街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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東京都美術館で開催中の「メトロポリタン美術館展」に出展されたポンポンのホッキョクグマの彫像

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フランソワ・ポンポン作 「シロクマ」 (ニューヨーク、メトロポリタン美術館)
Photo(C)The Metropolitan Museum of Art, New York

ホッキョクグマを題材にした美術というのは実はあまり多くありません。 しかしそうした中で貴重な作品はフランスで19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した彫刻家であるフランソワ・ポンポン (François Pompon 1855-1933) によっていくつか制作されており、現在上野の東京都美術館で開催されている「メトロポリタン美術館展」にその作品の一つ(上の写真)が出展されています。 

今回の「メトロポリタン美術館展」は「自然」を切り口として、人間と自然との関係が絵画と造形美術でどのように捉えられてきたかに焦点を当てた企画展として行われているそうで、そういったテーマの一つに「動物たち」というテーマでの展示が行われているようです。 この展示作品の一つがフランソワ・ポンポンの制作した「シロクマ」(冒頭の写真)であるということです。 以下が今回の「メトロポリタン美術館展」のプロモーション映像です。



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フランソワ・ポンポン 「シロクマ」 (パリ、オルセー美術館)
Photo(C)Musée d'Orsay

実はこのフランソワ・ポンポンの「シロクマ」は一番有名なものとしてはパリのオルセー美術館で展示されているもの(上の写真)で、これは私も実際に見て非常に興味深く感じたことを覚えています。 今回東京都美術館での特別展に出展されている作品はメトロポリタン美術館所蔵のものですが、私はニューヨークのメトロポリタン美術館ではこの作品を見た記憶がまったくありません。 大きさがパリのものよりもはるかに小さいようですね。

この作品は1923年頃に制作されたものだそうですが、このフランソワ・ポンポンが活躍した時代の欧州の美術界はアール・ヌーヴォー、それに続くアールデコの開花した時代と重なっており、この作品に見る曲線をその影響と結びつけて考えたくなります。 しかし、アール・ヌーヴォーやアールデコの特徴としては装飾性の豊かさがあるわけですが、そういったものをホッキョクグマの姿を造形する際には用いることができないわけで、そうなるとこの作品にはアール・ヌーヴォーやアールデコの影響があると考えるよりはロダンの工房で修業した体験が「動物彫刻」という彼独特のジャンルの中に投影されていると考えたほうが正確なのかもしれません。 

なぜホッキョクグマを題材にした美術作品(特に造形美術)が少ないのかということですが、私見ではホッキョクグマの体はデフォルメして表現することが不可能な題材だからではないかと思います。動物という存在の意味するものに対して人間の側の意識に何か想像力を働かせる要素があるとすれば、それは旧約聖書、ギリシャ神話、ローマ神話 (日本ならば古事記、日本書紀など) といったものに登場する場合であって、そうした場合には人間の意識との関わり合いのなかで動物が一つの表現対象としての意味を持ち得るわけです。 この場合には人間の側の意識に動物の存在が諸々の意味でデフォルメした状態で認識され、結果としての作品がデフォルメされるか否かは別にして、絵画、造形美術としての存在の意味を持ち得るのだろうと思います。 ホッキョクグマは旧約聖書、ギリシャ神話、ローマ神話(あるいは古事記、日本書紀)には登場しません。 よって美術作品の題材にはなりにくかった...そういうことだと思います。 ホッキョクグマの姿には人間の意識が投影しにくい、そういってもよいかもしれません。
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(資料)
東京都美術館HP (メトロポリタン美術館展)
メトロポリタン美術館展 「大地、海、空、4000年の美への旅
The Metropolitan Museum of Art (Polar Bear, ca. 1923)
Musée d'Orsay (François Pompon Ours blanc)
by polarbearmaniac | 2012-12-25 18:00 | Polarbearology

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