街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・フロリダ州オーランドのシーワールドがカナダ・アシニボイン公園動物園と協力関係構築へ  

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ジョニー、クロンダイクと故スノウ  Photo(C)SeaWorld Orlando

アメリカ。フロリダ州オーランドのシーワールドで飼育されている雄のホッキョクグマのクロンダイクについては以前投稿したことがあります。 1994年デンバー動物園生まれで人工哺育で育てられた有名なホッキョクグマですが、双子の一方は雌のスノウであり、このスノウが8月にアリゾナ州ツーソン(Tucson)にあるレイドパーク動物園(Reid Park Zoo)で9月3日に急死したことについてもご紹介しています(過去関連投稿参照)。

このシーワールドがこのたびカナダ・マニトバ州のアシニボイン公園動物園と合意書をとりかわし、ホッキョクグマ保護のための生態調査、生態保護、広報・教育活動に関しての情報を交換・共有することを決定しました。 カナダのアシニボイン公園動物園といえば、亡くなった当時世界最高齢であったデビーが飼育されていた動物園であり、デビーの娘である仙台・八木山動物公園のナナが生まれた動物園でもあります。 さて、一見なんでもないようなこのニュースですが実は相当に深い意味を持っていると私は理解します。 背景にあるのはこのシーワールドの練りぬかれた戦略といったものだろうと思います。

さて、このシーワールドが合意書を取り交わした相手のアシニボイン公園動物園はデビーの死後はホッキョクグマを飼育していません。 そういったアシニボイン公園動物園とホッキョクグマに関する合意書を取り交わしたシーワールドの意図はなんなのでしょうか? アシニボイン公園動物園では現在は新しいホッキョクグマの展示施設を建設中で2014年に竣工の見通しですが、すでに今年の2月に同園内に「ホッキョクグマ保護・厚生センター (The International Polar Bear Conservation Centre)」 が完成・オープンしており、これは親からはぐれて孤児となったホッキョクグマとか負傷したホッキョクグマを収容する施設であるわけです。 この「ホッキョクグマ保護・厚生センター」の教育展示の様子を以下に御紹介しておきます。



ホッキョクグマ保護活動の一環として野生のホッキョクグマのうちこのような個体を動物園で保護していこうという新しい流れについては何度か御紹介してきた通りですが、そういった流れの中でこのアシニボイン公園動物園の役割は今後重要なものになっていくことは十分に予想がつきます。 フロリダ州のシーワールドはどうもそこに目を付けたのではないかと思います。 つまり、今後保護すべき野生個体が増加することによってアシニボイン公園動物園の「「ホッキョクグマ保護・厚生センター」の役割が増え、それによってある程度以上の野生個体の受け入れ先に困る状況が生じてきた場合にシーワールドがその受け皿になろうということなのではないでしょうか。 そうした形で野生個体を導入を図るという、これは非常に綿密に練りあがられた戦略のような気がします。 現在シーワールドで飼育されているのは前述した18歳の雄のクロンダイクと、それから間もなく22歳になる雄のジョニーです。 今後をにらんでどこから雌の個体を導入しようかという時にどこかの動物園で生まれた雌の個体の導入は至難の業であることは十分予想がつき、結局のところ野生個体を導入する場合として可能性のあるのがアシニボイン公園動物園であると考えたのでしょう。 雌の個体の獲得には非常に時間がかかることが予想され、現時点からこのアシニボイン公園動物園との協力関係を構築しておくことは将来の野生個体の導入に有利であると考えたと思われます。

以前、「アメリカで登場したホッキョクグマ輸入の特別枠要求への動き」と言う投稿でもご紹介していますが、アメリカ国内において海洋哺乳類保護法に輸入特別枠を設定して動物園に野生個体(アラスカからを意味します)を導入することを可能にしようという動きが一部で出ています。 こういったアメリカでの流れとは別にカナダでは野生個体(特に孤児)の保護施設を整備するという流れが顕著になっており、アシニボイン公園動物園だけでなくコクレーンのホッキョクグマの保護・更生施設も今後その役割が増大するでしょう。 フロリダのシーワールドはそういった世界のホッキョクグマ界の最新の流れを見据えているのだと思われます。 残念ながら我々日本人にはなかなかできない発想だと感じます。 それというのも日本ではこういった「展示から保護へ」という世界のホッキョクグマ界の潮流がマスコミ記事となる可能性がないため一般に広く認知されるに至っていないいうことだろうと思います。 以前に「ホッキョクグマの繁殖計画、飼育環境整備、そしてその後に来るべき新しいフェーズについて」という投稿をしていますが、こういった「保護」への流れが世界のホッキョクグマ界の潮流になっていくことになるでしょう。 野生個体を獲得しようとする動物園は、まずその野生個体を「保護」するという観点からの飼育となり、そしてその資格、すなわち整った飼育環境がなければなりません。 フロリダのシーワールドは自分たちはその資格があると自負していることは間違いないでしょうし、写真や映像などを見る限りにおいては多分それだけの環境があるのかどうかはよくわかりません。

(*本投稿は当初投稿を大幅に訂正して再投稿したものです。)

(資料)
Winnipeg Sun (Nov.13 2012 - SeaWorld partners with Assiniboine Park Zoo for polar bear sustainability)
Winnipeg Free Press (Nov.13 2012 - Zoo, SeaWorld form partnership)

(過去関連投稿)
アメリカ・フロリダ州シーワールドのスノウ、脱毛治療のためにアリゾナ州のレイドパーク動物園へ移動決定
アメリカ・デンバー動物園で人工哺育された有名な双子のクロンダイクとスノウに遂に別離の時来る
アメリカ・アリゾナ州 レイドパーク動物園のスノウの慢性皮膚アレルギーが快方へ
アメリカ・アリゾナ州、レイドパーク動物園のスノウが急死 ~ 有名な双子の永遠の別れ
高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (上)
高齢のデビーを愛し、慈しみ、送った人々 (下)
偉大であったホッキョクグマのデビー、その娘であるナナと再会した猛暑の仙台
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園内に建設中のホッキョクグマ保護・厚生センターについて
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園内にホッキョクグマの保護・厚生施設が完成
カナダ・マニトバ州、アシニボイン公園動物園の新展示場施設の建設  ~  偉大なるデビーの遺したもの
アメリカで登場したホッキョクグマ輸入の特別枠要求への動き
ホッキョクグマの繁殖計画、飼育環境整備、そしてその後に来るべき新しいフェーズについて
by polarbearmaniac | 2012-11-14 16:00 | Polarbearology

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