街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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モスクワ動物園、禁断・非公開のムルマお母さんと秘匿された2011年誕生個体の姿 ~ 闇に沈む深い謎

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ムルマお母さん(右)と2011年誕生の秘匿個体 (2013年2月19日)
Image : мой мир@mail.ru/Юлай Саитгалин

昨年の1月20日の 「モスクワ動物園がホッキョクグマの赤ちゃん4頭の誕生を正式発表 ~ シモーナ、遂に三つ子を出産!」 という投稿で、モスクワ動物園が前年2011年の11月末に同園で飼育されている2頭の雌のホッキョクグマ(すあわちシモーナとムルマ)に出産があったことの正式発表を行ったことをご紹介しています。 その際にモスクワ動物園は三つ子の赤ちゃんを出産したシモーナお母さんと赤ちゃんたちの産室内の様子(正確には産室から控の部屋につながる部分)を公開しています。 しかし、もう一頭の母親であるムルマお母さん(すなわち男鹿水族館の豪太の母)、及び彼女の産んだ一頭の赤ちゃんについての姿は公開されませんでした。

私は昨年2012年にモスクワを2度訪れ、その際にモスクワ動物園を合計9回訪問してシモーナお母さんと三つ子ちゃんの様子を観察し現地からこのブログに投稿をアップさせてきました。 しかしこのブログに御訪問いただき注意深くご覧いただいた方にはおわかりかと思いますが、私のそうした記事の中でムルマお母さんの産んだ赤ちゃんについて写真はおろか、一言の言及もないことに奇妙な感じを抱かれた方もいらっしゃるかもしれません。 記事と写真は全てシモーナお母さんと三つ子ちゃんに関するものばかりです。 モスクワ動物園で前年2011年に誕生した赤ちゃんたちの戸外初登場(すなわち一般公開開始)は翌2012年の2月22日のことでしたが、その際の様子は 「モスクワ動物園で誕生の三つ子の赤ちゃん、初めて戸外に登場!」 という投稿でご紹介しています。 しかしその後もムルマお母さんと彼女の赤ちゃんは忽然と姿を消したままでその行方すらわからないという状態でした。 何故公開しないのかが不可解でした。
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ムルマ (2011年9月1日撮影 於 モスクワ動物園)

実はこの状態の不可解さについて疑問を持っていたのは私だけではなくドイツのホッキョクグマファンの方々も同様でした。 ある方はモスクワ動物園にメールで問い合わせたり、ある方はたまたま仕事でモスクワに行かれて動物園を訪問し、広報の方や担当者と思われる方に直接尋ねたりもしていましたが、同園からの返答は「元気である」 という内容以上のではなかったそうです。 私が9月にモスクワを訪問した際にもドイツの方からモスクワにメールが届き、この件について「是非聞いてきてほしい」 との依頼を受けていました。 私も勿論そうするつもりでした。 ただしかし、私の今までのいくつかの同園での体験で言えば、実はモスクワ動物園というのはこの種の問い合わせに対しては正面から答えない、あるいははぐらかせた返事しかしないという傾向があるのです。 さらに、やたらとプライドの高い人が多いというのも感じていました。 最初の頃などは「俺たちはホッキョクグマについては何でも知っているのだ。 お前などに何がわかるというのか!」 という態度でした (後から親切にいろいろと説明してくれはしましたが)。 ですから今度は私が聞いても満足な回答はないだろうと悲観的に思ってはいました。

さて、その9月の4回のモスクワ動物園訪問でしたが、私は朝から夕方までホッキョクグマ展示場で粘りに粘ってシモーナお母さんと三つ子ちゃんの様子を観察していたのですが、その間に飼育員さんの姿は少なくとも私は見かけませんでした。 モスクワ動物園というのは他の動物園と異なり、飼育員さんははっきりとした制服といったものを着ていませんので、飼育員さんの姿を来園者と区別してすぐに認識するということは難しいわけです。 同園のホッキョクグマの担当者のうち、私はお二人の方と以前話したり資料を見せてもらったりしたことがあるのですが、その方々の顔も見かけませんでした。 「さてどうしたものか?」 と訪問最終日に思ったわけです。

実は一息つくためにトイレに行き、ホッキョクグマ展示場に戻ろうとしたときにバックヤードへの入り口の門が少し開いていました。(この門については以前に現地から写真を投稿しています。) ここは実は外部の人間の立ち入り禁止の場所なのですが2011年に飼育員さんのご好意で中を見せてもらったことがありましたので、中の間取りはわかっていました。 私は実際にこの眼でムルマお母さんと赤ちゃんがいるのかどうかを確かめる良いチャンスだと考え、こっそりと入ってみることにしたわけです。 ロシアという国は、こうした場所に入り込んで保安員に見つかった時は実に面倒なことになるわけです。 治安担当の当局者(公務員)はもちろんのこと、民間の保安員、警備員という人々にいたるまで、こういう侵入者に対する扱いは実に手荒なのです。 しかしそういう恐怖心よりも好奇心が優っていた私でした。

