街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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チェコ・ブルノ動物園の双子の赤ちゃんのナヌクが右前脚を負傷 ~ ブルノ動物園の抱く思惑への憶測

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ナヌク Photo(C)Zoo Brno

チェコ・ブルノ動物園で昨年の11月24日にコーラお母さんから生まれた雌と雄の双子の赤ちゃんのコメタとナヌクですが、先日ナヌクが消化不良で一時体調を崩したものの回復した件についてはすでに投稿しています。 さて、この雄のナヌクですが一昨日から今度は右前脚の具合が少々よくないようで、どうも遊びの最中に何らかのケガをしたような形跡があるようです。 ブルノ動物園では獣医さんに来てもらって、果たしてコーラお母さんから引き離してナヌクの検査をしたほうがよいかを話し合ったそうです。 コーラお母さんと一時的ではあれ引き離すことはナヌクにとってストレスが大きいとの判断で、とりあえずケガとはいってもひどいものではなさそうなので様子を見ようということになったようです。 昨日(木曜日)の状態ですが、好転の兆しは見えないものの食欲はあり、一応は動き回っているようなので、今後は獣医さんの注意深い監視を行うことになったそうです。ファンの心配は相当なもののようです。 それにしてもこの雄の赤ちゃんのナヌクというのは、ああだこうだといろいろ周囲を心配させる赤ちゃんです。 私に言わせれば、今回のナヌクの右前脚のケガはそれほど心配するようなものではないように思います。 少し騒ぎ過ぎでしょう。

この下の映像は雌の赤ちゃんのコメタが水遊びをしている5月10日頃の映像ですが、泳ぎも上達しそして潜ることもしています。



この下も同じ頃の映像ですが、こちらは泳いでいりのはナヌクに見えます。



それから少々興味深い内容の報道もあります。 それは、ブルノ動物園はこの双子の赤ちゃん、特に雄のナヌクの将来の繁殖について早々とここのところ、EAZA (European Association of Zoos and Aquaria - 欧州動物園水族館協会) ではなく EARAZA (Евроазиатская региональная ассоциация зоопарков и аквариумов / Еuro-Аsian Regional Аssociation of Zoos and Аquariums - ユーラシア地域動物園水族館協会) と話し合っているそうです。 これはブルノ動物園にとっては一見、実に奇妙な選択のようにも見えます。 EARAZA というのはEAZA のユーラシア版 (旧ソ連、東欧、バルト諸国、中央アジア諸国) の組織のようなもので、そういった旧ソ連影響地域国の動物園が加盟しているEAZA 類似の組織であり、EAZAに対抗するように1994年に創立された時点から現在に至るまでモスクワ動物園がこれを牛耳っているわけです。  ですから、EARAZA加盟の動物園の背後にいるのはモスクワ動物園というわけです。
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前回のコーラお母さんが産んだ双子の兄弟であるトムとビルの他園への移動にはEAZA のコーディネーターが関わっていたはずで、トムはプラハ動物園に、そしてビルはドイツのゲルゼンキルヘンの動物園に移動したわけですが、今回の双子の赤ちゃんの将来についてブルノ動物園が EARAZA に相談するということは、要するにこの2頭はドイツなどの西欧の動物園ではなく東欧の動物園に出したいということなのでしょうか? ブルノ動物園はもともとからEARAZAのメンバーでしたのでEARAZA にホッキョクグマの繁殖についての話を持っていくこと自体に不思議はないわけですが、ブルノ動物園の園長さんは前回のトムとビルの件でEAZA に不満を持ったために今回は先手を打ってEARAZA、特にモスクワ動物園の協力を求めているという解釈が成り立つように思います。 EAZA と話せば飼育基準その他のことで条件を付けられて苦しい立場に追い込まれるためにEAZA ではなくEARAZA と話す方が確かにやり易いのは事実ですね。 今回の双子の赤ちゃんの将来の移動は EAZA のコーディネーターには介入させないという意図でしょうか? てっとり早く言えば、「今回の双子はドイツやオランダの動物園には渡さない。」 という決意なのでしょうか? 欧州やロシアの動物園同士の間では外からでは容易にわからない確執があるらしいということは知ってはいましたが、そういったことの一端が見えるような気がします。 先日ヴィックスとセシがスウェーデンからオランダに戻ってきたのも何か腑に落ちない事情が背後にあっただろうと考えざるを得ません。
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ナヌク(左)とコメタ(右) Photo(C)Zoo Brno

ある推理を働かせれば、一昨年の暮れにモスクワ動物園でムルマお母さんから生まれているものの、一般への公開は一切行われずバックヤード(あるいは別に場所)に秘匿されていると言われている幼年個体(性別不詳 - 私もモスクワ動物園では一切その存在を確認できませんでした) と今回のブルノ動物園の双子のコメタとナヌクのどちらかを組み合わせてどこか東欧内の動物園で繁殖を狙わせようようという、モスクワ動物園とブルノ動物園の思惑がすでに合致しているのかもしれません。 これは一層、今後の事態の推移に注目しておく必要があるでしょう。 こういうドロドロとした世界の話は私は意外に嫌いではありません。 そしてそこに、スラヴ系という、魑魅魍魎とした海千山千の人々が時として我々の理解を超えるような考え方をするという傾向が絡み合ってホッキョクグマの赤ちゃんの将来をめぐる人間のドラマが今後展開されるのでしょう。 どう転んでもこの双子の赤ちゃんたちの将来のパートナーはいるだろうと考えます、 ですから、少々不謹慎な言い方ですが、非常に面白くなってきたということです。 これは人間のドラマです。

(資料)
iDNES.cz (May.29 2013 - Brněnské medvídě Nanuk kulhá, v zoo s vyšetřením zatím vyčkávají)
Brněnský deník (May.30 2013 - Lední medvídě Nanuk kulhá. Ošetřovatelé zjišťují, proč)
Brněnský deník (May.30 2013 - Medvídě Nanuk si nejspíš natlouklo při hře. Bude v pořádku)
EARAZA (Евроазиатская региональная ассоциация зоопарков и аквариумов)
Information Issue of Eurasian Regional Association of Zoos and. Aquariums (Vol.28 2009 - Moscow)

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2013-05-31 07:00 | Polarbearology

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