街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・サンフランシスコ動物園での1982 ~ 83年のピケ (Piké) の人工哺育 ~ 実践から体系化へ

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人工哺育されたピケ Photo(C)Roger Ressmeyer

実践して成功したことをまとめ、それを知識として体系化しようという傾向は欧米のもろもろも分野でよく見られることです。 今回ご紹介したいのは1982 ~ 83年にアメリカのサンフランシスコ動物園で行われたホッキョクグマの人王哺育の例です。 この時に人工哺育された雌の赤ちゃんであるピケ (Piké) は順調に成育し、30歳になって現在でも元気にサンフランシスコ動物園で暮らしています。 このピケの昨年11月のお誕生会の様子は「アメリカ ・ サンフランシスコ動物園でホッキョクグマのお誕生会に10トンの雪のプレゼント」という投稿でご紹介しています。
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Image : San Francisco Zoo

さて、このピケですが1982年11月16日にサンフランシスコ動物園で生まれましたが母親が育児をしなかったためにサンフランシスコ動物園では人工哺育に切り替えられたわけで、その時このピケの人工哺育を担当したのがサンフランシスコ動物園の獣医をしていたゲイル・ヘドバーグさんでした。 この人工哺育の様子を簡単にまとめた貴重な映像がありますので下にご紹介しておきます。是非ご覧ください。



このゲイル・ヘドバーグさんはその後もホッキョクグマ以外の動物で多くの人工哺育をてがけました。 ホッキョクグマに関しては、このピケの人工哺育の経験を基礎にしてここ10年ほどはホッキョクグマの母乳の分析に関する研究を行っています。 2011年の秋~冬に誕生したカナダ・トロント動物園のハドソンやデンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園のシークーの人工哺育の際にはこのゲイル・ヘドバーグさんの母乳に関する研究結果に沿って赤ちゃんたちに与えるミルクの成分が考慮されたそうです。 タウリンを通常よりは多めにミルクに入れたというようなことも研究結果をふまえたて行われたのでしょう。
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このゲイル・ヘドバーグさんの研究結果は2011年9/10月号のZoo Biology 誌に掲載されたわけですが、それからわずか2か月後にはもうトロント動物園やスカンジナヴィア野生動物公園での人工哺育に利用されたわけで、こうした研究と飼育の実践の素早い結合こそ欧米のホッキョクグマの飼育の持つ強みだと言えましょう。 やはり日本の動物園の獣医さんや飼育担当者もこうした最新の研究結果を素早く飼育の実践に取り入れていくような環境を整備すべきでしょう。 このゲイル・ヘドバーグさんはその他、うつ症状のホッキョクグマをどう治療すべきかなどと言う点でも実践を通じて興味ある指摘を行っています。 それは “Smiling Bears” という本の中でも紹介されており、その内容の一部はネット上でも見ることができます。
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ピケ(Piké) Photo(C)Getty Images

人工哺育されたこのピケですが、30歳になった現在でも元気であり、人工哺育された個体は精神的な面で問題があり短命でもあるといった一般の認識はピケには全く当てはまらないようです。 ただしかしこの雌のピケも繁殖には成功しなかったようです。「人工哺育された雌は繁殖に成功しない。」という俗説だけは破ることができなかったということでしょうか。

(資料)
Gail Hedberg (Biography)
Wiley Online Library (Zoo Biography : September/October 2011 - Milk composition in free-ranging polar bears (Ursus maritimus) as a model for captive rearing milk formula)
Winnipeg Free Press (May.4 2009 - Readers will grin, bear Ontario scientist's memoir)
ZooBorns (Dec.3 2012 - Piké The Polar Bear Celebrates Her 30th Birthday at SF Zoo!)
HuffPost San Francisco (Nov.16 2012 - San Francisco Zoo Polar Bears Celebrate Their Birthday In Style)
sfist (Nov.15 2012 - Adorable Photos: SF Zoo's Polar Bears Frolic In Man-Made Snow)

(過去関連投稿)
アメリカ・サンフランシスコ動物園のアンディ逝く
アメリカ・サンフランシスコ動物園での「ホッキョクグマの雪の日」
アメリカ ・ サンフランシスコ動物園でホッキョクグマのお誕生会に10トンの雪のプレゼント
by polarbearmaniac | 2013-02-06 01:00 | Polarbearology

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