街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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中国・湖北省、武漢市の極地海洋世界での乐乐と静静の近況 ~ ロシア出身個体の血統登録情報の信憑性

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Photo(C)中国新闻网
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Photo(C)和讯网

中国・大連の老虎灘海洋公園で2011年1月7日に誕生し人工哺育で育てられた雄と雌の双子である乐乐と静静については2年前にかなり投稿しました。 明らかにハイブリッドであるこの双子ですが、大連におけるその誕生から天津、そしてさらに成都に移動した後に武漢の極地海洋世界へ移動したところまではずっとその動きを追跡し、そしてこの中国における「異形のホッキョクグマ」、つまりハイブリッドについて考えてきたわけです(過去関連投稿をご参照下さい)。

この乐乐と静静ですが、その後の移動の情報はありませんのでずっと武漢の極地海洋世界で飼育されていたようですが、それほど情報があったわけではありません。 しかし最近、その武漢の極地海洋世界でのこの双子の何枚かの写真がマスコミによって報道されました。 そのうちの2枚が冒頭の写真です。 確かに成長してもハイブリッドである特徴がよく見てとれます。 さらに下に昨年のこの乐乐と静静の映像がありますのでご紹介しておきます。



さて、実はさらにもう一つ、この武漢の極地海洋世界で飼育されている別のホッキョクグマの映像を見つけましたのでご紹介しておきます。 このホッキョクグマはハイブリッドではありませんね。 実はこの下のホッキョクグマの正体は謎に満ちているのです。



この上のハイブリッドではないホッキョクグマの正体の謎を突き止めるためには、まず以前の投稿である「モスクワ動物園のシモーナ(4) ~ 消息不明の息子は何処に? (上)」、「モスクワ動物園のシモーナ(5) ~ 消息不明の息子は何処に? (中)」、「モスクワ動物園のシモーナ(6) ~ 消息不明の息子は何処に? (下)」という3つの投稿を相当に注意深く読んでいただくことをお願いせざるを得ません。 実はこの上の映像のホッキョクグマ(おそらく雌ですね)の正体の探求こそ、実は数日前に私が書きました「血統登録情報を踏み越えていく」ことが要求される、最も難解な領域の話なのです。

この上の以前の3つの投稿の内容について現在の私は些末な細部において幾分は異なる見解を持ってはいるものの、大部分は現在でもこの3つの投稿の内容について同じように考えています。 そしてこの以前の3つの投稿の内容から推論すれば、上の映像の個体は姫路のホクトの双子の妹であるということになるのです。 つまりペルミ動物園のアンデルマの2000年の出産は双子だった(つまりホクトと上の映像の個体)ということになるのですが、血統登録上は1頭だけなのです。 実はその後、私はいろいろな探求を行ったのですが、アンデルマとユーコンの間の最初の子供は1998年に生まれた雄のペルミアクだけであるというのが血統登録情報であるにもかかわらず実はこの時も双子であって雌のロシンカというもう一頭が存在していたわけです。 つまりアンデルマは1998年と2000年の二度にわたって双子を出産し、そしてそのいずれもちゃんと成育しているのです。 ところが血統登録情報によればアンデルマは双子など出産していないことになっているわけです。 一方、私が2011年9月にペルミ動物園を訪問して現地でアップした、「アンデルマ、その年齢を超えた丸顔の美形」という投稿の一番下の写真をご覧下さい。 これはペルミ動物園内に掲示してあったパネルを撮影したものです。 そこに写っているアンデルマは双子に授乳しているのです。 クリックしていただくのも恐縮ですから、もう一度下にアップしておきます。
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血統登録情報によればアンデルマは飼育下では現在まで双子など出産(そして成育)していないことになっているのです。 ところがなんと、ペルミ動物園はこの上の写真に、"Амдерма с медвежатами" (アンデルマと赤ちゃんたち) と複数形でキャプションを入れているわけです。 私はペルミ動物園でこの写真を当時に見た時にはこの双子は2000年に生まれたホクト(姫路)と彼の双子の妹の姿だろうと考えたわけです。 ところがその後の探求で、さらに1998年にもアンデルマはペルミアクとロシンカの双子を産んでいたことが実際に判明し裏付けられたわけで、そうなるとこの写真はペルミアクとロシンカの双子の姿である可能性も出てきたわけです。(*後記 - その後の検証でこの双子はペルミアクとロシンカであることが判明しています。)

ロシアで生まれたホッキョクグマの血統登録情報は不正確な場合がよくあるというです。 血統登録情報が信用できないという決定的証拠がアンデルマが双子に授乳している上の写真なのです。 ですから、この写真のように飼育記録に属する資料、つまり個体の生身に密着した情報のほうを重視せねばならないということです。 先日の「ロシア・西シベリア、ノヴォシビルスク動物園にモスクワ動物園から雄の幼年個体が到着 ~ 謎と暗黒の闇」、及び「ロシア・西シベリア ノヴォシビルスク動物園に移動したモスクワ動物園生まれの幼年個体の姿」という2つの投稿でも述べましたように、血統登録情報では2007年にモスクワ動物園ではムルマお母さんは一頭しか赤ちゃんを産み育てていないはずのに、実際の映像では2頭の赤ちゃんがお披露目になっているのです。 そしてこの2頭はいずれも成育しているのです。 だからロシアの動物園で生まれた個体の血統登録など信用できないということなのです。

ロシアといい中国といい、実に厄介な国です。 再度繰り返しますが、ホッキョクグマ繁殖検討委員会の初代座長だった旭山動物園のF さん(すでに旭山動物園を退職されていらっいますが)、あの方はこういったいくつかある最も難解な「ロシアのホッキョクグマの謎」のうちでイワンとゴーゴの件についてモスクワ動物園やペルミ動物園に真っ向から挑みかかり、見事に正解(真実)を導き出したのです。 大きな賞賛に値すると言えましょう。

(資料)
和讯网 (Jul.14 2013)
中国新闻网 (Jul.13 2013)

(過去関連投稿)
中国・大連、老虎灘海洋公園の極地海洋館でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生!
中国における「異形のホッキョクグマ」の存在
中国・大連のホッキョクグマの赤ちゃん順調な生育で一般公開へ
中国・大連、極地海洋館の双子の赤ちゃんの最新の写真 ~ 9月に武漢の新施設へ移動決定
中国・大連、極地海洋館の双子ちゃん、やはり「異形のホッキョクグマ」への道を歩む ~ 遺伝子操作か?
中国・大連のホッキョクグマの双子、天津の施設へ移動 ~ 異形の乐乐、静静そして淘淘のこと
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中国・大連生まれの人工哺育の双子の乐乐と静静が今度は成都から武漢へ ~ 多すぎる移動の不可解さ
モスクワ動物園のシモーナ(4) ~ 消息不明の息子は何処に? (上)
モスクワ動物園のシモーナ(5) ~ 消息不明の息子は何処に? (中)
モスクワ動物園のシモーナ(6) ~ 消息不明の息子は何処に? (下)
アンデルマ、その年齢を超えた丸顔の美形
by polarbearmaniac | 2013-07-20 06:00 | Polarbearology

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