街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・ケベック州 サンフェリシアン原生動物園のエサクバクとイレのペアへの大きな期待

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イレとエサクバク  Photo(C)Zoo sauvage de Saint-Félicien

カナダ・ケペック州のサンフェリシアン原生動物園 (Zoo sauvage de Saint-Félicien) といえば、2009年の11月に誕生したタイガとガヌークの双子兄弟について誕生から成長の過程における一連の優れた情報発信を行って我々を驚かせた動物園です。 このとき出産したのはエサクバク (Aisaqvaq /Aisakvak) であり、その時のパートナーはイヌクシュクでした。 イヌクシュクについては以前の投稿である「カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語」で詳しく触れていますが、彼はおそらく世界で現在、ドイツ・ニュルンベルク動物園のフェリックスと並ぶ繁殖能力を備えた若手期待の星の双璧だと言えましょう。 

エサクバクとイヌクシュクの間での繁殖行為によってタイガとガヌークが誕生したわけですが、その一連の過程についてRadio Canada が素晴らしい番組を制作しています。 すでに以前もご紹介していますが、是非またここでご覧いただきたく思います。 このサンフェリシアン原生動物園で繁殖に関するホッキョクグマの担当をしているのは全員女性ですね。 ひょっとしてこういったことは男性より女性のほうが神経の細かさがあってよいのかもしれません。 この映像開始後、1分38秒あたりからのシーンにご注目いただきたいのですが、イヌクシュクのパートナーとしてはエサクバクとフリーマスの2頭が与えられており、イヌクシュクはエサクバクを繁殖の相手として選択するシーンが写っています。 この時に選択されなかったフリーマスはその後オランダに移動し、そして「動物帝国」で昨年の秋に双子を出産しているわけです。 それから、エサクバクも最初の年は偽妊娠だったと言っています。 産室内の映像も登場していますが、その映像の明瞭度は素晴らしいものです。 この番組は必見の映像ですので何が何でも見ていただきたいと思います。 啓蒙的な内容を実に美しい映像で語っています。 日本のTV局にはこういったセンスの番組を制作するのは難しいでしょう。(冒頭にCMが入ります。)



さて、前回エサクバクのパートナーだったイヌクシュクがトロント動物園でオーロラをパートナーとして引き続き繁殖に挑戦することとなり、エサクバクは今度は昨年2012年には前年オランダから来たイレ (Yellé) をパートナーにして再び繁殖に挑戦したものの残念ながら成功しなかった件は「カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、展示場に復帰 ~ 本命の意外な失望結果」という投稿をご参照下さい。 今年もこのエサクバクとイレとの間には繁殖行為があったようで、今年の暮れには朗報を聴くことができるような気がします。 そしてまたこの動物園が発信する産室内での素晴らしい映像を見てみたいと思います。 以下に2つ、3月の雪の中での映像をご紹介しておきますが、このエサクバクとイレの相性の良さを垣間見せてくれるとともに、雪の上のホッキョクグマの美しさをよく感じさせてくれる映像だと思います。 特に2番目の映像は素晴らしいと思います。 どちらの映像でも体の大きな方が雄のイレです。





それから比較的最近のこの2頭の映像をご紹介しておきます。 まず雌のエサクバクです。 彼女は野生出身で現在10歳です。なかなか美しいホッキョクグマだと思います。



次の映像は雄のイレですが、彼は2005年にオランダ・レネンのアウヴェハンス動物園であのスパルタ教育で有名なフギースお母さんから生まれた三つ子の一頭です。 この時の三つ子のうち、水に入りたくなかった一頭をフギースお母さんが口で咥えて水辺まで持って行って持ち上げるというシーンについてはすでにご紹介しています。 あの時の一頭はいったい誰だったのかは不明ですが、ひょっとしてこのイレだったのかもしれません。



あの時のフギースお母さんの産んだ三つ子は雄が2頭、雌が1頭でしたので、水に入りたがらなかった一頭は多分雌のエヴァではないかという気がしますが根拠はありません。 エヴァといえば現在スウェーデンであのヴィルベアのパートナーになっています。 話は変わりますが雄2頭、雌1頭の三つ子の場合は雄の2頭が徒党を組んで力の弱い雌の1頭に意地悪をするケースが考えられるわけです。 事実、モスクワ動物園でシモーナお母さんが2011年11月に産んだ三つ子も雄2頭、雌1頭なのですが、シモーナお母さんはこの雌1頭をよく庇って守ってやっていました。 仮にララお母さんがこういった性別の組み合わせの三つ子を産んだら、やはりこれも徹底的に雌1頭を庇護するでしょう。 レニングラード動物園のウスラーダお母さんが2002年の11月に産んだ三つ子は全て雄だったわけですが、やや力の弱い1頭がいたそうで、それが最近いろいろとここでご紹介しているクラスノヤルスク動物園からスタロースコルィスク動物園に移動したセードフ司令官だったそうです。 ウスラーダお母さんはセードフ司令官に肩入れしようという様子はなかったそうで、まあそれはウスラーダお母さんの性格からいえばなんとなくわかる気がします。
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エサクバク  Photo(C)Zoo sauvage de Saint-Félicien

話がすっかり逸れてしまいましたが、やはり今年の11~12月の出産シーズンでは、このサンフェリシアン原生動物園のエサクバクが再び本命として期待できると思われます。 若干の不安要素があるとすればエサクバクのパートナーが2009年のイヌクシュクではなく今回も昨年同様イレである点ですが、もし今年も昨年同様エサクバクに出産がなければ、再びトロント動物園のイヌクシュクがサンフェリシアン原生動物園に戻る可能性も出てくるでしょう。

(注)イヌイット語が起源と思われるエサクバク (Aisaqvaq) を現地のフランス語の放送では「アイサクバク」と発音していますが、当ブログでは一般的なFrancophone の発音ルールに従って「エサクバク」と表記しています。 それから、エサクバクには "Aisakvak" という綴りと "Aisaqvaq" という綴りの2つがあります。 後者のほうがイヌイット語の語源に近いと思います。

(過去関連投稿)
カナダ・サンフェリシアン原生動物園の情報発信力の質の高さ ~ 新しい時代の繁殖へ
2012~13年のホッキョクグマの赤ちゃん誕生シーズンを終えて
オランダとカナダの施設のホッキョクグマ個体の交換が発表 ~ 遂に再開された北米・欧州間の個体交換
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
カナダ・ケベック州、サンフェリシアン原生動物園のエサクバク、展示場に復帰 ~ 本命の意外な失望結果
カナダ・サンフェリシアン原生動物園で次の繁殖シーズンへ向けての同居開始 ~ 各国での次の繁殖を占う
by polarbearmaniac | 2013-07-06 07:00 | Polarbearology

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