街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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札幌 ・ 円山動物園のキャンディへの期待と声援 ~ 彼女のドイツでの幼少期と今は亡き両親の姿

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幼少期のキャンディ、そして当時14歳のニーナお母さん
(1993年、ドイツ ・ ヴッパータール動物園)
Photo (C) WZ Newsline Wuppertal / Andreas Fischer

先日のララの新ツインズのお披露目の際にはララ親子の写真しかアップしませんでしたが、決してキャンディのことを忘れたわけではありません。 彼女が昨年暮れも押し詰まった12月30日に双子を出産したもののいずれも亡くなってしまった件、そして彼女のこれからの出産の展望については先日の「再び繁殖に挑む札幌・円山動物園のキャンディ ~ 過度の楽観は禁物の彼女の再度の挑戦」という投稿で私の感じたことを述べています。 願望はともかくとして、次回の今年の年末にキャンディが出産(そしてその後の育児)に成功するかどうかについては彼女の年齢的なハンディキャップがさらに前回よりも幾分大きくなっていることからも、やはり前回同様、非常に厳しい状況を覚悟しておかねばならないと思われます。 そうは言うものの、これはもうどうしても成功してもらわねばなりません。
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キャンディ (2013年3月24日撮影 於 札幌・円山動物園)

円山動物園の飼育員さんは公式ブログの中で、ホッキョクグマの繁殖に関してはララの繁殖方法や環境を基準にしていたが「ホッキョクグマの繁殖」というくくりではなく、「ララの繁殖」「キャンディの繁殖」といった個体に合わせた環境を造り上げていかなければならないと実感したと述べていらっしゃいます。 これはまさしくその通りでしょう。 私も海外でいろいろなお母さんたちの育児 (子供たちへの接し方) を見て、ホッキョクグマのお母さんたちはそれぞれ全部違うやり方をすることに驚きました。 ですので、出産の準備も含め、産室での出産の瞬間からその後の育児についても、それぞれのお母さんたちは基本的なことは同じでも、その他は全て異なる行動をしていることに間違いありません。 ですので、次回についてはララの出産のことは念頭におきつつも。それにとらわれない柔軟なアプローチでキャンディの次の出産に備えていただきたいと思います。
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キャンディ (2013年3月23日撮影 於 札幌・円山動物園)

さて、このキャンディですが、彼女は釧路のユキオ、鹿児島のホクト、豊橋のチャッピーやクッキーなどと並んでドイツ出身のホッキョクグマです。 彼女が生まれたのはヴッパータール動物園、すなわちあのクヌートの腹違いの妹であるアノーリの生まれた動物園です。 1992年11月2日生まれということですから彼女は現在20歳になっています。 冒頭の写真はこのキャンディが誕生後、おそらく3か月ほどした一般公開時に撮影されたと思われる写真で、後ろに写っているのは当時14歳のニーナお母さんです。 このキャンディは一般公開された時から丸々とした大きな赤ちゃんだったそうです。
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ニーナお母さん Photo(C) Norbert Sdunzik/zoo-wuppertal.net

このキャンディの誕生後、約1年半しっかりと彼女の育児を行ったニーナお母さんですが、彼女はモスクワ動物園の生まれで、私も持っているモスクワ動物園の資料では、ズヴョーズドチカ (Звёздочка) というお母さんから1978年11月8日に雌(メス)の双子の1頭として生まれています。 翌年の1978年の3月25日に産室から戸外に出したというのが同園の記録です。 このモスクワ動物園のズヴョーズドチカ (つまりキャンディの祖母)ですが、ロシア極北のウランゲリ島で1957年(推定)に生まれた野生孤児の個体で、1959年からモスクワ動物園で飼育されていた事実が同園の記録に見出せます。 このズヴョーズドチカ、そしてスネグルカという2頭の雌のホッキョクグマが1960年代から80年代までモスクワ動物園でのホッキョクグマの繁殖を支えた屋台骨で、往年の偉大なる母だったというわけです。 ですからキャンディには 「ロシアの野性の血」 も流れているということになります。 ただし同じロシアの野生の血でも、豪太、ゴーゴ、ホクト、カイ、ロッシーに流れているのは「バレンツ海の血」であり、キャンディの「ウランゲリ島の血」とは異なるわけです。

それからこの下がキャンディの父親のボリスです。
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父親ボリス Photo (C) WZ Newsline Wuppertal / Andreas Fischer

このボリスは1978年にイギリスのホィップスネイド動物園で生まれており、1980年からウッパータール動物園で飼育されていたようです。 ですから、キャンディが生まれたときは14歳だったということになります。 ニーナとボリス、すなわちキャンディの両親が1982年に一緒に写っている写真がこの下です。
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ニーナとボリス (キャンディの両親 - 1982年) 
Photo(C) Norbert Sdunzik/zoo-wuppertal.net

この上の写真ははニーナとボリスがまだ3~4歳だったときの貴重な写真ということになります。 左側にいるのがキャンディの母であるニーナお母さんの若き日の姿ということです。 このキャンディの母親のニーナお母さんですが、残念なことに2000年に22歳で亡くなっています。 その生涯で3頭の子供を産み育てています。 最初は1986年に雄のトロール (現 ベルリン動物公園)、1992年にこのキャンディ、そして1996年に雌のセーニャ (現 ピッツバーグ動物園)を産んでいます。 また、父親のボリスのほうは2009年の9月9日に31歳で亡くなったわけでした。 眠りながらの大往生だったそうです。 このボリスが亡くなる1か月半前の写真をご紹介しておきます。
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最晩年31歳、死の直前の時期のキャンディの父親ボリス (2009年7月)
Photo(C) Norbert Sdunzik/zoo-wuppertal.net 

ともかくこういった家族背景のあるキャンディは、はるばる遠い日本に来てくれたわけですから、どうしても彼女が繁殖に成功してほしいと願わずにはいられません。 心の中で精一杯の声援を送りたいと思います。 最後に、この下の映像は3月25日の映像で、タイヤで遊ぶキャンディの姿です。

タイヤで遊ぶキャンディ (2013年3月25日)

動物園に行ってホッキョクグマを見る場合でも、こうして彼らの両親の顔や、家族のことを知っていると、また一段とおもしろくなってくるものです。

(資料)
WZ Newsline Wuppertal (Jan.17 2012 - Wuppertals Eisbären - eine Erfolgsgeschichte in Weiß)
WZ Newsline Wuppertal (Jan.18 2012 - Knuts Papa wieder Vater)
Zoo Wuppertal.net (Historische Bilder von Eisbären im Wuppertaler Zoo) (Eisbär Boris) (1980er Jahre)
RP online (Feb.25 2008 - Alters-Stars im Zoo)
Stadt Wuppertal (Hier steppt der Eisbär. Die Eisbärenanlage im Wuppertaler Zoo)
WZ Newsline Wuppertal (Apr.5 2007 - Zoo: Unser süßer Knut heißt Troll)
Das Forum (Eisbär Boris gestorben)

(過去関連投稿)
秋の日曜日のホッキョクグマたち ~ 「来たるべき日」についてどう予想するか
正念場のキャンディが 「晴れ舞台」 に立つ日は来るか?
札幌・円山動物園で再びホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生するも2頭とも死亡!
再び繁殖に挑む札幌・円山動物園のキャンディ ~ 過度の楽観は禁物の彼女の再度の挑戦
by polarbearmaniac | 2013-03-27 23:45 | Polarbearology

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