街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

ウクライナ ・ ハリコフ動物園に到来した暑い夏とサーカス出身のティムの近況 ~ 同園での繁殖の歴史

a0151913_4253078.jpg
ティム Photo(C)Александр Парфёнов

年々気候がおかしくなっているように感じます。 地球温暖化の影響云々とは全く別の話で、近年は季節の変化がすんなりと気候の変化に結びつかなくなったという感じです。 そういったことはロシアの南に位置するウクライナでも同様のようです。 今年は夏がかなり早く5月にやってきたそうで、ウクライナで唯一ホッキョクグマを飼育しているハリコフの動物園でもその頃から30℃を超える気温を記録しており、この動物園で飼育されている27歳になる雄のホッキョクグマのティムもぐっだりとした状態のようです。 そういったティムの様子を下のTVニュース映像の冒頭の部分でご覧ください。



ここ20年間というもの、ウクライナでは夏がだんだん暑くなってきているとのことで、ティムにとっても厳しい日々が続きそうです。 このハリコフ動物園にはプールもあるのですが今年の4月末の映像で、このティムの様子を見てみましょう。



このティムについては以前も2回ほどご紹介したことがありました。 ティムは先日もご紹介しているあのラパと同じユリア・デニセンコに率いられた氷上サーカス団で、ラパと同じくスケートの演技をしていたわけです。 このティムは1998年、12歳で早々と氷上サーカス団を引退し、その後からこのハリコフ動物園で暮らしているわけです。 多分彼はその氷上サーカスでの演技があまりうまくなかったのでしょう。 このハリコフ動物園でティムには以前にはキムという同じ年齢のパートナーもいたわけですが、キムは2008年に亡くなっています。 この雌のキムの写真をいろいろと探してみましたが、明確にそうだと言える写真はありませんでした。 たった一枚、このハリコフ動物園で2頭で写っている写真がありました。 2頭で写っていますので、どちらかがキム(おそらく左側)に間違いないでしょう。
a0151913_4175026.jpg
キム(左)とティム(右) Photo(C)Яндекс/NataMaster

この雌のキムはロシアのロストフ動物園で1985年に生まれていますが人工哺育で育てられたそうで、これまでも何度か指摘してきましたが、やはり旧東側諸国では以前からかなりホッキョクグマの人工哺育は行われていたということですね。 ティムとこのキムとの間には繁殖の実績はありませんが、このキムが人工哺育で育てられたことと関係があるという考え方もありえるでしょう。 ただしかし、人工哺育された雌の繁殖の問題は微妙です。 成否のどちらの可能性についても科学的に証明することは不可能でしょう。 それについては以前にも触れていますのでここではこれ以上述べません。
a0151913_61875.jpg
ティム Photo(C)AlexSmoll/Вольер белых медведей (Харьков)

前回の投稿でもご紹介していますが、このハリコフ動物園は1960年代から1970年代にかけてホッキョクグマの繁殖には大きな実績を残しています。 ハリコフ動物園は1956年に野生孤児のホッキョクグマである雄のユーリとスラヴァ、そして雌のセヴェリャンカの3頭を入手し、セヴェリャンカが13頭の出産・育児に成功しています。 このセヴェリャンカの最初の2回の出産・育児は失敗したそうですが、それは産室の状態が貧弱なものだったためだそうで、ハリコフ動物園ではその産室に付属する三分の二ほどの広さの新しい産室を造り、外界からの音を徹底的に遮断する構造にしたそうで、その後1966年から1977年にかけて、このセヴェリャンカは13頭全ての出産・育児に成功するようになったそうです。 セヴェリャンカの写真も探してみましたがみつかりませんでした。 あの社会主義時代のソ連ではカメラは超高級品でありフィルムも高価でしたから、動物園でホッキョクグマを撮るという幸運な機会に恵まれた人は多分非常に稀だったでしょう。
a0151913_4331458.jpg
ティム Photo(C)Отзовик

