街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・西シベリア、ノヴォシビルスク動物園にモスクワ動物園から雄の幼年個体が到着 ~ 謎と暗黒の闇

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Photo(C)Новосибирский зоопарк

実に興味深いニュースがロシアから流れてきました。 ロシア・西シベリアのノヴォシビルスク動物園が本日28日に発表したところによりますと、一歳七か月になる雄のホッキョクグマがモスクワ動物園から到着したとのことです。 この幼年個体がノヴォシビルスク動物園に留まるのは、他の動物園との契約が正式に成立するまでのごく数か月間だけで、その後は契約が成立した他の動物園に移動となる予定だと述べています。

さて、モスクワ動物園からの一歳七か月の雄の幼年個体といえば、これはもうシモーナお母さんが一昨年の11月に産んだ三つ子のうちの一頭か、それとも先日 「モスクワ動物園、禁断・非公開のムルマお母さんと秘匿された2011年誕生個体の姿 ~ 闇に沈む深い謎」 という投稿でご紹介していますムルマお母さんの産んだ一人っ子のどちらかでしかあり得ません。 ノヴォシビルスク動物園では今回のモスクワ動物園からの幼年個体の到着を発表した際にHPでのこの冒頭の写真を掲載していますから、この写真が本当にそのモスクワから到着した幼年個体の写真であるとしますと、私の眼ではこれはシモーナお母さんの産んだ三つ子の一頭であることにほぼ間違いないようにも思われます。 ムルマお母さんの子供であればもっとはっきりと頭から鼻筋にかけての平坦なラインがあるからです。 ただしかし、到着して間もない個体をこうしてこの写真のようにプールで遊ばせるというには実に不自然ですし、いくらノヴォシビルスク動物園が他の動物園への中継地点であるに過ぎないにせよ、検疫なしにいきなり展示場に出すというのも不可解です。 ということで、このノヴォシビルスク動物園が掲載したこの冒頭の写真が本当にモスクワ動物園から到着した幼年個体の写真であるかについては私は判断を留保せざるを得ません。 ということは、今回ノヴォシビルスク動物園に到着した幼年個体の母親がシモーナなのかムルマなのかは依然としてはっきりしないことを意味します。 ノヴォシビルスク動物園のホッキョクグマ展示場にはライブカメラがありますが、今回モスクワ動物園から到着した個体はこの展示場の付属した場所で公開するそうですから、ライブカメラで姿を確認するのは困難でしょう。
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ノヴォシビルスク動物園 Photo(C)madammaman.narod.ru

実はこのノヴォシビルスク動物園というのはこういった形でよくホッキョクグマの移動の中継地になるわけです。 実は二年半ほど前に「モスクワ動物園、ロシア国内の幼少ホッキョクグマの売却一元管理を開始か?」という投稿を行っていますが、あの時もカザン市動物園生まれのピムがノヴォシビルスク動物園を経由して最終的にはイジェフスク動物園に移送されていました。

さて、今回ノヴォシビルスク動物園に到着した雄の幼年個体がいったいどこの動物園に行くことになるかが問題です。 ロシア国内なのか国外なのかが問題です。 実は最近ロシアの地方都市などの報道を細かく見ているのですが、一つだけ注目すべき小さな報道がありました。 それはロシアではなくウクライナのムィコラーイウ(ニコライエフスク)動物園 がホッキョクグマの幼年個体の入手を狙ってモスクワ動物園と交渉しているというニュースです。 ムィコラーイウ(ニコライエフスク)動物園...といいますと一度このブログでも触れたことがありました。 それは、「ホッキョクグマ・アイカ と レディン一家の物語 ~ 愛情の日々、そして悲劇的な終末へ」 という投稿です。 ここで登場したアイカという悲劇のホッキョクグマが生まれたのはこのウクライナのムィコラーイウ(ニコライエフスク)動物園だったわけです。 このムィコラーイウ動物園は以前にホッキョクグマを飼育しており繁殖に実績もあったわけですが現在はホッキョクグマは飼育されていません。 実はこの動物園におけるホッキョクグマについて私は単独で投稿したいと最近準備していたところに今回のニュースが入ってきましたので、またそれとの関連で後日投稿してみたいと思います。 少なくとも2001年の段階では2頭飼育されていたところまでは確認できています。 以下の写真はこのムィコラーイウ動物園で飼育されていたホッキョクグマのペアで、このうちの一頭(多分手前)がアイカの母親に間違いないでしょう。 
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ムィコラーイウ動物園でかつて飼育されていたホッキョクグマ
Photo(C)doroga.ua

