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ララの赤ちゃんたちの性別を過去のデータを用いて予想する!

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ララ  (2012年11月4日撮影 於 札幌・円山動物園)
Nikon D5100
AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR

さて、札幌・円山動物園で12月8日にララが産んだ赤ちゃんは1頭ではなかったことが確認されましたが、現時点でこの赤ちゃんたちの性別を過去のデータで予想してみることとします。 これは「 『ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)』よりの考察(5) ~ 赤ちゃんの頭数・性別は事前予測可能か」という投稿でも書きましたように以下の二点が前提となります。

① 事前予想を行うために用いる過去の飼育下のデータはサンプル数が多いわけではなく、よって厳密な意味での統計学的なデータとするのは難しい。

② 頭数・性別を事前に予測できたからといって、そのこと自体が何らかの意味を持つことにはならない。


上記のうち①については、過去の統計データというのは全体の傾向を示すものであり、それを個別の事例に適用させて使用すること自体が問題であるということと、そもそもデータとはいってもサンプル数が限られていて統計学的な意味でのデータとは言えないという点です。 ②については、性別を予測してみたところで、それがホッキョクグマの繁殖に何ら貢献する要素はないという点です。 ですから今回の予想も単なる暇つぶしの「頭の遊び」以外の何物でもないということです。 ですので、以下書くことをあまり真面目にとっていただいては困ります。 しかし今回この過去のデータを用いるのは、何かを予想するのに根拠なしにはそういった予想はできないという基本的な態度に基づくものです。 それをふまえてあえて現時点での予想を行ってみます。

かねてから何度かご紹介しているロシアの生物学者であるイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告である ”Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)” のデータを今回も用いることにします。 何故ならそれ以外にホッキョクグマの交尾時期、出産時期。そして頭数と性別との傾向を研究したデータは存在していないからです。 このイーゴリ・トゥマノフ氏の研究報告のデータが示す傾向については以前の投稿である「ホッキョクグマ出産統計から見た傾向を再確認する」をまずご参照下さい。 それから今回は札幌・円山動物園でのララとデナリとの間の繁殖に関してのデータとして同園のホッキョクグマの担当をしていらっしゃった飼育員さんの作成した「ホッキョクグマの繁殖に関する一考察」 を資料として用いることにします。

円山動物園のHP情報によりますと今年 (2012年) のララとデナリとの間の交尾が確認されたのが3月19日と20日です。 この場合は最初の日の19日を「交尾日」として採用するのがトゥマノフ氏のデータとの整合性をとるためのルールとなります。 出産日は12月8日ですから妊娠日数 (Pregnancy Duration) は264日間となります。 実はララが2008年にイコロとキロルを出産したときには交尾日が3月20日、出産日が12月9日であり、共に今回の出産と一日しか違っていません。 ですからイコロとキロルの出産の妊娠日数も今回の赤ちゃんと全く同じ264日間です。 となれば、今回の2頭の赤ちゃんも雄 (オス) のツインズではないかと予想することは比較的容易なわけですが結論としてこの予想に飛びつく前に、もう少しトゥマノフ氏のデータとララの過去の出産例との個別の比較を行ってみましょう。

トゥマノフ氏のデータの Table 1 で交尾日 (Dates of copulation) が3月19日の場合は、平均妊娠日数 (Mean pregnancy Duration) は254日間です。 となれば、今回のララの妊娠日数は平均よりもかなり長いことになります。 妊娠日数が長くなる場合には雄の確率が若干下がってくるわけです。 そしてそれと同時に Table 2 の数字を見ていきますと平均出産頭数が下がってくるわけです。 ということは、ララが2008年にイコロとキロルの双子の雄を産んだ時はこのトゥマノフ氏のデータとは逆の方向を示していることになります。

ララが2005年にピリカを産んだときは交尾日は最初の日を採用して5月13日、出産日は12月15日ですから妊娠日数は216日間となります。 これをトゥマノフ氏のデータに当てはめますと、Table 1 の傾向から言えば出産個体は雄の確率が一番高く、Table 2 から言えは双子である確率が一番高くなるはずです。 ですからこのピリカのケースもトゥマノフ氏のデータとは逆の方向を示していることになります。

ララが2003年にツヨシを産んだ時は交尾日は4月2日、出産日は12月11日ですから妊娠期間は253日間です。 これをトゥマノフ氏のデータに当てはめますと、Table 1 の傾向から言えば平均よりも妊娠日数が長いため雄である確率が減り、Table 2 の傾向から言えば双子である確率もやや減ることになります。 しかしツヨシは生まれた時には双子だったわけですから、ツヨシの場合はトゥマノフ氏のデータとは幾分か逆の方向を示しているという程度でしょうか。 (*注 - 私はかなり以前、ララの出産に関しては全てトゥマノフ氏のデータに合致していると書いたことがありますが、細かく見ていくとそうではないですね。)

