街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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エストニア・タリン動物園、懸案の新ホッキョクグマ展示場建設に向け募金活動を開始

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フリーダ (タリン動物園) Photo(C)Reporter.ee

旧ソ連のバルト三国であるエストニアの首都であるタリンの動物園に暮らすホッキョクグマについてかつて2回ほど投稿しています。 2007年9月に20歳になる雄のフランツが飼育員の度重なる失態の結果、亡くなってしまった件(「エストニア・タリン動物園の気骨のホッキョクグマ、フランツの非業の死 ~ 待ち望まれる新施設」)、そしてそういった事件の教訓及び、現在のホッキョクグマ舎での飼育環境の悪さを外部から指摘されたことなどから新しいホッキョクグマ飼育展示場を建設を図ろうとするものの資金不足で進展のない件(「エストニア・タリン動物園、ホッキョクグマ舎改築は予算獲得が難問」)についてご紹介してきました。
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モスクワ動物園時代のノルト (現 タリン動物園) Photo(C)Stolitsa.ee

こういった窮状のタリン動物園ですが、昨年及び今年の春にまたイギリスの動物保護活動団体(“Born Free”という、比較的よく知られた団体)から手厳しい非難を浴びせられました。 その非難は、従来から言われ続けてきたホッキョクグマはもちろんのこと、他の動物の飼育状況まで及んだそうです。 このタリン動物園の現在のホッキョクグマ舎の様子とそういった非難について伝えているエストニアの第2チャンネルの報道映像を こちらのページを開いていただいて左下の映像をご覧いただきたく思います。このタリン動物園の現在のホッキョクグマ舎がどのようなものかについてかなりわかります。 こういったイギリスの動物保護活動家からの非難に対してタリン動物園はかなり反発したようで、その団体のことを狂信的であるとまで言い放って反撃したりもしています。 さらに、国からもタリン市からも十分な資金援助がないため動物園が自前で新しい施設を建設するだけの資金の確保を行わねばならないという極めて困難な状況を説明したりして非難をかわそうと懸命です。

しかし一方でタリン動物園では、ホッキョクグマをはじめとした動物たちの飼育環境の改善の必要性は十分に認識しているわけです。 新しいホッキョクグマ展示場の建設には400万ユーロ(約4億円)が必要なわけですが、タリン動物園が施設整備費として援助を受けているのは年間22万5千ユーロ(約2千3百万円)にしかすぎません。 ですから大方の資金は動物園が単独で用意せねばならないという状況を克服する必要があるわけです。 そのために大々的な募金活動を行うことが発表されました。 「ホッキョクグマに新しい家を(“Новый дом для белых медведей”/ “Jääkaru uus kodu”」と名付けられたこの募金プロジェクトが立ち上げられたことをエストニアのマスコミは伝えています。
(*追記 - タリン動物園の最新の映像をご紹介しておきます。 園長さんがこの募金活動について話しています。)


現在このタリン動物園では3頭のホッキョクグマが飼育されているのは以前もご紹介した通りです。 ヴァイダ(27歳)とその娘のフリーダ(9歳)の母娘、そしてモスクワ動物園から移動してきた雄のノルトの3頭で、フリーダとノルトの間の繁殖が期待されています。 いくつか映像を見てみましょう。 

まず、この下ですがこれが雄のノルトですね。



こちらが雌のフリーダですね。



これはフリーダの水遊びです。



今年になってからでしょうか、私は世界の動物園のホッキョクグマ以外の動物たちの情報もかなり調べているのですが、こういった動物園における飼育環境の改善・整備についての情報は圧倒的にホッキョクグマが多いことに気が付きました。 非常に極論すれば、「動物園の飼育環境の整備・改善」イコール「ホッキョクグマの飼育環境の整備・改善」と言うほどホッキョクグマについてだけ突出して光が当てられているように感じます。「動物園の評価」イコール「その動物園のホッキョクグマの飼育環境の評価」とさえ読み間違えるほどです。

その「突出」の理由は私の見たところ2つあるように思います。 一つ目は、ここ近年の自然下におけるホッキョクグマ保護意識の高まりです。 つまり、自然下で追い詰められつつあるホッキョクグマをなんとかしてやりたいものの実際にそうは簡単にいかないことを人間が意識の下で自覚しており、そういった我々自身の責任や後ろめたさを、飼育下のホッキョクグマのために立派な施設を建設してやることによってある種の「贖罪」としているのではないかということです。 二つ目としては、ホッキョクグマの生息地の自然環境があまりにも人間の通常の生活環境と異なっているために、「果たして動物園でホッキョクグマを飼育することが本当に正しいのか?」という問題意識を持った問いかけが欧米(特にドイツとカナダ)の識者によって繰り返し問い続けられ、それに対する一つの解決手段として、せめて飼育環境を大幅に改善することによってこういった問題意識への回答を先送りしたいと考える人間の側の意識です。 この二つを考えなければ、動物園の飼育環境の改善への話題が、なぜこれほどホッキョクグマに「突出」しているかの説明がつかないように思います。 

あくまでも、こういった意味に関する限りでは飼育下のホッキョクグマは他の飼育下の動物と比較すれば、より幸せなのかもしれません。 だからといって他の動物たちを軽視してよいなどとは私は毛頭思いません。 たまたまこのブログではホッキョクグマだけを扱っていますが、ホッキョクグマさえ良ければ他の動物たちはどうでもよいなどという考え方を私は決してしておりませんので、念のために付記しておきます。

(資料)
Правила цитирования новостей ERR (Aug.7 2012 - Алексей Туровский: ни в коем случае не заводите дома обезьян)
Postimees (Aug.7 2012 - Туровский рассказал, почему белые медведи живут в Таллиннском зоопарке не в самых лучших условиях)
Новости DELFI (Sep.26 2012 - Белым медведям Таллиннского зоопарка нужна помощь)
AS SL Õhtuleht (Sep.26 2012 - Tallinna loomaaia jääkarud vajavad abi)
prognoz.ee (Sep.25 2012 - Видео: белые медведи Таллиннского зоопарка нуждаются в вашей помощи)
Новостей ERR (Oct.23 2012 - На новый дом для белых медведей зоопарк будет собирать пожертвования)
Записки туриста (Feb.2 2011 - Таллинский зоопарк)

(過去関連投稿)
エストニア・タリン動物園の気骨のホッキョクグマ、フランツの非業の死 ~ 待ち望まれる新施設
エストニア・タリン動物園、ホッキョクグマ舎改築は予算獲得が難問
by polarbearmaniac | 2012-10-24 19:30 | Polarbearology

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