街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ホッキョクグマの母娘の再会で何か起きるのか? ~ セシ、ヴィルマ、ピリカに冷水を浴びせた母親たち

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フリーダムお母さん Photo(C)explore.org
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娘のセシ  Photo(C)explore.org

昨年の10月下旬にオランダ・ロッテルダム動物園のヴィックス(当時1歳10か月)がスウェーデンのオルサ・ベアパークに移動したものの、最終的な飼育地となるはずだったフランスのミュルーズ動物園の新施設建設計画の遅れによってスウェーデンから生まれ故郷のオランダのロッテルダム動物園に戻ることになった件は先日投稿しています。 このヴィックスはすでにロッテルダム動物園に戻っています。 さて、昨年このヴィックスと将来のペアとなることを期待されてやはりスウェーデンのオルサ・ベアパークに移動したオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園の雌のセシ(当時1歳11か月)ですが、やはりこのたびスウェーデンから彼女の生まれ故郷であるオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園に戻ってきたようです。

さて、この雌のセシですが早速アウヴェハンス動物園の飼育展示場に再び姿を現したわけですが、母親のフリーダム、そしてさらにそのフリーダムの母親であり、欧州屈指の偉大なる母であるフギース とその彼女の双子の子供である雄のルカ、雌のリン(共に1歳5か月)とともに5頭が同じ場所を共有するというなんとも豪華な展示方法が今回もアウヴェハンス動物園で採られたわけです。 さて問題は、セシが5か月間このアウヴェハンス動物園に不在であったことが、果たしてこのセシと彼女の母親であるフリーダムとの関係にどのような変化をもたらすかということです。 フリーダムとセシの母娘の関係は、セシがスウェーデンに旅立つまでは一心同体と言えるほど密接で大変に良好だったそうですが、それは母娘の関係としてはある意味では当然だったと言えましょう。 しかしこの5 か月間のセシの不在は、この母娘の関係に大きな距離をもたらせてしまったようです。 以下の映像は欧州のファンの方がアウヴェハンス動物園に復帰した直後のセシと、そしてフリーダムお母さん、フギース、ルカ、リンの5頭が一緒に暮らすシーンを撮ったものですが、実に興味深い映像なのでご覧いただきたいと思います。



まず最初に映っているのがセシですね。この映像はセシを中心に展開しています。 2分20秒あたりから登場しているのはフギースです。 すでに申し上げましたように彼女は現在欧州を代表する偉大なる母であるわけです。 体の毛がごわごわとしているのがフギースお母さんの特徴です。 このフギースのそばにいるのが彼女の双子の子供であるルカとリンですね。 そして3分35秒あたりからが問題のフリーダムお母さんと娘のセシのシーンです。 何か非常に冷ややかな関係に見えます。 そういった様子をフギースお母さんが見つめています。 そして4分42秒あたりからが陸に上がったフリーダムお母さんとセシの様子です。 フリーダムお母さんが娘のセシを威嚇しています。それからというものはセシがすっかり孤立してしまった印象を受けます。 フリーダムお母さんがセシには全く友好的ではありませんし、追いかけてさらに威嚇しています。 8分11秒あたりからのシーンもそうです。セシから見れば祖母にあたるフギースのほうは比較的セシには寛容な様子ですが、フリーダムお母さんはセシが再び現れたことに機嫌を損ねている様子がよくわかります。
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ロストック動物園でのヴィエナお母さんと幼少のヴィルマ (2003年) 
Photo(C)Zoo Rostock
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ロストック動物園のヴィエナお母さん Photo:js112
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ロストック動物園に戻った娘のヴィルマ Photo:js112

次にもう一つ、ドイツ・ロストック動物園での「母娘再会同居」の例を挙げておきますが、これは以前に「ドイツ・ロストック動物園の『母娘再会同居』 ~ ララ/ピリカが最初ではなかった『親子再会同居』」という投稿をしていますので、娘のヴィルマが生まれ故郷のロストック動物園のヴィエナお母さんのもとに戻ってきた経緯と詳細については是非それをご参照下さい。 その投稿の際にもご紹介した映像を再び見ていただきましょう。 ロストック動物園でにこの映像の開始後40秒あたりからのシーンですが、ヴィエナお母さんと娘のヴィルマ(彼女は現在はドイツのヴッパータール動物園で飼育されており、あの有名なアノーリの母となっています)の関係は、もう母娘の親密な関係ではないということです。



こういったシーンを見ると、おびひろ動物園から円山動物園にピリカ (現 旭山動物園)が戻ってきて3年振りだったかで母親のララと短期間同居した時のことを思い出しました。 この円山動物園の公式映像ではあまりよくわかりませんが、あの時のララお母さんの機嫌の悪さといったら相当のものでした。 現在あの新ツインズを育児しているララお母さんとは同じホッキョクグマとは思えないほどの不機嫌さと恐ろしさでした。 ララお母さんは自分の眼の前にいるホッキョクグマは自分がかつて育てた娘のピリカであることをはっきりと認識していたのです。 そもそもピリカがおびひろ動物園から2010年2月22日に円山動物園に到着し、ララの暮らすスペースのそばに搬入されたときのことですが、ララお母さんは娘ピリカの匂いを明確に記憶しており、そしてその声と共に娘が近くに戻ってきたことを認識しているのです。 以下のシーンはそのときのララお母さんの様子を撮影された地元の方の映像です。 大変恐縮には存じますが、ここでそれをお借りすることにします。