ララが2010年にアイラを産んだときは交尾日は調べてみましたら3月27日、出産日は12月25日です。 そうしますと妊娠日数は273日間です。 これは今までのララの出産のうち成功したものの中では最長記録です。 これをトゥマノフ氏のデータに当てはめますと、Table 1 の傾向から言えば雄の確率は減り、そしてTable 2 の傾向から言えば双子の確率は減るわけですから、アイラについてはトゥマノフ氏のデータの傾向に合致していることになります。

さて、以上の傾向から考えてみます。 ララの過去の4回の出産のうち最初の3回まではトゥマノフ氏のデータとは逆の方向を示していたにもかかわらず、前回アイラの場合はトゥマノフ氏のデータの傾向に見事に沿っていることになります。 今回は出産が2頭であることから、すでに頭数の点では Table 2 の傾向とは逆の方向になっています。 問題はTable 1 のほうです。 前回のアイラの場合はトゥマノフ氏のデータの傾向と同じ結果だったわけで、私はララは出産経験を積むことによってだんだんとトゥマノフ氏のデータの傾向に沿った出産を行うようになるのではないかと推察します。 そうすると今回の出産の頭数で言えばすでにTable 2 の傾向とは逆であるもののTable 1 についてはトゥマノフ氏のデータの傾向に従うのではないかと考えてみたく思います。 そうなると私の現時点での予想は、

「現在ララが産室で育てている2頭の赤ちゃんは両方とも雌(メス)である」

ということになります。 しかしすでに申し上げましたように今回のララの出産については交尾日も出産日もイコロとキロルの時と一日ずれているだけで妊娠日数は全く同じです。 これらから単純に考えて今回の2頭とも雄(オス)だろうと予想する気もないわけではありません。 難しいですね、これは。

仮にララの出産日がもっと早かった場合、つまり今までのララの出産日よりも早く、たとえば11月下旬だったら、今回は三つ子の可能性が十分あったと思います。 ララに体調と行動に変化の兆しがあったために産室に閉じ込めた日が例年よりもかなり早かったのが今回の特徴ですが、私はそのララが早々と産室入りしたのを知った時には今回の出産日は今までの例よりもひょっとして早いのではないか、つまり三つ子を産む兆候ではないかと考えたわけです。 何故ならばそうなると、Table 1 と Table 2 の傾向がアイラの場合のように合致することになり、それは三つ子の傾向を示すと考えたものでした。 しかし現時点ではまだ三つ子ではないとまでの断言はできないように思います。 実は今回の出産でララが三つ子を産む可能性は、これまた過去の世界の動物園での三つ子の出産の実例から考えると、十分にある(あった)わけです。 出産回数と雄雌の出産パターン、母体の年齢...などなどを比較考量するとそう言える(言えた)わけですが、もう長くなりましたので今回は性別のみの予想としておきます。 再度繰り返しますが、こういった予想は「お遊び」程度のものだと考えて下さい。

さて、今回のララの赤ちゃん、どうでしょうか? ここで予想したように仮に雌 (メス)のツインズならば、おもしろいことになりそうです。 予想はともあれ、私は雌のツインズを見てみたい気がします。 イコロとキロルの雄のツインズとの比較はおもしろいかもしれません。 モスクワ動物園のシモーナは今の三つ子を産む前の2009年の出産では雌のツインズであるトーニャ (現ベルリン動物公園)ミラーナ(現モスクワ動物園 ヴォロコラムスク付属保護施設) を産んでいます。 私もそのときの雌のツインズをモスクワで見ていましたが、非常に行動が特徴的でした。 それはまた機会を改めてご紹介したいと思います。 ちょっと気が早いですが、このモスクワ動物園で2009年に誕生した雌のツインズの戸外初登場の日の映像を一つご紹介しておきます。 一緒に映っているお母さんはもちろんシモーナです。



(資料)
ホッキョクグマの繁殖に関する一考察 (札幌市円山動物園)
Reproductive Biology of Captive Polar Bears (by IGOR TUMANOV. Research Institute of Nature Conservation of the Arctic and North, St. Petersburg, Russia)

(過去関連投稿)
ララが降誕祭に生んだ赤ちゃんの性別を予想する!
ホッキョクグマ出産統計から見た傾向を再確認する ~ 出産シーズンに向けての知識整理
ドイツ・ヴッパータール動物園で誕生の赤ちゃんの性別を過去のデータで予想する
ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(5) ~ 赤ちゃんの頭数・性別は事前予測可能か
by polarbearmaniac | 2012-12-21 01:00 | Polarbearology

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