街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ その姿が突然公開

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Photo(C)Buffalo Zoo/The Buffalo News

まったく不意打ちのニュースです。 アメリカ・ニューヨーク州のバッファロー動物園で昨年11月27日にホッキョクグマの雌の赤ちゃんが誕生しました。 アナーナお母さんは育児を行うという母親の本能が発揮できなかったようで赤ちゃんを世話する様子が見られなかったために、獣医さんはこの赤ちゃんを人工哺育に切り替えることにしました。 とりあえずこの赤ちゃんの名前はルナと付けられましたが後日新しい名前が一般公募されるそうです。 アナーナお母さんは今年になってシカゴのブルックフィールド動物園に移動となったそうで、こういった状況をバッファロー動物園では一切公表せず、昨日になっていきなり赤ちゃんを公開しました。 生後94日目ということになるでしょうか。 誕生の事実を発表することなく、いきなり赤ちゃんの公開をもって発表とするのは欧米では非常に珍しいケースだろうと思います。 しかもアナーナお母さんはこの赤ちゃんを出産後、すでにシカゴに移動してしまってこのバッファロー動物園にはいないわけで、そういった状況も驚きです。 バッファロー動物園ではHPで "Our Bears Belong in Buffalo" というタイトルでこの赤ちゃんの誕生、そして公表を行っていますが、不意打ちとしても実に効果的なタイトルです。 こういう発想、表現は日本語にはありません。 ですからこの表現の意図を汲む的確な日本語訳を見出すことは非常に難しいです。 こういったことに限らず全てがそうですが、英語は英語のままで理解すべきであるということです。
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Photo(C)Buffalo Zoo

私は以前の「アメリカ・バッファロー動物園のナヌークがコロンバス動物園へ ~ 新ホッキョクグマ展示場の建設開始」という投稿でアナーナの年末の出産の可能性があることにも触れてはいましたが、正直なところかなり悲観的に考えていましたので、今回のこの赤ちゃんの誕生はとりわけ非常にうれしいニュースに感じられます。 下に地元TV局の赤ちゃん公開のニュース映像をご紹介しておきます。 冒頭にCMが入ります。





Baby polar bear to call Buffalo home

現在バッファロー動物園で新ホッキョクグマ飼育展示場を建設中ですが1800万ドルの総工費のうち1400万ドルしか調達できていないうちに見切り発車で建設が開始されており、残りの400万ドルの調達の具体的目途がたっていない状況だそうです (これまでの経緯は過去関連投稿をご参照下さい)。 バッファロー動物園では今回の赤ちゃん誕生のあと、そしてこのような不意打ちの公開をした理由の一つには、この赤ちゃんの存在を突然公開することによって地域の人々に対して新ホッキョクグマ展示場の建設資金の寄付を募るために効果的なやり方だと考えたとしても不思議ではありません。 AZAのホッキョクグマ飼育場の基準(これはマニトバ基準をほぼ踏襲したののですが)を満たさない場合にはこれから新しいホッキョクグマの飼育展示はできなくなるため、是非ともこの赤ちゃんをこの動物園で飼育し続けるためには新展示場の完成が不可欠であり、そのためにもどうしても未調達資金の分の寄付をお願いしたいということを訴える格好の手段が今回の赤ちゃんの突然の公開の理由の一つであったとも解釈できなくもありません。 しかしたとえそうだったとしても、その意図を別に悪くとる意味はないでしょう。 バッファロー動物園ではどうしても新施設を完成させて、そこでホッキョクグマを飼育し続けるのだというその強い想いも "Our Bears Belong in Buffalo" というHPでの表現に込められているということでしょう。 「この赤ちゃんはバッファロー動物園で生まれ、そしてバッファロー動物園で暮らすのだ」という気持ちがこの表現の中に凝縮しています。 複数形にしているのも効果的です。 バッファロー動物園はなんとか資金面での苦境に立ち向かっていこうとしています。



ともあれこの赤ちゃんのルナ、これからも何とか元気に育ってほしいと思います。

(*追記1) この今回の赤ちゃんのルナの母親であるアナーナ(現在はシカゴ・ブルックフィールド動物園で飼育)は札幌・円山動物園のデナリの異父の妹にあたります。 ですから今回の赤ちゃんのこのルナはデナリの姪ということになります。 この前の投稿でご紹介しているシカゴ・リンカーンパーク動物園のアナーナもデナリの姪にあたりますが、このアナーナの母親であるオーロラはデナリと父母共に同じ妹であるのに対し、今回のルナの母親であるアナーナはデナリと母親 (有名なシヌック)は同じですが父親が違うわけです。 こうしてシカゴの2つの動物園にはそれぞれアナーナという名前の2頭の雌のホッキョクグマがいるわけで、実に紛らわしいことになってきました。 それにしてもこうやっていろいろ調べていきますと、札幌のデナリはアメリカにおける巨大な血族グループに属するホッキョクグマであることがわかります。 デナリが繁殖能力に優れているのも、ちっとも不思議なことではないのです。

(*追記2) この赤ちゃんの母親であるアナーナについては幼年時代の育児写真集 ("Project Polar Bear") が出版されており私も持っています。 この記録写真集 (下の写真)については以前の投稿である「デナリ(札幌・円山動物園)の母シヌックの『育児記録写真集』  ~ “Project Polar Bear”」をご参照ください。
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(資料)
Buffalo Zoo (Mar.1 2013 - Our Bears Belong in Buffalo)
The Buffalo News (Mar.1 2013 - Polar bear cub introduced at zoo)
WKBW-TV (Mar.1 2013 - Buffalo Zoo Introduces New Polar Bear Cub)
WIVB (Mar.1 2013 - Baby polar bear to call Buffalo home)

(過去関連投稿)
動物園による情報公開 ~ アメリカ・バッファロー動物園でのホッキョクグマ連続死亡事件
繁殖のために住み慣れた動物園を旅立ったホッキョクグマ ~ ヘンリー・ヴィラス動物園のナヌークへの期待
アメリカ・バッファロー動物園のホッキョクグマ新展示施設建設へ篤志家の多額な資金寄付
アメリカ・バッファロー動物園のナヌークがコロンバス動物園へ ~ 新ホッキョクグマ展示場の建設開始
by polarbearmaniac | 2013-03-02 14:00 | Polarbearology

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