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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーの 「適応化 (Socialization)」 が順調に進行中

デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーの 「適応化 (Socialization)」 が順調に進行中_a0151913_243465.jpg
シークー(右)とスミラ(左)
Photo(C)Hilmer & Koch Naturephotography

デンマークのスカンジナヴィア野生動物公園 (Skandinavisk Dyrepark) には昨年11月に誕生した双子の赤ちゃんがいるわけですが、一昨年にも同じイルカお母さんから生まれて人工哺育で育てられた一歳半になる人気者のシークーが飼育されています。 このシークーに対してスカンジナヴィア野生動物公園は現在、雌で22歳のスミラと同居させてシークーへの「適応化 (Socialization)」 の試みを始めた件については先月の投稿である「デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で進行中の2つのドラマ ~ イルカ親子、そしてシークー」ですでにご紹介しています。
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーの 「適応化 (Socialization)」 が順調に進行中_a0151913_244433.jpg
シークー(右)とスミラ(左)
Photo(C)Hilmer & Koch Naturephotography

人工哺育で育てられたホッキョクグマは人間に対して慣れすぎてしまい、そういったことによってホッキョクグマの種としての特質を失ってしまう危険性が強いわけです。 それを防ぐためにある程度の時期になると他のホッキョクグマと同居させてホッキョクグマの本能を甦らせるということを行うわけです。 これを “Socialization” というわけですが、そのまま日本語にしますと 「社会化」 というわけですが、これは私に言わせると非常に問題のある訳語です。 明治時代に英語の ”society” という語に「社会」 という訳語を当てたのは我々の先人ですが、日本語において「社会」という訳語はその後に主に、 ”human society” (人間社会)のみを指すことになってしまったわけです。 つまり日本においては、”society = human society” という理解になってしまったわけです。 実は英語の ”society” という語は「共通要素・特質を持つ集団の関わり」 という理解をすべきで、それは何も人間だけに限らずホッキョクグマにも当然当てはまるわけです。 そうすると人工哺育などで育てられたホッキョクグマが、ホッキョクグマの種としての特質を失わないように他のホッキョクグマの個体と同居させたりすることを ”Socialization” と呼ぶならば、それは「ホッキョクグマの種としての要素・特質」へ適応させることを意味しますから、この場合の ”Socialization” は 「社会化」ではなく「適応化」 という訳語を与えるのが正しいというのが私の考えです。 「社会化」と言ってしまうと何か別の意味を連想するように思われます。
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園でのシークーの 「適応化 (Socialization)」 が順調に進行中_a0151913_2542641.jpg
シークー(手前) Photo(C)Hilmer & Koch Naturephotography 

さて、このシークーの「適応化 (Socialization)」 の相手になっているのは雌のスミラ(Smilla)です。 実は彼女の本来の名前で「レディ」です。 彼女はハンガリーのブダペスト動物園で繁殖を長年期待されながら成功せず、ブダペストで不妊検査を受けた件については、「ハンガリー・ブダペスト動物園のレディとヴィタスの不妊検査 ~ ドナウ河岸の憂鬱」 をご参照下さい。 その結果彼女はブダペスト動物園からこのスカンジナヴィア野生動物公園に移動し、その後は「スミラ」という名で呼ばれるようになったわけです。 このシークーとスミラの同居は最近なかなか良い状態になってきているそうで、スカンジナヴィア野生動物公園でもホッとしているようです。 前回もご紹介していますが4月初旬の最初の同居についてデンマークのTV局の取材番組見ていただきたいと思います。(*注 - 時間帯によってはスムーズに再生できない場合もあります。) 登場しているラルセン園長さんはいつも大きな声でホッキョクグマを名前で呼んでいますが、これが実にいいですね。 この方は今迄色々な形でマスコミの取材などにも対応されていますが、発言を聞いても非常に見識のある方だということがよくわかります。 最初は自宅でシークーの人工哺育を行ったわけですが、それに拘泥することなど全くなく、比較的早めにシークーを動物園に戻して他のホッキョクグマの姿も見える可能性のある展示場に出しました。 次にフェンス越しに他のホッキョクグマと視覚だけによって引き合わせたりもしました。 次にこうやってシークーの「適応化」のプログラムを作り、そして今まで姿だけが見えていたスミラをタイミングを見計らってシークーの展示場に入れてシークーの同居生活を無理のない形で実現させたわけです。 非常に腰の据わったやり方だと思います。




さらに4月下旬の映像です。 外にいる方がシークーでしょうね。 画面に若干の揺れがあります。



そして今月初めの映像です。体の白いほうがシークーです。 シークーがスミラの興味を引こうと、ぴょんぴょんと飛びあがるのがおもしろいです。



こうして幾分の距離はあったわけですが最近はこの距離が急速に接近しているそうです。 冒頭の2枚の写真はそれを物語っているようです。 スカンジナヴィア野生動物公園のシークーの飼育されている展示場にはライブカメラがありますので、こういった同居の模様を見ることができます。 こちらをクリックしてみて下さい。 現在の季節はサマータイムで、日本時間マイナス7時間が現地時間となります。 本当に便利になりました。

さて、この人工哺育されたホッキョクグマの 「適応化 (Socialization)」 ですが、次にはあのルナ、そしてアラスカ動物園から移動してきたカリーを抱えているアメリカのバッファロー動物園のお手並みを早く見てみたいと思います。 ホッキョクグマの人工哺育というのは、その方法論はすでに完全に確立されていますからそれほど難しいものではないわけです。 問題は次のフェーズである 「適応化 (Socialization)」にどうやってうまく移行させていくかにあるわけです。 ここで動物園としての本当の力量が試されるわけです。 ラルセン園長さん率いるスカンジナヴィア野生動物公園、人工哺育にも「適応化」にも並々ならぬ力量とみました。 ホッキョクグマの人工哺育論においては最先端を行くアメリカ、しかしその人工哺育の次のフェーズである「適応化」 についてバッファロー動物園は果たしてどうでしょうか?

(資料)
Polar Bears International (News Room / May.15 2013 – Suku and Smilla)
TV 2 | ØSTJYLLAND (Apr.9 2013 - Siku fik sig en ny ven...)

(過去関連投稿)
ハンガリー・ブダペスト動物園のレディとヴィタスの不妊検査 ~ ドナウ河岸の憂鬱
トスカーナの丘からドナウの真珠へ ~ 繁殖への希望をのせてビンバがブダペストへ
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デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園の赤ちゃん、シークーのライブ映像ハイライト (2)
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デンマーク、スカンジナヴィア野生動物公園、シークーのライブ映像ハイライト (10) ~ 満一歳となる
デンマーク・スカンジナヴィア野生動物公園で進行中の2つのドラマ ~ イルカ親子、そしてシークー
by polarbearmaniac | 2013-05-19 07:00 | Polarbearology

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