しかし、いざピリカとの同居が始まったあとのララお母さんは非常に不機嫌でピリカが自分に近づくことを決して許さなかったのです。 あまり広くないあの飼育展示場においてすら、娘のピリカが存在していることを嫌ったのです。 ピリカが自分の娘であることをララお母さん自身が忘れているためにあれほどピリカに対して機嫌が悪かったのではなく、ピリカが自分の娘であることを覚えているからこそ機嫌が悪いわけです。 一方、旭川のルル叔母さんはピリカは自分の娘ではないからこそ、ララとは逆にピリカの存在に対して寛容になることができるのです。
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ピリカ(左)とララお母さん(右) 
(2010年6月20日撮影 於 札幌・円山動物園)
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ララお母さん (2012年4月14日撮影 於 札幌・円山動物園)
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娘のピリカ (2012年1月25日撮影 於 旭山動物園)

要するに母親は、少なくとも自分の娘が自分を離れて旅立ち、ある一定の期間経過して仮に再会したとしてもかつての母娘の関係が復活するどころか、むしろ娘を極力排除しようとする態度に出るということがよくわかります。 別の言い方をすれば、同じ雌としてのライバル関係というか、対抗心をあらわにするということです。 仮にララお母さんとアイラを再会させ同居させてみたと仮定すると、あれだけアイラと一緒に遊び、そしてアイラが旅立った日にあれほど寂寥感を感じていたララお母さんであったとしても、再会したアイラに対してかつてでは考えられなかった厳しい態度をとるでしょう。

これこそが、厳しい自然の中で生きる孤高の存在であるホッキョクグマ、その母娘の世界ということなのでしょう。

(過去関連投稿)
オランダからスウェーデンへ ~ ヴィックスとセシの新ペアとしての旅立ちの日ついに来る
オランダ・ロッテルダム動物園のヴィックスの同園での最後の一日 ~ 最終移動先はウィーンか?
スウェーデンのオルサ・グレンクリットのベアパークに到着後のヴィックスとセシ
フランス・アルザス地方のミュルーズ動物園の新施設建設計画 ~ 2頭のホッキョクグマの移動について
スウェーデン、オルサ・グレンクリットのベアパークのヴィックスが再び生まれ故郷のロッテルダム動物園へ
*以下はセシ関連 (含 2011年アウヴェハンス動物園訪問記)
オランダ・レネンのアウヴェハンス動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生!
オランダ・レネン、アウヴェハンス動物園の産室内映像まとめ
オランダ・レネンのアウヴェハンス動物園の双子の赤ちゃん、元気に生後10週間目へ
オランダ・レネン、アウヴェハンス動物園の双子の赤ちゃん、遂に戸外に姿を現す!
遂にレネン、アウヴェハンス動物園に到着!
シークーとセシ、その伸びやかさと無邪気さの大きな魅力
フリーダムを称える
オランダ・レネン、アウヴェハンス動物園の双子の最近の映像
オランダ・レネンのアウヴェハンス動物園の双子、1歳になったシークーとセシの近況
フリーダムお母さんと1歳になったシークーとセシの双子
オランダ・レネン、アウヴェハンス動物園のフギースお母さんの双子の名前が、 「ルカ」 と 「リン」 と判明
*以下はロストック動物園関連
ドイツ・ロストック動物園の「母娘再会同居」 ~ ララ/ピリカが最初ではなかった「親子再会同居」
*以下はララとピリカ同居関連
母娘再会・同居(ララ&ピリカ) 速報画像メモ(1)
母娘再会・同居(ララ&ピリカ) 速報画像メモ(2)
母娘再会・同居(ララ&ピリカ) 速報画像メモ(3)
母娘再会・同居(ララ&ピリカ) 速報画像メモ(4)
母娘再会・同居(ララ&ピリカ) 速報画像メモ(5)
母娘再会・同居(ララ&ピリカ) 速報画像メモ(終)
ララ&ピリカの同居初日の印象~ピリカの優勢勝ち!
同居開始2日目のララ&ピリカ(1)
同居開始2日目のララ&ピリカ(2)
同居開始2日目のララ&ピリカ(3)
同居開始2日目のララ&ピリカ(終)
ララ&ピリカの同居2日目の印象~彼女達なりの同居の姿
ララ&ピリカの同居7日目~情景メモ(1)
ララ&ピリカの同居7日目~情景メモ(2)
ララ&ピリカの同居8日目~情景メモ(1)
ララ&ピリカの同居8日目~情景メモ(2)
ララ&ピリカの同居8日目~情景メモ(終)
ララ&ピリカの同居14日目~情景メモ(1)
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ララ&ピリカの同居15日目~情景メモ(1)
ララ&ピリカの同居15日目~情景メモ(2)
ララ&ピリカの同居15日目~情景メモ(終)
by polarbearmaniac | 2013-05-10 23:45 | Polarbearology

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