街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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タイ・バンコク、サファリワールドの3歳の双子姉妹が中国・陝西省、西安市の曲江海洋極地公園へ移動

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セシとエスカ Photo(C)西安日報

これはまた大変興味深いニュースが中国から流れてきています。静岡・日本平動物園のヴァニラ(ヴァニア)の生まれ故郷であるタイ・バンコクのサファリワールドから三歳になる双子のホッキョクグマの姉妹が、昨夜バンコクからチャーター機で中国・陝西省の西安市の曲江海洋極地公園にそろって移動したというニュースです。 タイから飼育担当者と獣医さんも同行しており、この姉妹の移動のストレスの軽減と新居での適応をスムーズにさせる目的のだめだそうです。 そうなるとこの二頭は手元資料によりますと2009年11月に双子の姉妹として誕生したセシとエスカということになります。 つまりヴァニラ(ヴァニア)の妹たちということですね。 現在この2頭の体重は160キロと169キロだそうです。
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Photo(C)华商网

西安の地元マスコミはおもしろい表現をしています。 この二頭は「纯种」だと言っています。 これは日本語では「純粋」ですね。 つまりハイブリッドではないということです。 現在中国各地のいくつかの施設でハイブリッドのホッキョクグマが飼育されており、そのうちのかなりについては今までこのブログでもご紹介してきました。 私自身も大連の虎灘海洋公園の極地海洋動物館のハイブリッドの赤ちゃん に実際会って写真と動画でご紹介したことがありました。 今回の二頭の姉妹は正真正銘のホッキョクグマでありハイブリッドではないことを強調したいらしい西安の地元マスコミは、多分中国国内のハイブリッドを飼育しているいくつかの施設に対して対抗意識をもっているのかもしれません。 ここしばらくは検疫期間で、2月10日の旧正月(春節)に一般に初めて公開されると報じられています。

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遣唐使のルート

西安といえば古くは中国の都であり、かつて長安と呼ばれていた街です。 かつて日本から遣隋使・遣唐使が派遣されたのがこの長安(現在の西安)だったわけですね。 あの玄宗皇帝が絶世の美女である楊貴妃を寵愛したのもこの唐の都である長安(現在の西安)でということになります。

この西安の曲江海洋極地公園は今回のホッキョクグマの雌2頭の導入のためにいくら払ったのでしょうか? なにしろあの中国のことですから相当額の程度の Price-Squeezing を行ったであろうことは間違いないでしょう。 中国には「正札」という考え方はありません。

(資料)
西安晚报 (Jan.8 2013)
西安日报 (Jan.8 2013)
华商网 (Jan.8 2013)

(*後記) 日本平動物園のヴァニラ (ヴァニア) の誕生日は2009年2月10日だったはずですよね。 ところが手持ちの資料では今回タイから中国に移動した双子姉妹の誕生日は2009年11月27日です。 さて....これらの日付が全て正しいとしますとちょっと変ですね。 日本平動物園のヴァニラ (ヴァニア) が当然お母さんから母乳だけで育てられているであろう期間中にお母さんは雄と繁殖行動期の同居に入り、そしてその後に繁殖行為を行い、そしてさらに同じ年にまた今回の双子姉妹を出産したということになります。 片方で授乳を行い、片方で繁殖行動を行う....これはほとんどあり得ない話です。 これを説明する唯一の解釈は、「ヴァニラ (ヴァニア) は人工哺育で育てられた。」 という解釈です。 これならばこのスケジュールは可能です。  
さて....ホッキョクグマ界の俗説によれば、「人工哺育で育てられた雌(メス)は繁殖しない。」 というテーゼがあるようです。 このテーゼが仮に正しいとしますと、三段論法で「ヴァニラ (ヴァニア) は繁殖しない。」 ということになります。 しかし以下のことを考えてみる必要があります。

今まで飼育下で人工哺育で育てられた雄(オス)が繁殖に成功した (繁殖に貢献した)例は過去にいくつも見いだせますが、雌(メス)が出産・育児に成功した例は少なくとも過去50年間において公式に公表されている範囲内では私には見いだせていません。 ただし、動物園で今まで出産、育児に成功した多くのお母さんたちの全てが人工哺育ではなく自然繁殖で育ったのかといえば、この回答は難しいです。 何故なら過去、いったいどの個体(雌)が人工哺育で育てられたかについて明らかにしていない動物園がいくつかあるであろうからです。 今まで飼育下で繁殖に成功したお母さんたちの中で、実は公表されていないものの本当は人工哺育で育てられたお母さんがいなかったとは言い切れません。 むしろ、いたのではないかと考えるほうが自然かもしれません。 さらに、「人工哺育」といってもいろいろあるからです。 ピースやクヌートのような完全人工哺育もあれば、生後1~2か月で人工哺育に切り替えたという例もあるからです。 ですので、「人工哺育で育てられた雌(メス)は繁殖しない。」 という俗説テーゼが本当に正しいかどうかの証明はできないということになります。 俗説は依然として俗説の域を出ない...そう考えておいたほうがよいでしょう。

言い方を変えれば、このテーゼは科学というよりはフロイトの精神分析のような 「解釈科学 (あるいは疑似科学)」 の域を出ていないのではないか...現時点ではそう考えたほうが無難でしょう。 このテーゼをフロイト流に言えば、「ホッキョクグマの雌(メス)は自分がお母さんから授乳を受け育ててもらったという意識下の記憶・原体験があるからこそ、いざ自分が出産した時には自分がお母さんからしてもらったことを自分の子供にするのである。 その意識下の記憶・原体験が欠けている人工哺育で育った雌は、出産はともかくとしても育児は行わないのだ。」 という解釈になります。 これは科学ではなく「解釈科学 (あるいは疑似科学)」 の領域の説明です。 この解釈は純粋な自然科学としては証明ができません。 単に解釈は解釈のままであるというにすぎません。 科学と「解釈科学 (あるいは疑似科学)」 をごっちゃにするのはいけないわけです。

by polarbearmaniac | 2013-01-08 18:00 | Polarbearology

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