街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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フィンランド・ラヌア動物園が腐心する1歳半のランツォの移動先選定 ~ 個体移動調整と所有権との関係

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ランツォ Photo(C) Marko Junttila / Ranua Zoo

フィンランドのラヌア動物園で一昨年2011年の11月18日にヴィーナスお母さんから生まれた雄のランツォですが、フィンランドが飼育下での自然繁殖に初めて成功したホッキョクグマとして当初からフィンランド国内では大いに注目され、そしてラヌア動物園の入園者増に大きく貢献したわけです。 そういったランツォについてはその誕生から約一年間、いろいろなエピソードも含めていくつも含めながらその成長を追いかけた件については過去関連投稿をご参照下さい。
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このランツォはラヌア動物園ですでに一歳半になっているわけですが、欧州生まれのホッキョクグマのほとんど全てがそうであるように1歳を過ぎても当然ヴィーナスお母さんとの同居はまだ続いています。 そうはいっても今年の年末にかけてはこのランツォが移動することがほぼ確実なのは、ヴィーナスお母さんがパートナーであるマナッセとの間での次の繁殖に向けての試みがなされることから考えると当然のことだとも言えましょう。 このランツォの移動移動の問題についてフィンランド国営放送(Yle)がいろいろと報じています。 

ランツォの移動先の選定にかかわるのは EAZA のコーディネーターなのですが、これに対してランツォの所有権を持つラヌア動物園にはランツォの移動先選定に対して影響力を持つ発言権を有しているのは当然なわけです。 つまりEAZAのコーディネーターが移動先を選定しても、動物園側としては所有権を盾にとってそれに同意しないことも可能であるわけです。 ところが、たとえばA動物園がXというホッキョクグマを飼育展示していてもA動物園がXの所有権を持たずに単にB動物園からのレンタルで飼育している場合には、「Xは人気者だから、いなくなっては困るから移動に同意できない。」 という主張をA動物園がEAZAのコーディネーターに対して行うことは基本的にはできないわけです。 A動物園がそういった主張を行おうとすればXの所有権を持つB動物園を抱き込んで行う...そういったことになるでしょう。しかし現実的には難しいでしょう。 このあたりの法律関係は日本でも同じです。
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ランツォとヴィーナスお母さん
Photo(C)Pia Tuukkanen / Yle

さて、このラヌア動物園はこの一歳半の雄のランツォの所有権を持っているという事実と、ランツォは長年の悲願であったフィンランドでの飼育下のホッキョクグマの初めての繁殖成功個体であるという事実からでしょうか、ラヌア動物園の園長さんは現時点からランツォの移動先選定について自らイニシアティブをとってEAZAのコーディネーターを協力者にするような形で動き始めているようです。 園長さんはよほどこのランツォを誇りに思って大事にしているのでしょう、移動先の環境になかなか厳しい条件を挙げているようです。 ランツォは寒冷地のこのラヌア動物園の気候に慣れているので暖かい地方の施設はだめだとか、そういったことです。 さて私が考えるに、そうなるとフランスなどはもっての外でドイツでもだめだということになるでしょうか。 そうだとすると、やはりスカンジナヴィア諸国などの動物園ということでしょうか? デンマークのスカンジナヴィア野生動物公園あたりが候補になるかもしれませんが、ランツォを受け入れる余裕があるかといえば、あそこにはシークーがいますから無理でしょうね。 イギリス北部スコットランドのハイランド野生公園はスペース的には十分ですが、あそこにはアルクトスとウォーカーという適齢期の2頭の雄がいますので、またここで雄を受け入れるというのは難しいでしょうね。 

寒冷地という点では、いつぞや話題にしたことがあったノルウェーの極地動物園 (“Polar Zoo”) などはぴったりですね。 この動物園は以前にフィンランドからホッキョクグマを連れてこようとした経緯がありました。 ただしこの極地動物園は今までホッキョクグマ飼育の経験がないのが難点です。 しかし私はこのノルウェーの極地動物園が、ラヌア動物園の園長さんの希望を通そうとすると現時点では考え得る選択肢の最有力候補のような気がします。

そもそもこのランツォが雌(メス)であるならばラヌア動物園の園長さんの注文は通るかもしれませんが、雄(オス)ですからそう強気を通すわけにはいかないでしょう。 とにかくこの世代の雄は欧州でもタブついているわけです。 この ランツォの移動がもたらすこととなるであろうヴィーナスお母さんの次なる繁殖への期待とランツォの移動先選定....ラヌア動物園の園長さんは当分頭の痛い状況が続きそうです。

さて、ここでこの2011年11月18日生まれのランツォの翌年2012年2月23日の誕生から半年間の様子をまとめた映像を振り返ってみることにしましょう。



やはり雪の上のホッキョクグマの姿は素晴らしいです。

(資料)
YLE Uutiset (Jun.10 2013 -  Ranuan jääkarhunpennulle etsitään uutta kotia)
YLE Uutiset (Jun.10 2013 - Ranua seeking new home for polar bear cub)

(過去関連投稿)
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by polarbearmaniac | 2013-06-11 17:00 | Polarbearology

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