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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止

カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止_a0151913_0225149.jpg
イヌクシュク Photo(C)Cochrane Times Post

カナダ・オンタリオ州 コクレーンのホッキョクグマ保護教育文化村 (Polar Bear Conservation and Educational Habitat and Heritage Village – Polar Bear Habitat) が明らかにしたところによりますと、同施設から繁殖のために今年の2月にトロント動物園に移動していた雄のイヌクシュクが無事にトロントでの任務を果たして早ければ今月7月の25日にも再びコクレーンに戻ってくることになったそうです。 このイヌクシュクについては「カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語」という投稿をご参照頂きたいのですが、現在彼は欧州のフェリックスと並んで若手の雄の期待の星であることに間違いありません。 そのイヌクシュクの今年の2月の出張先のトロント動物園での映像を一つご紹介しておきます。



イヌクシュクのコクレーンへの移動には、天気予報によって気温が低くなる日を選んで移動日とするそうで、しかも夜間に移動させるというのですから、やはり気温を考慮に入れてのことだと思われます。 彼の体重は約550キロ近いそうで、やはりこのコクレーンで飼育されている彼の息子であるガヌークの体重が約350キロと父と息子では大きな体重差があるということで、もちろんコクレーンではこの父と息子の同居はさせない方針だとのことです。こういった体の大きさがかなり違う雄2頭の同居はとりわけ危険であるというのがその理由です。
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止_a0151913_1992133.jpg
ミラク Photo(C)Aalborg Zoo/Kapuskasing Times

さて、このコクレーンの保護教育文化村 (Polar Bear Habitat) には先日、「デンマーク ・ オールボー動物園のミラクがカナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村へ!」という投稿でご紹介していますのでまずそれを最初にご参照いただきたいのですが、デンマークのオールボー動物園から4歳半の雄であるミラクが移動してくることをカナダ側のマスコミがすでに報じています。 カナダ政府の輸入許可も発行されたそうです。 具体的なミラクの来園の日程は近く発表されるとのことでした。

ところが一昨日のコクレーン・ホッキョクグマ保護教育文化村がSNSのページで明らかにしているところによりますと、EAZA (欧州動物園水族館協会) のコーディネーターはEEP (European Endangered species Programme) の適用対象個体であるミラクの欧州内で受け入れが可能な施設の選定・検討 (evaluate) を現在行っているという極めて微妙な状況であるようです。 オールボー動物園ではヴィクトリアとマリクという2頭の雌の次の繁殖のためにはミラクを他園に移動させねばならなかったわけです。 その調整についてオールボー動物園はEAZA のコーディネーターの動きのあまりの遅さにしびれを切らしていたようで、私はこれは冗談ではないかとも思いますがミラクを中国に売却することも考慮に入れていたようです。 そしてそういったミラクの中国行きの「危険性」に対して「救いの手」、すなわちミラクを購入する意思を示すことによってミラクの中国行きの「危険性」から救い出そうとしてオールボー動物園に手を差し伸べたのがカナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育文化村であった...諸情報を総合しますと、どうもそれが真実であるようです。 ところが今頃になってEAZA のコーディネーターはEEP を盾にしてミラクの欧州域外流出をなんとか阻止しようと動いているということです。 ミラクがEEP の適用対象個体であっても、やはりオールボー動物園のミラクに対する所有権が優越しますのでオールボー動物園はそのミラクに対する自らの所有権を主張してミラクをコクレーンに売却しようとしており、ミラクのコクレーン行きは目前に迫っているというのが現時点での状況でしょう。 オールボー動物園はここのところEAZAのコーディネーターにかなりの不信感を持っており、今回の件では怒りすら感じているように推察できます。

今にして思えば、実はこのミラクのカナダ・コクレーン行きについてマスコミの報道はあるものの、何事にも情報発信に熱心なコクレーンのホッキョクグマ保護教育文化村がこのミラクの件について今まで一切沈黙を守ってきたというのが実に不思議でした。 つまり、オールボー動物園とコクレーンとの間の契約が土壇場でEAZAの介入によって履行不能に陥る危険性をカナダ側は察知していたということになると思われます。 だからこそ、ミラクの受け入れ(購入)の事実についてカナダ側は沈黙を守らざるを得なかった...そう考えると全て辻褄が合うわけです。

さて、EAZAのコーディネーターはミラクの欧州域外のカナダへの流出を阻止できるでしょうか? これから数日間の事態の推移に注目が集まります。 これはミラクという1頭のホッキョクグマをめぐる人間のドラマであるわけです。

(資料)
Polar Bear Habitat (Jul.16 2013 - Inukshuk Returns)
Cochrane Times Post (Jul.16 2013 - Nuki's coming back)
Kapuskasing Times (Jun.19 2013 - Cochrane Polar Bear Habitat to Get A New Polar Bear)

(過去関連投稿)
カナダでの飼育下期待の星、イヌクシュクの物語
カナダ・トロント動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生! ~ 今シーズン最初の出産ニュース
カナダ ・ トロント動物園でホッキョクグマの三つ子の赤ちゃんが誕生するも全頭死亡!
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村のイヌクシュク、繁殖への期待を担って再びトロント動物園へ
デンマーク ・ オールボー動物園のミラクがカナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村へ!
by polarbearmaniac | 2013-07-18 19:30 | Polarbearology

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