおいてはパートナーとなるべき雄がいなかったためと、トロント動物園で新施設(Tundra Trek) が完成したのを機に2009年の7月に再びトロント動物園に戻ってきたのでした。 そしてこの姉妹とともにトロント動物園に復帰したのが昨日投稿しました雄のイヌクシュクだったわけでした。 ここでトロント動物園に復帰した直後の時期のオーロラとニキータの映像を一つご紹介しておきます。



イヌクシュクはその年の春、サンフェリシアン原生動物園でエサクバクとの間で繁殖行為に成功していたわけで、今度はトロント動物園でオーロラとニキータの姉妹との間での繁殖が期待されたわけです。 そしてとうとう2年後の2011年の春にイヌクシュクとオーロラとの間に繁殖行為があり、その結果としてオーロラが昨年2011年の10月に初出産したのでした。 オーロラは三つ子を出産したのですが、その赤ちゃんたちのその後については、「カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 今シーズン最初の出産ニュース」、「カナダ・トロント動物園で誕生の赤ちゃん、生き残った2頭のうち1頭が死亡」、「カナダ・トロント動物園にて人工哺育で育てられた赤ちゃんが遂に一般公開」をご参照下さい。 生き残った1頭こそ先日満一歳の誕生日を迎えたハドソンであるわけです。

オーロラは自分の産んだ赤ちゃんのうち生き残っていた2頭を虐待・攻撃し1頭を死亡させてしまいました。 そしてトロント動物園は生き残っていた1頭を救いだし人工哺育で育てたということなのです。 オーロラはこの時が初出産だったわけで、こういった結果になってしまったのもいたしかたのないことかもしれません 。昨日ご紹介していますと通り、雄のイヌクシュクがコクレーンに移動したという事実と、トロント動物園はハドソンとニキータを同居に近い形にもっていくことを考えている事実から、今春にイヌクシュクとオーロラとの間に再び繁殖行為があった可能性は強いと思われます。 果たしてこれから年末にかけて再びオーロラに出産があるのかどうか、トロントよりのニュースに注目したいと思います。
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ニキータ(左)とオーロラ(右) Photo(C)Toronto Star

こうしてオーロラとニキータという姉妹は常に一緒に移動を繰り返してきましたが、オーロラはいち早く出産したものの育児を行うことはできませんでした。 双子の姉妹が一緒に暮らす年月が長くなるにつれて、ひょっとしたら繁殖の面では良くない影響があるかもしれないという考え方はありえます。 しかし、ケベック州のサンフェリシアン原生動物園のエサクバクとフリーマスの野生孤児の双子の姉妹もずっと一緒に移動を共にしてきたわけですが、エサクバクが2009年に出産に成功し、その後の育児も順調に行った例がありますから姉妹が長く一緒に生活したことが繁殖に影響を与えたということは言えないでしょう。 また、ドイツのロストック動物園生まれの双子の姉妹のヴィーナスとヴァレスカも一緒にフィンランドのラヌア動物園に移動しヴィーナスが昨年暮れにランツォを出産していますので、これも双子の姉妹の同居が繁殖に影響したとは言えない例でしょう。 むしろ、双子姉妹は一緒に暮らしていたほうが、相手となる繁殖のための雄1頭に対する精神的負担が軽減されるためにむしろ有利であるというほうが遥かに真実に近いと考えられます。 
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オーロラとニキータ Photo(C)STEVE RUSSELL / TORONTO STAR

ただし、姉妹の2頭のうちのどうちらかが先に出産して、さらに残ったもう一頭の繁殖を成功させるためには1頭を他園に移動させたほうが良いという考え方はありえます。 サンフェリシアン原生動物園のフリーマスは姉妹のエサクバクと別れて2011年にオランダ・ヌエネンの「動物帝国」に移動した件は「オランダとカナダの施設のホッキョクグマ個体の交換が発表 ~ 遂に開始された北米・欧州間の個体交換」をご参照下さい。 また、フィンランド・ラヌア動物園のヴァレスカも姉妹のヴィーナスと別れてドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園に今年の春に移動した件については「フィンランド・ラヌア動物園のヴァレスカがドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園へ」をご参照下さい。 つまり、双子の姉妹が同じ動物園で暮らし1頭が出産に成功した場合は他の1頭は他園に移動させて繁殖を狙わせる考え方もあるようにも思われます。 とすれば、トロント動物園にニキータも今後他園に移動する可能性もあるかもしれません。

それからもう一つ、こうしてカナダでの野生孤児の扱いを調べていきますと、こういった孤児が双子であった場合は極力その2頭を引き離さないような処置がとられるということです。 以前にも「オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係」という投稿で触れましたが、カナダ側は最初から野生孤児の双子を引き離して1頭を日本(秋田県)に移動させようなどという考えは実は最初から無かったのだろうと思います。 そういったことがカナダの野生孤児の扱いの考え方であることがいくつかの事例に垣間見えてくるわけです。

(資料)
CBC Digital Archives (May.12 2001 - Polar bear cubs debut at Toronto zoo)
A World through Lenses (Dec.1 2001 - Polar bear cubs at the Toronto Zoo)
Toronto Star (Jul.4 2009 - Returning polar bear orphans get fancier digs)
Canada Cool (In Cochrane Ontario you can swim with Polar Bears)
National Post (Oct.12 2011- Two cubs die as mother polar bear turns on her three newborns)

(過去関連投稿)
カナダ・サンフェリシアン原生動物園の双子、旅立ちの時来る ~ 2頭共にケペック水族館へ
カナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村にホッキョクグマ戻る ~ ガヌークの近況
カナダ・トロント動物園で人工哺育されたハドソンの満一歳のお誕生会が開催される
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
アメリカ・オレゴン州 ポートランド、オレゴン動物園のコンラッドとタサル ~ 別離なき永遠の双子兄妹
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 今シーズン最初の出産ニュース
カナダ・トロント動物園で誕生の赤ちゃん、生き残った2頭のうち1頭が死亡
カナダ・トロント動物園にて人工哺育で育てられた赤ちゃんが遂に一般公開
オランダとカナダの施設のホッキョクグマ個体の交換が発表 ~ 遂に開始された北米・欧州間の個体交換
フィンランド・ラヌア動物園のヴァレスカがドイツのブレーマーハーフェン臨海動物園へ
オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールドのホッキョクグマたち ~ 繁殖への期待、豪太との関係
by polarbearmaniac | 2012-10-17 01:00 | Polarbearology

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