街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカの絶滅危惧種保護法 (Endangered Species Act) とホッキョクグマ ~ 連邦控訴裁判所の決定について

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ルルとピリカ (2012年1月25日撮影 於 旭山動物園)

アラスカ州は連邦政府の魚類野生動物保護局 (U.S. Fish and Wildlife Service) が2008年にホッキョクグマを絶滅危惧種保護法 (Endangered Species Act) の保護対象に指定したことを不服として連邦地方裁判所に訴えをおこしたわけですが第一審で敗訴したため連邦控訴裁判所 (United States Court of Appeals) に上訴していました。 その結果として先週の金曜日の3月1日に連邦控訴裁判所は第一審の地方裁判所の判断を支持する決定を下しました。 その決定文が連邦控訴裁判所のサイトで公開されていますので是非こちらをご覧ください。 この案件は連邦最高裁判所に裁量上訴の申立てができない種類の訴訟案件のはですので、これでホッキョクグマは絶滅危惧種保護法 (Endangered Species Act) による指定からはずされることがなくなったと考えてよいと思います。

実はアメリカにおいてホッキョクグマを絶滅危惧種保護法で保護する対象に加えられたのは2008年で、そのときは共和党のブッシュ政権だったわけです。 実はこれが画期的だったのは地球温暖化による気候の変化がもたらすであろうホッキョクグマの危機という、将来を見据えての指定であったわけで、今まで絶滅危惧種保護法にこのような形で指定された種はなかったわけです。 つい先日、「ワシントン条約(CITES)第16回締結国会議とホッキョクグマの保護について ~ 賛成できぬWWFの主張」という投稿をいたし、ホッキョクグマが地球温暖化で生存圏を奪われるという将来のほぼ確実におこるであろう可能性に力点を置いてホッキョクグマをワシントン条約の附属書Ⅱから附属書Ⅰへ移行して全面的に商取引を禁止させようというアメリカの提案について触れましたが、その背景にはアメリカ国内において魚類野生動物保護局が「将来の危惧の可能性」をあげてホッキョクグマを絶滅危惧種保護法に該当する種として指定したという事実があるからです。 しかも資源開発には積極的な共和党の政権時代にその指定が成されたという点でも画期的だったと言えましょう。 この絶滅危惧種保護法 (Endangered Species Act) の成立した経緯、そしてこの法律の目的について魚類野生動物保護局が制作した紹介映像がありますのでご紹介しておきます。



アラスカ州選出の上院議員は「これから50年間に及ぶ将来の状況を裁判所は現時点での憶測だけで判断している。」と今回の連邦控訴裁判所の決定に不満を述べています。 アラスカ州にとってはアラスカにおける資源開発を推進したい立場にあるのは当然であり、絶滅危惧種保護法に指定されたホッキョクグマの存在は開発の足かせになると考えているからです。

ではホッキョクグマをこの絶滅危惧種保護法に該当する種に指定すると、どういうことになるのかということはこの法律の Section 9 にPROHIBITED ACTS という規定て述べられていることができなくなることを意味します。 いったいどういうことができなくなるかについて魚類野生動物保護局は文字と音声で解説していますので是非こちらのページを開いていただいて説明を聞いていただきたいと思います。 アメリカという国は全くすごいですね。 このような音声による法律の解説までネットでやっているのには感心します。

それから以下は2008年の1月にホッキョクグマを絶滅危惧種保護法に指定する件についてアメリカ下院の特別委員会で「気候変動とホッキョクグマ」という議題で公聴会が行われた際の映像ですが、これは実におもしろいです。 魚類野生動物保護局の局長さんやあの著名なホッキョクグマ研究者のスティーヴン・アムストラップ氏も参考人として出席・発言しています。 ホッキョクグマがおかれている現在の問題についてのほとんどがこの公聴会の模様を見るとわかります。 必見の映像だと思います。



我々の社会システムのなかでホッキョクグマをどうやって守っていくかについて、これからも時々投稿したいと思っています。 ホッキョクグマの赤ちゃんのことばかり投稿するのがこのブログの目的ではありません。 ホッキョクグマを守りたいという純白で素朴な感情だけではホッキョクグマを守ることは到底できません。 この問題は、たとえ泥まみれであろうとも「大人の世界」のシステムで解決せねばならないわけです。

(資料)
Endangered Species Act (絶滅危惧種保護法)
U.S. Fish and Wildlife Service (Endangered Species Program)
United States Court of Appeals (Mar.1 2013 - IN RE: POLAR BEAR ENDANGERED SPECIES ACT LISTING AND SECTION 4(d) RULE LITIGATION –MDL NO. 1993)
Alaska Dispatch (Mar.2 2013 - Appeals court ruling determines polar bears will retain 'threatened' listing)
Los Angeles Times (Mar.1 2013 - Federal court upholds polar bear status as threatened species)
RedOrbit (Mar.3 2013 - Appeals Court Upholds Polar Bear’s Endangered Species Act Protections)
Wall Street Journal (Mar.1 2013 - Cold Comfort: Polar Bears Win in Court)
Scientific American (May.14 2008 - U.S. Protects Polar Bears Under Endangered Species Act)

(過去関連投稿)
ワシントン条約(CITES)第16回締結国会議とホッキョクグマの保護について ~ 賛成できぬWWFの見解
by polarbearmaniac | 2013-03-04 01:30 | Polarbearology

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