街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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今年2012年の日本のホッキョクグマ界を振り返って ~ 真の 「開国」 となるか?

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ララとアイラ (2012年1月24日撮影 於 札幌・円山動物園)
Nikon D5000
AF-S VR Zoom-Nikkor 70-300mm f/4.5-5.6G IF-ED

今年も押し詰まってきました。 今年2012年の日本のホッキョクグマ界を振り返ってみたいと思います。 男鹿水族館のクルミが初めて出産に成功したという以外にとりたてて今までの年と変わったことはなかったわけですが、それは従来の懸案は懸案として存在し続けている状況にさほどの変化がないということを意味します。

今まで日本のホッキョクグマ界は世界のホッキョクグマ界とは隔絶した状態にあったわけで、海外の動物園における傾向が日本の動物園に影響を与えたということはほとんどなかったと言えます。 以前、「ホッキョクグマの繁殖計画、飼育環境整備、そしてその後に来るべき新しいフェーズについて」という投稿でこれからの動物園におけるホッキョクグマの飼育展示が向かうであろう新しい方向性、世界的な潮流について考えを整理したことがありましたのでまずはそれをご参照いただきたく思います。 それは以下の三つのフェーズでした。

①飼育下におけるホッキョクグマの繁殖計画 (Breeding Program) の設定による自然繁殖の増進

②飼育下におけるホッキョクグマの生活環境の向上 (Better Welfare) のための施設整備

③自然下のホッキョクグマの保護のための補完的役割を担う動物園 (Zoo as a Conservation Center for Polar Bears)


現在欧米の主要な動物園の多くはこの②の段階を終えつつある段階です。 そして次に③に向かう道を見出そうかという段階でしょう。 この③は飼育個体の減少に悩む北米の動物園が規制を突破して野生個体を自らの施設に導入したいという狙いを「ホッキョクグマの保護」という大義名目との間で何らかの整合性をとろうとした無理やりの理屈付けとも解することは十分に可能ですが、これはかなりcynical な見方かもしれません。欧州では①および②に成果を上げてはいますが、現在はまだ③の視点はないようです。 あるいは③については今後も考えない可能性もあります。

ホッキョクグマの飼育に関して世界の潮流とは隔絶していた日本ではありましたが、それが打ち破られる兆しが見え始めています。 その最たるものはドイツのハノーファー動物園とホッキョクグマの個体交換を狙って接触した札幌・円山動物園の例でした。同園では以前、イコロとキロルの誕生後にもこの個体交換を狙ってEAZA の EEP におけるホッキョクグマ担当のコーディネーターとの接触を試みたことがあったわけですが、その際には上記の三つのフェーズのうちの①が日本において欠落していることを指摘されたはずです。 今回のハノーファー動物園との接触では②の欠落を指摘されたものと理解します。 これは同園での「新ホッキョクグマ館」を建設する計画を前進させる動機になったことを意味します。 つまり日本の動物園も否応なしに欧米におけるこういった各フェーズ(①を経て②)の課題に適応せざるを得ない状況になったということです。 これはすでに上野動物園が新しい個体を海外から入手しようとしてまずは手始めにモスクワ動物園に接触し、それと並行して新しいホッキョクグマ飼育展示場を建設する際にもその重要な動機になったことでもありました。 しかしこの今年のハノーファー動物園と円山動物園の件は日本のホッキョクグマ界の本当の意味での「開国」に繋がる可能性のある重要な出来事だったといえましょう。 クルミの初出産やララの再度の双子出産は確かに大きな出来事ではありましたが、それよりも「開国:に向けた流れができてきつつあるいうことが今年もっとも注目すべき出来事だったと考えます。

こうして新しいホッキョクグマ飼育展示場を建設する意向を示している札幌・円山動物園、、そしてすでに「極地海洋ゾーン」の計画の概要を発表している大阪・天王寺動物園は北京動物園の新しい施設である「ホッキョクグマ展区」よりも飼育環境が決して下回ってはならず、むしろ世界の名だたる施設と肩を並べるだけの広さと飼育環境を実現さねばならないように思います。

(資料)
大阪日日新聞 (Ju.20 2012 - 自然環境に近い状態に 天王寺動物園リニューアル計画)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマの繁殖計画、飼育環境整備、そしてその後に来るべき新しいフェーズについて
ドイツ・ハノーファー動物園と個体交換交渉を行った札幌・円山動物園 ~ その背景を読み解く
秋晴れの北京動物園へ ~ 遂に待望のホッキョクグマたちとの再会!
北京動物園の将来繁殖が期待される若年ペアの様子、そして新ホッキョクグマ展示場の概要
by polarbearmaniac | 2012-12-28 13:00 | Polarbearology

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