1970年にはある少年がこのホッキョクグマ飼育展示場に入り込んだために警官 (当時は社会主義国でしたから民警というのが正しいかもしれません) がホッキョクグマに発砲して、そのホッキョクグマが死亡したという事件があったそうです。 死亡したには雄のユーリかスラヴァのどちらかでしょう。 セヴェリャンカは1977年まで出産しているわけですから、死亡したのは2頭の雄のうちのどちらかです。 とにかく、いつもこうして人間に全責任があるにもかかわらず、最終的な責任を、それも命によってとらされるのはホッキョクグマなのです。 ティムのパートナーだったキムが亡くなった後、現在のハリコフ動物園ではティムしか飼育されていませんし、その彼ももう27歳です。 ハリコフ動物園の園長さんは内心、若年個体ペアを導入して再び繁殖を目指したいという意欲があるようです。 しかしそれよりも、とにかくティムには長生きしてほしいと思います。ハバロフスク動物園のゴシにしても、先日サーカスを無事に引退したラパにしても、このハリコフ動物園のティムにしても、彼らには同情すべき大きな理由があるわけです。 このティム、是非やはり一度、会ってみたいホッキョクグマです。
a0151913_5455926.jpg
ティム Photo(C)AlexSmoll/Вольер белых медведей (Харьков)

(*注 - このハリコフ (Харків) という街は現在はロシアではなくウクライナに属していますのでウクライナ語で「ハールキウ」 と表記するのが本当は正しいわけですが、日本ではソ連時代のロシア語の「ハリコフ」(Харьков) という呼び名が一般的ですので、それに従って「ハリコフ」と表記しています。)

(資料)
МГ "Объектив" (May.25 2013 - Лето в этом году пришло как никогда рано. Чем могут обернуться климатические аномалии для Харьковской области ?)
Харьковский зоопарк (Павильон медведей)
Проект «Letopisi.Ru» (Сетевой проект Живой символ Арктики/Белый хозяин полярных снегов)
ЛІГА новости (Sep.27 2013 - В Харьковском зоопарке появятся жирафы и белый медведь)
Планета Дорог (Apr.1 2013 - Харьковский зоопарк)
Телеграф (Jan.6 2013 - Стоимость билета в Харьковский зоопарк снизится в 4 раза)
Комсомольская Правда (Jan.17 2012 - Зоопарку вручили льва и пообещали белого мишку)
Жизнь в Харькове (Харьковский зоопарк)
Вечерний Харьков (Oct.25 2005 - Жилье для белых медведей)
ZOOBIZ (Белый хозяин полярных снегов)
Отдых в Украине (Харьковский зоопарк)
Отзовик (Отзыв: Харьковский Зоопарк - Замечательный отдых для детей и взрослых, много положительных эмоций)
ARTRUSSIAN.COM - арт-галерея фотохудожников (Зоопарк: Белый медведь - Харьковский зоопарк)
Вольер белых медведей (Харьков)

(過去関連投稿)
サーカスを「引退」し余生を送るホッキョクグマ ~ ウクライナ・ハリコフ動物園のティムの夏
ウクライナ・ハリコフ動物園のティムの近況 ~ 繁殖の「過去の栄光」をどう考えるか
by polarbearmaniac | 2013-06-02 07:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

フィンランド・ラヌア動物園の..
at 2017-04-28 02:00
アメリカ・コロンバス動物園の..
at 2017-04-27 11:00
ロシア極東・沿海州、ハバロフ..
at 2017-04-27 00:30
チェコ・ブルノ動物園の一歳半..
at 2017-04-26 00:30
ベルリン動物園 (Zoo B..
at 2017-04-25 00:30
モスクワ動物園の二歳半の雄(..
at 2017-04-24 01:30
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2017-04-24 00:30
オランダ・ヌエネン、「動物帝..
at 2017-04-23 00:30
ベルリン動物公園で死亡した赤..
at 2017-04-22 01:00
ロシア・シベリア中部、クラス..
at 2017-04-22 00:30

以前の記事

2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag


The Guest from the Future: Anna Akhmatova and Isaiah Berlin