さて、このムィコラーイウ動物園がモスクワ動物園からホッキョクグマを導入したいと交渉していることは興味深いのですが、雌の個体の入手を狙っているようですね。 そうなるとこの今回のノヴォシビルスク動物園に到着した個体は雄ですから、そこのところでやや食い違いがあるように思います。 ムィコラーイウ動物園が挙げているホッキョクグマ1頭の相場が25万ドルという金額は、実はモスクワ動物園がムィコラーイウ動物園に対して幼年個体の売却価格として提示した金額であることを臭わせる報道もあります。 ムィコラーイウ動物園は別の動物園を巻き込んで、購入ではなく複数の別の動物との個体の三角トレードでホッキョクグマを導入したいようです。 でもこれは相当に難しいかもしれません。 しかしいずれにせよやはり、このムィコラーイウ動物園は有力な候補であるような気がします。

モスクワ動物園、カザン市動物園を中心としたロシアの動物園のホッキョクグマ情報は実に謎に満ちています。 まず血統登録情報があまりあてにならないということです。 先日も少しだけ触れましたが、あの有名なフロッケのパートナーであるラスプーチンには双子の兄弟がいたというのは欧州のホッキョクグマファンの方々の間での確固とした定説です。 ラスプーチンの母親は男鹿水族館の豪太の母親と同じムルマお母さんです。 しかし血統登録情報では2007年にはムルマは一頭しか出産していないことになっています(*注意 - その後、訂正を取り込んだ最新の情報では2頭になっています)。 にもかかわらず欧州のホッキョクグマファンの方々はラスプーチンには双子の兄弟がいたことが定説になっているということは、欧州のホッキョクグマファンの方々は血統登録情報よりも別の情報からそう認識しているということです。 つまり、欧州のホッキョクグマファンの方々もロシアの動物園生まれの個体の血統登録などはあまり信用していないということです。 以下の映像を見て下さい。 これは2008年3月6日と13日のモスクワ動物園での双子の赤ちゃんの一般公開時の映像です。 映っている母親はどちらもムルマお母さんです。 この角度ですと頭から鼻筋のラインの特徴ですぐわかるからです。





前年2007年11月にムルマお母さんが産んだのは血統登録情報によれば実は一頭です(*注意 - その後、訂正を取り込んだ最新の情報では2頭になっています)。 それなのに何故この映像ではムルマお母さんと一緒に赤ちゃんが2頭いるのでしょうか? つまりこの2つの映像は、血統登録情報は信用できないということを裏付ける証拠なのです。 この映像のうち一頭はラスプーチンです。 残りの一頭を欧州のホッキョクグマファンの方々は雄と考えているのは私の知らない何かの情報があるからでしょう。 ところが、私の見解ではこの残りの一頭は雌です。 その雌こそ、今問題になっているノヴォシビルスク動物園で、ロッシーの双子の兄弟のもう一頭であるクラーシン(なんとノヴォシビルスク動物園ではこのクラーシンを「カイ」と改名してしまったのです。 あの仙台のカイと同じ名前です。)のパートナーであるゲルダであると強く推定が成り立つのです。 このゲルダの母親は血統登録情報ではシモーナお母さんとなっているのです。 ところは実際はムルマお母さんの娘である可能性が極めて強いのです。 2007年11月にモスクワ動物園では赤ちゃんが3頭生まれていますが、そのうち公開されたのはムルマお母さんの産んだ双子の2頭だけで、シモーナお母さんの産んだ1頭はシモーナお母さんと一緒にモスクワ動物園によって秘匿されたのです。 私の見解では、その秘匿された1頭の赤ちゃんは雄であり、シモーナが産んだと言われている雌のゲルダではないということです。 それは前回2011年11月にムルマお母さんが産んだ1頭の赤ちゃんがムルマお母さんとともに(現在も?)秘匿されているのと全く同じ状況だったのです。

