街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・アラスカ動物園で保護された野生孤児のカリーが今春に期限付きでバッファロー動物園へ

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アラスカ動物園で保護された野生孤児のカリー
Photo(C)Loren Holmes / Alaska Dispatch

今月12日にアメリカ・アラスカ州の北西部の海岸のポイント・レイで狩猟者によってお母さんが射殺されてしまったために保護されアンカレッジのアラスカ動物園に送られた雄の赤ちゃんのカリー(Kali) については先日の投稿でご紹介しています。 このカリーですが、アラスカ動物園で健康を回復し、先週の金曜日に元気に戸外に登場したシーンがマスコミに公開されていますのでご紹介しておきます。 2番目の映像はTVのニュース番組です(最初はCMです)。



この赤ちゃんのカリーですが、アメリカの魚類野生動物保護局 (U.S. Fish and Wildlife Service) の発表したところによりますと、この春に今後のカリーの暫定的な飼育先としてニューヨーク州のバッファロー動物園に移動される予定だとのことです。 このバッファロー動物園には昨年11月27日に札幌・円山動物園のデナリの妹であるアナーナから生まれ、その後に人工哺育で育てられ、世界的にも大きく報道されて人気のある赤ちゃんである雌のルナが飼育されているわけで、魚類野生動物保護局はこのルナの遊び友達としてカリーをバッファロー動物園に移動させることを明らかにしました。 カリーと、そして人工哺育で育てられているルナを一緒にすることによって2頭の成長期に良い影響を与えることを目的として考えられた移動だそうです。
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カリー Photo(C)AP

AZA (アメリカ動物園・水族館協会) のホッキョクグマの SSP (Species Survival Plan - 種維持計画) を主導しているランディ・メイヤーソン氏が今回予定されている移動計画案を作成したようです。 これは人工哺育で育てられているルナにとっても 「適応化 (Socialization)」 を実現できる良い機会になるということも大きな要素として考えられたのだろうと思われます。 この人工哺育されたホッキョクグマの「適応化 (Socialization)」 については以前にフロッケの事例をご紹介した際に触れていますのでここでは繰り返しません。 人工哺育されたホッキョクグマが、種としてのホッキョクグマとして「目覚める」、あるいは「成長する」ために必要なことであるわけで、こてはアメリカにおけるホッキョクグマの人工哺育論の根幹を支える一つの重要な要素であるわけです。 アメリカにおけるホッキョクグマの SSP において主導的役割を果たしているこのランディ・メイヤーソン氏が飼育下におけるホッキョクグマについて語っている映像がありますので、こちらのページを開いていただいて映像をご参照下さい。
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バッファロー動物園のルナ Photo(C)Buffalo Zoo

さて、一方で魚類野生動物保護局はカリーのバッファロー動物園での飼育は比較的短い期間を考えており、カリーの最終的な飼育場所としては2015年にホッキョクグマ飼育展示場が完成するミズーリ州のセントルイス動物園となるだろうということも明らかにしています。 このセントルイス動物園というのは以前の投稿である「アメリカで登場したホッキョクグマ輸入の特別枠要求への動き」をご参照いただきたいのですが、2007年以来ホッキョクグマを飼育していない動物園です。 にもかかわらず2千万ドルという巨額の費用を投じてホッキョクグマの飼育展示場を現在建設中であるわけで、その新施設で飼育するホッキョクグマをどうしても確保したいと必死に運動しているわけです。 そうした結果として、魚類野生動物保護局が今回アラスカで保護されたカリーの最終的な飼育場所としてセントルイス動物園を考えていることは当然と思われます。 つまり、2015年の早い時期にはカリーはバッファロー動物園からセントルイス動物園に移ることとなるわけです。 さて、そうなるとバッファロー動物園の立場は微妙です。 ルナという雌の赤ちゃんのパートナーとしては同じ年齢であるカリーをバッファロー動物園で飼育し続けていきたいと考えることは当然です。 現在バッファロー動物園では新施設建設の資金不足に悩まされており、今回のルナの誕生とその可愛らしい姿を公開することによって募金獲得に弾みがかかっているわけですが、ここでカリーをルナの将来的なパートナーとして確保できれば理想的であることは言うまでもありません。 今後このバッファロー動物園とセントルイス動物園との間で確執が生じる危険性が無いとは言えないような気がします。今後のカリーの動向に注目する必要があると思われます。
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カリー Photo(C)Alaska Zoo

(資料)
U.S. Fish and Wildlife Service (Mar.22 2013 - Orphaned Alaskan-born Polar Bear Cub to Join Buffalo Zoo Cub)
Daily Mail (Mar.24 2013 - Orphaned polar bear cub ventures out to play in the snow at his new home just days after his mother was shot dead in the wild )
KTVA CBS 11 News Alaska (Mar.23 2013 - Polar Bear Cub Headed to Buffalo, NY Zoo)
CBS News (Mar.23 2013 - St. Louis Zoo May Get Orphaned Polar Bear)
LiveScience.com (Mar.25 2013 - Orphaned Polar Bear Cub to Get New York Home)
Alaska Dispatch (Mar.22 2013 - Meet Kali, the furry white polar bear playing at Alaska Zoo)
WYCTL Media (Interview with Dr. Randi Meyerson)

(過去関連投稿)
アメリカ・アラスカ州の北西岸でホッキョクグマの孤児の赤ちゃんが保護!
アメリカ・ニューヨーク州、バッファロー動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ その姿が突然公開
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃんの追加映像 ~ ララの子供たちの従妹であるルナ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の人工哺育の赤ちゃんのルナが初めて戸外へ
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナの近況を伝えるTVニュース映像
アメリカ・ニューヨーク州 バッファロー動物園の赤ちゃん、ルナが雪の舞う戸外へ
アメリカで登場したホッキョクグマ輸入の特別枠要求への動き
by polarbearmaniac | 2013-03-26 22:30 | Polarbearology

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