さて、こうしてバックヤードを覗いてみた私ですが、ムルマお母さんも赤ちゃんも、そして父親であるはずのウムカの姿も、いるはずの場所に全く見ることができませんでした。 ウランゲリとシモーナのいる場所には表側の展示場への扉が開いていて彼らは展示場に出ていたわけですが、ムルマとウムカにいる場所は空っぽでした。 誰にも見つからずに園内に戻ってきた私でしたが、謎は一層深まったと思ったわけです。 何故ムルマお母さんと赤ちゃんの姿が消えたのかについては私には二つほどの仮説を持っているのですが、その一つはムルマお母さんの出産後の体調が悪くて療養せねばならなくなり赤ちゃんをお母さんと引き離すわけにはいかなかったので(引き離せば赤ちゃんは人工哺育になりますが、モスクワ動物園は基本的に人工哺育はやりません)、ムルマお母さんの療養を兼ねて親子でヴォロコラムスク付属保護施設 に移動しているという考え方です。 これはドイツのファンの方にもそういう考えをする人がいらっしゃるようです。 もう一つの仮説ですが、非常に大胆な仮説ですので今の段階では述べないことにしておきます。 もう少し根拠付けが必要だと思っています。

そして、冒頭の写真です。 これは今年2013年2月19日にモスクワ動物園の飼育展示場、そしてバックヤードで撮影された方の捉えたムルマお母さん(右)と成長した子供の姿です(開始後3分のところです)。 頭から鼻筋でのラインに特徴のあるムルマお母さんの姿に間違いありません。これを撮影された方は、世界で初めてムルマお母さんが2011年11月に産んだ子供の姿を捉えたものだと言ってよいでしょう。 その方の撮影された動画には三つ子ちゃんたちのバックヤードでの姿も見事に捉えています。この方は本当に許可を得てバックヤードに入り、こうした姿を撮影したのがどうかはわかりません。多分違うように思います。 私が飼育員さんに案内されたときも「撮影はするな」と言われたほどだったからです。 しかしこの今回の映像は実に貴重です。 (*追記 - ムルマお母さんの横にいる子供は体の大きさから考えれば雄だろうと思います。)

モスクワ動物園というところは実に謎の多い動物園です。 ホッキョクグマの実際の血統と血統登録に、意図したものなのか単なる間違いなのかは不明ですが、違っていると推定できる個体がいるわけです (実は過去にはこれはモスクワ動物園だけの話ではありませんが)。 一例をあげれば、あのフロッケのパートナーであるラスプーチンの「弟」といわれている謎の個体です。 ムルマお母さんの息子であるラスプーチンにいたのは「弟」ではなく実は「妹」だったというのが真相だろうということです。 これは過去のモスクワ動物園での映像などを分析してみた結果、いくつかの矛盾を全て解消しようとすれば消去法でそう考えざるを得ないということです。 しかしその「妹」はシモーナの娘という血統登録かなされ、某動物園で飼育されているわけです。 この例については何か意図的なものを感じます。 これについては差し障りのない範囲内でまた詳しく書いてみたいと思います。 ロシアという国は本当に良くわからない国です。 いい加減さと大らかさは紙一重だということです。 例のイワンとゴーゴの件もそうだったわけです。 あの時は旭山動物園のFさんがしっかりしていたおかげで解決できたということです。

(資料)
мой мир@mail.ru (Белые медведи. Московский зоопарк)

(過去関連投稿)
秋の日のモスクワ動物園のシモーナとウランゲリ ~ 再び期待されるこのペアの繁殖
さらなる出産が切望されるムルマ ~ 秋の到来を感じさせる気温のモスクワ動物園で
モスクワ動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 繁殖実績世界一の貫録を見せつける
モスクワ動物園の広報担当者、ホッキョクグマの赤ちゃん誕生を認める ~ ウランゲリ、また父親となる
モスクワ動物園がホッキョクグマの赤ちゃん4頭の誕生を正式発表 ~ シモーナ、遂に三つ子を出産!
モスクワ動物園で誕生の三つ子の赤ちゃん、初めて戸外に登場!
by polarbearmaniac | 2013-06-14 07:00 | Polarbearology

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