街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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フランス・ボルドー近郊、パルミール動物園のジュリ逝く ~ 故郷の新施設の完成を待たずに客死

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ジュリ Photo(C) Parc Zoologique et Botanique de Mulhouse

フランスの動物園のホッキョクグマといえば南フランス・アンティーブのマリンランドに暮らすフロッケとラスプーチンが有名ではあるものの、その他の動物園でのホッキョクグマのニュースというのはあまり報道されないのが現状です。 一方ドイツやアメリカにおいてはホッキョクグマは全体としてではなく、一頭の個体が他の個体と区別された形で認識され、そしてその総合がホッキョクグマという種全体の認識の中に入り込んでいると言えましょう。 ですから飼育下のホッキョクグマに関する報道は常に個体名でなされるということになります。 日本もそういう傾向です。 しかしフランスではそういった個体の区別化という考え方、感じ方が希薄なのかもしれません。 そういうことが飼育下のホッキョクグマについての報道の少なさにつながっているのではないかと思います。

前置きが長くなりました。 こういった数少ないフランスにおける飼育下のホッキョクグマに関する報道の一つが、フランスのマスコミの9日付けの地方版にひっそりと掲載されました。 それは大西洋岸ボルドー近郊のパルミール動物園 (Zoo de la Palmyre) に暮らす28歳の雄のホッキョクグマであるジュリ (Jurij) の3週間も前に施された安楽死についてです。

このジュリ (Jurij) については過去一度だけご紹介したことがあります。 「フランス・アルザス地方のミュルーズ動物園の新施設建設計画 ~ 2頭のホッキョクグマの移動について」 という一昨年の投稿です。 このジュリは本来はフランス東部アルザス地方のミュルーズ動物園で飼育されてきましたが、ミュルーズ動物園でグラン・ノール(Grand Nord) と呼ばれるホッキョクグマの新施設の建設工事開始のため、その期間中、雌のティナ(Tina)と共に大西洋岸のパルミール動物園に預けられたわけでした。 ところがジュリは3か月ほど前から体重が減り始め、検査の結果で肝臓にできた腫瘍が原因と判明し、安楽死という処置でこの世を去ったということです。
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ジュリ(左)とティナ(右) Photo(C)Le Pays

このジュリは1984年にドイツのカールスルーエ動物園で生まれ1988年からミュルーズ動物園で飼育されてきたそうです。 パートナーのティナとの相性は非常によかったようですが、繁殖には成功しなかったそうです。 今回亡くなったジュリと彼のパートナーであったティナのミュルーズ動物園時代の映像をご紹介しておきます。 これは一昨年の春のもののようです。



それから、一昨年秋のジュリと彼のパートナーであるティナがミュルーズ動物園から移送されてパルミール動物園に到着した際の映像も御紹介しておきます。


Arrivée ours polaires

さて、今回亡くなったジュリのパートナーであるティナはロシアの野生出身で現在推定で26歳になっているのですが、彼女も鼻に腫瘍があったり心臓にも問題があったりもしているものの年齢から言えば健康状態は悪くないそうでパルミール動物園の担当者は、なんとしても彼女を、この秋に予定されている新施設の完成したミュルーズ動物園に戻してやりたいというのが最終的な目標であると語っています。

ミュルーズ動物園の新施設完成を待たずに亡くなってしまったジュリの冥福を祈ります。
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ジュリ Photo(C) Parc Zoologique et Botanique de Mulhouse

(*追記 - この秋に完成するミュルーズ動物園の新施設であるグラン・ノールですが、報道によりますとミュルーズ動物園はすでにEAZAのEEPの承認を得て、2009年生まれの若いペアの導入を決定しているそうです。 これはすでに先日、「スウェーデン、オルサ・グレンクリットのベアパークのヴィックスが再び生まれ故郷のロッテルダム動物園へ」 という投稿でロッテルダム動物園のヴィックスとレネンのアウヴェハンス動物園のセシの新ペアが秋にミュルーズ動物園へ移動する予定であることをご紹介していました。 しかしヴィックスもセシも2010年生まれであり2009年生まれではありません。 そうすると別のペアなのかなとも思いますが、2009年生まれで新ペアになりうる個体がありませんので、やはりこれはヴィックスとセシのことでしょう。 それから、今回亡くなったジュリは2月頃から体調が悪化し始めたわけですが、ミュルーズ動物園ではこのジュリが亡くなるであろうことを予想して、その時点で若年の新ペア導入を図ってEAZAのコーディネーターを動かしたのでしょう。 そうすると5月にヴィックスとセシがオランダに戻ってきた事実と奇妙に符合しますね。 やはりEAZAのコーディネーターは水面下でかなりの動きを行っていたということを物語るものです。 EAZAのコーディネーターというのはやはり、かなりのやり手だと思います。 実に手強いと思います。ロッテルダム動物園やアウヴェハンス動物園を無理やり説得してでもヴィックスとセシの一時帰還を実現させてしまった調整力には驚嘆します。)

(資料)
Le Pays (Jun.9 2013 - Les habitants du Grand Nord)
Le Pays (Jun.9 2013 - Adieu Jurij…)
(追加資料)
Le Furet Mulhousien (Jul.4 2013 - Jurij l'ours polaire s'est éteint le 29 avril dernier à l'âge de 28 ans. Il ne reviendra finalement pas...)

(過去関連投稿)
フランス・アルザス地方のミュルーズ動物園の新施設建設計画 ~ 2頭のホッキョクグマの移動について
チェコとフランスにおけるホッキョクグマの搬出入の映像
by polarbearmaniac | 2013-06-12 07:00 | Polarbearology

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