街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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デンマーク ・ オールボー動物園のミラクがカナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村へ!

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ミラク Photo(C)Aalborg Zoo

カナダよりの報道によって注目すべきニュースが突然明らかにされました。 デンマーク・オールボー動物園で2008年12月7日にヴィクトリアお母さんから誕生した現在は4歳半となった雄のミラクがカナダ・オンタリオ州 コクレーンのホッキョクグマ保護教育文化村 (Polar Bear Conservation and Educational Habitat and Heritage Village – Polar Bear Habitat) に7月に移動することになったそうです。 オールボー動物園とコクレーンの生活文化村との間ですでに合意書が取り交わされているそうで、ミラクの所有権もカナダ側 (Polar Bear Habitat) に移転するという内容だそうです。 カナダ政府からの事前の輸入許可 (Import Permit) はすでに降りているそうで、あとはミラクの血液検査の結果を待つだけであり、これも多分クリアすることは間違いないと考えられているそうです。
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幼少のミラクとヴィクトリアお母さん
Photo(C)Henning Bagger /Berlingske National

私は以前から本ブログで、このオールボー動物園のミラクの移動先についてEAZAのコーディネーターが相当に苦慮しているらしいことを予想した内容の投稿を行ってきましたが、今回の移動は欧州と北米の大陸間移動、しかも所有権移転を伴う移動ですので、その意味するところは重大であるように思われます。 このミラクはあのイコロとキロルと同じ年齢であり、本当で言えばイコロとキロルの交換候補であってもおかしくはなかったわけです。 仮にそうなっていたとすれば、このミラクこそアイラのパートナーとなったでありましょう。 しかし何故それが実現できないかについては最近いくつもの投稿でその点を明らかにしてきましたので今更ここで改めて申し上げる必要はないと思います。 ミラクを移動させなければヴィクトリアお母さんが次の繁殖を目指すことができません。 しかしミラクの移動先は飼育スペースの関係で欧州の動物園にはもうすでに容易に見出し難いわけです。 欧州の動物園でのホッキョクグマの繁殖は順調に進んでいたわけですが、移動先のスペース確保が難しくなったためEAZAのコーディネーターが大変に苦労している状況となっています。 こういった状況に関しても全てご紹介してきたつもりですし、ここをご訪問していただき注意深く内容を読んでいただけた方には欧州がホッキョクグマの繁殖に関して現在直面している問題点についてはご理解いただけたのではないかと思います。 それは我々日本が直面している問題とは全く異なる次元での問題であるわけです。
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ミラク Photo(C)Aalborg Zoo/Kapuskasing Northern Times

今回の大陸間移動に関してはEAZA のEEP を担っているオールボー動物園が個体をEAZA加盟以外の地域に出すという非常に特殊なケースです。 EAZA加盟の動物園以外の地域の施設であっても飼育基準(この場合欧州基準と考えるべきでしょう)を満たしていれば移動は不可能ではないということを示している良い例でしょう。 当然、EAZA からの承認を得て行われることには間違いありませんが、想像しうる可能性は2つであり、一つは4歳半になるミラクの移動先選定が進まないことに対してオールボー動物園が不満を感じてミラクをカナダに売却しようとした可能性、もう一つの可能性はEAZA のコーディネーターが積極的に今回の移動をアレンジして、ドイツ・ニュルンベルク動物園のフェリックスの血の入った個体を欧州から減らそうとした可能性の二つです。 私にはそのどちらが真実なのかはわかりません。 しかし仮に後者であるなら、それは先日の「札幌・円山動物園の新ツインズ(ノワールとブランシュ – 仮称)、そして他のララの子供たちの将来 (中)」 の中で私が予想したEAZAのコーディネーターの狙い、つまり「(A) ドイツ・ニュルンベルク動物園の雄のフェリックスの息子のパートナー未定である若年個体(ミラク、グレゴール、アレウト)のうち1頭を欧州から減らしてその代わりに血統の異なる雌を導入したい。」 という内容は正しいであろうことを示しているように思われます。 ただし今回の移動は欧州から北米への一方的な移動、それも所有権移転を伴う移動である点を考えれば前者の可能性も十分あると思われます。 そもそもこのカナダのPolar Bear Habitat には現在雄のガヌークが一頭で飼育されており、ミラクがその施設に行くこと自体は繁殖に寄与することにはならないわけです。 ですからこれは単なる個体の売却以上のものではあり得ないと考えるほうが正しいでしょう。 繁殖に寄与しない移動にEAZA のコーディネーターが関与するということは不自然のようにも思われるからです。 となれば、やはり前者、つまりミラクの移動先選定が進まないことに対してオールボー動物園がEAZA のコーディネーターに不満を感じてミラクをカナダに売却しようとしたのが真相である可能性が高いと考えるべきでしょう。
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ミラク Photo(C)Aalborg Zoo

さてオールボー動物園では先日、2歳半のアウゴが安全用の堀に転落して死亡しており、今回ミラクがカナダに移動すれば残るのは雌の2頭であるヴィクトリア (16歳) とメーリク(12歳)だけとなります。 両方ともに出産・育児経験のある素晴らしいお母さんです。 果たしでどの動物園から雄がオールボー動物園に送りこまれるかに注目したいところです。 再度ニュルンベルク動物園のフェリックスになるのでしょうか? フェリックスはヴィクトリアともメーリクとも非常に相性が良いわけです。 仮にフェリックスが再びオールボー動物園に出張してくれば、赤ちゃんが誕生することは確実だと思われます。 しかしまだ11歳であり繁殖能力の点で抜群であるフェリックスが、まだまだ今後も欧州で繁殖に成功するであろう確率が極めて高いことを考えるとすれば別の雄がやってくる可能性もあるでしょう。 私は後者のような気もしますが具体的にどの雄かと問われればちょっと答えようがありません。 ロストック動物園に出張しているラルスは候補になり得るかもしれませんが、血統的にはやはりフェリックスが本命と考えたほうがよいでしょう。

ここで今回カナダに移動することになったミラクの映像をご紹介しておきます。





ミラク君、どうかカナダでもお元気で!

(資料)
Kapuskasing Northern Times (Jun.19 2013 - Cochrane Polar Bear Habitat to Get A New Polar Bear)
Aalborg Zoo (Isbjørneungen Milak)
Berlingske National (Dec.2 2009 - Isbjørneunger i Aalborg Zoo er døde)

(過去関連投稿)
カナダ・コクレーン、ホッキョクグマ保護施設のナヌークの死 ~ 安住の地で波乱の生涯を終える
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(過去関連投稿  - 2011年オールボー動物園訪問記)
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by polarbearmaniac | 2013-06-19 23:00 | Polarbearology

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