街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ドイツ・ヴッパータール動物園のアノーリ、同園からの旅立ちは当分先となる模様

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アノーリ Photo(C) WAZ

ドイツのヴッパータール動物園で今年の1月4日にヴィルマお母さんと亡きクヌートの父であるラルスとの間に生まれたクヌートの腹違いの妹にあたるアノーリについて久方ぶりの投稿です。 今年の5月にアノーリの父であるラルスが繁殖目的のためにヴッパータール動物園からロストック動物園に移動した件はご紹介していましたが、その後にヴッパータール動物園の園長さんが「ラルスは1年で戻ってくるからアノーリはその前までにヴッパータール動物園から移動せねばならない。」という内容の発言をしていました。 この園長さんの発言、私は当初より奇妙だと思っていました。 というのも5月の末に繁殖目的のためにホッキョクグマを移動させるというのは不可解だということと、その期間が1年というのも不思議な話だということです。

そもそもラルスが5月末にロストックに移動したのはロストック動物園のヴィエナの繁殖パートナーとするためなのですが、このヴィエナのパートナーだったブリザードが4月にロストック動物園からハンブルクのハーゲンベック動物園に移動した後釜としてラルスが期待されたからでした。 ブリザードがハンブルクに移動する前にロストックでヴィエナと繁殖行為があったかどうかは不明です。 しかし、ハンブルクのハーゲンベック動物園の新施設のオープンに合わせてブリザードがハンブルクに移動したと考えるのが正しいでしょう。 ブレーマーハーフェン臨海動物園のヴィクトリアが昨年10月下旬にやはりハンブルクのハーゲンベック動物園に帰還していますが、このヴィクトリアがハンブルクでブリザードと新しいペアを組むわけですが、それにしてもブリザードがハンブルクに行った時期が4月というのも微妙な時期です。 どうも私はハンブルクのハーゲンベック動物園がホッキョクグマの繁殖という問題を軽視してEAZAのコーディネータに対して横車を押しているような気がしてしょうがありません。 このような事情を背景とすればラルスが1年でロストックからヴッパータールへ帰還するということはないのではないかと思っていました。
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アノーリ Photo(C)dpa

ここにきて現地の報道によりますと、やはりやや雲行きが変わってきたようです。 アノーリがヴィルマお母さんから別れてヴッパータール動物園を去る時期がかなり先に延びそうだという報道です。 ヴッパータール動物園の園長さんがアノーリは1年(正確には生後14か月)で同園を旅立つという当初の発言は欧州のホッキョクグマ界の現状から言ってやはりおかしいわけです。 間もなく2歳になろうというニュルンベルク動物園のグレゴールとアレウトの双子兄弟、間もなく4歳になろうかというデンマークのオールボー動物園のミラク、オランダ・レネンのアウヴェハンス動物園のこれもそろそろ2歳になるシークーなど、そもそもアノーリより年長の幼年個体がまだ移動していないなかでアノーリだけが彼らを差し置いて生後14か月で来年の3月頃にどこかの動物園に移動するということはありえないだろうということです。 それから類推すればラルスのロストック滞在もさらに1年延びるだろうと私は予想します。 ヴッパータール動物園の園長の当初の発言はそういったホッキョクグマ界の状況を重視しなかった発言のように思われます。 ここでアノーリのごく最近の映像をいくつか見ておきましょう。一緒に映っているヴィルマお母さんも遊び好きな母親ですね。





欧州のホッキョクグマ界の動向はかなり複雑に見えます。 アノーリの将来のパートナーをどうするかは、その個体の移動、そしてその移動場所を含めてまるでパズルを解くようなものでしょう。 この複雑さはすなわち血統の多様性を維持しつつホッキョクグマの繁殖に欧州ではかなり成功しているが故のものだと思います。我々日本人から見れば、うらやましい話だとも思います。

(資料)
Bild.de (May.25 2012 - Eisbärchen muss weg von Mama)
njuuz.de (Nov.4 2012 - Eisbärkind Anori bleibt im Wuppertaler Zoo)

(過去関連投稿)
ドイツ・ヴッパータール動物園のヴィルマとラルス ~ 繁殖が期待される新ペア
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by polarbearmaniac | 2012-11-06 15:00 | Polarbearology

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