こういった事例からも、ロシアの動物園で誕生した個体の血統登録情報はそのまま鵜呑みにできないということです。 一歩進んで言いますと、血統を偽って外国に売却している例があるのではないかと考えざるを得ないわけです。 もしそうであるならば、ここにはロシアの動物園関係者と動物商(ブローカー、代理人、仲介人を含む)との間に不適切な「黒い関係」の存在を想定せざるを得ないことになるでしょう。 仮にそうであるならば、間違いなくロシアの動物園関係者の特定の個人のポケットに流れている金銭があると考えるのが妥当でしょう。 それを裏付けると思われる一連の調査報道がロシアで数年前になされたことがありますが、これについても稿を改めたいと思います。 とにかく、ロシアというのは一筋縄ではいかない実に怖い国なのです。 そういったロシアの動物園で生まれた個体の謎こそが、こういった世界のホッキョクグマ界における最もディープな領域の問題であり、その解明を行うことはホッキョクグママニア冥利に尽きると言っても過言ではないでしょう。 血統登録情報を踏み越えていくことが求められるわけです。 私は血統登録情報上で誰が誰の子供であるかということよりも、実際の血統では誰が誰の子供であるかのほうに遥かに興味があるわけです。

さて、今回このノヴォシビルスク動物園に到着した雄の個体がシモーナお母さんの息子であれば、あの三つ子の一頭ということになります。そろそろロシアに行ってまた情報を集めたいと思っているのですが、いかんせん現在仕事で多忙なためになかなか出国できずにいます。 

(資料)
Новосибирский зоопарк (НОВОСТИ Jun.28 2013 - Пополнение коллекции зоопарка)
РИА Новости (Jun.28 2013 - Новосибирский зоопарк временно приютил белого медведя)
Новосибирские новости (Jun.28 2013 - Белого медведя привезли в Новосибирский зоопарк на передержку)
Любимый город (Jun.28 2013 - В зоопарке Новосибирска пополнение: белый мишка! )
mk.mk.ua (Jun.18 2013 - Николаевский зоопарк: 112 лет без выходных)
Дорога.УА (Николаевский зоопарк)
Первый канал (Mar.6 2008 - Посетители Московского зоопарка смогут увидеть 3 белых медвежат)

(過去関連投稿)
ロシア・ノヴォシビルスク動物園のライブカメラが高精細度(HD)映像となる ~ クラーシンの近況
モスクワ動物園、ロシア国内の幼少ホッキョクグマの売却一元管理を開始か?
モスクワ動物園の幼年個体、ペアとして中国・北京動物園へ
韓国・ソウル動物園がモスクワ動物園よりホッキョクグマ2頭を入手! ~ モスクワ動物園の個体選択
ロシア・ウドムルト共和国のイジェフスク動物園 ~ 「さすらいのホッキョクグマ」ピムの安住の地となるか
ベルリン動物園、ロシアのロストフ動物園よりホッキョクグマを入手か?
亡きクヌートのパートナー候補だった個体、ロシア・ロストフ動物園で依然待機か? ~ 状況を推理する
モスクワ動物園のシモーナの娘、ロシア・ロストフ動物園より待望のベルリン到着!
モスクワ動物園がカザン市動物園に1頭のホッキョクグマを贈与 ~ 帰属意識と権利関係の狭間で
モスクワ動物園の一歳半の三つ子ちゃんの近況 ~ 同園でのホッキョクグマ一頭あたりの飼料費は?
モスクワ動物園、禁断・非公開のムルマお母さんと秘匿された2011年誕生個体の姿 ~ 闇に沈む深い謎
ホッキョクグマ・アイカ と レディン一家の物語 ~ 愛情の日々、そして悲劇的な終末へ
by polarbearmaniac | 2013-06-28 23:45 | Polarbearology

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