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街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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フィンランド・ラヌア動物園のランツォの入手を狙う日本の動物園 ~ 「ダメで元々」の精神か?

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ランツォ Photo(C)Ranua Zoo

フィンランドのラヌア動物園で一昨年2011年の11月18日にヴィーナスお母さんから生まれた雄のランツォはすでに一歳八か月になっています。 このランツォについてはその誕生から成長を追いかけて昨年は多くの投稿をしました。 このランツォはおそらく今年の暮れにはヴィーナスお母さんに別れを告げて旅立たねばならない時期がやってくるわけで (*追記 - 報道では「来春」ということが報じられていますが)、それはヴィーナスお母さんが来年には次の繁殖に向けての挑戦を行うということと同じ意味を持つわけです。 このランツォの移動先について、ラヌア動物園の園長さんがEAZAのコーディネーターの調整に先んじて自らイニシアティブをとって選定を行っている件については前回の「フィンランド・ラヌア動物園が腐心する1歳半のランツォの移動先選定 ~ 個体移動調整と所有権との関係」をご参照ください。
フィンランド・ラヌア動物園のランツォの入手を狙う日本の動物園 ~ 「ダメで元々」の精神か?_a0151913_23334381.jpg
Photo(C)Ranua Zoo

さて、2日ほど前にフィンランドのマスコミが伝えるラヌア動物園の園長さんの興味深い話が出ていました。 それによりますと、このランツォについて日本の動物園から問い合わせがあったそうです。 つまりランツォを入手できないかということです。 まだ2歳にもならない雄 (オス)の個体を入手したいというのが日本のいったいどこの動物園なのかを考えてみましたが非常に考えにくいですね。 上野動物園がこのランツォをデアのパートナーにしようなどとは、第一に年齢的に開きがありますから考えてはいないはずです。 それに上野動物園ではデアの入手にからんで、EEPについては十分な知識を得ているものと思われますので、ランツォの入手を狙うということの困難さを熟知しているはずです。 円山動物園がアイラのパートナーとしてランツォの入手を狙うということであれば、ランツォは年齢的にアイラにピッタリです。 しかし、これもないでしょう。 何故なら円山動物園は現在、ホッキョクグマの新施設建設計画に着手している段階で、現時点ではランツォの入手を考えるような労力的な余裕はないからです。 そもそも欧州の個体はEEP の枠内で繁殖を担うわけで欧州域外には出さないというのがEAZA の方針です。 それでも先日、「カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止」 という投稿でご紹介していますように幼年・若年個体の所有権を主張してカナダに若年個体を売却しようとしているデンマークのオールボー動物園のような場合もあるにはありますが、それは極めて例外的な場合でしょう。
フィンランド・ラヌア動物園のランツォの入手を狙う日本の動物園 ~ 「ダメで元々」の精神か?_a0151913_0343471.jpg
Photo(C)Ranua Zoo

つまりその日本の動物園は、そういった欧州内におけるホッキョクグマの繁殖計画の存在を知らずにラヌア動物園に問い合わせをしてきたということでしょうか。 知っていたとしても、ダメで元々と考えてのことでしょうか。 それとも、オールボー動物園の場合のようにラヌア動物園にEAZAに対してランツォの所有権を主張してもらうことによっての売買ならばEEPの壁を突破することが可能と考えたということでしょうか。 私が想像するに、やはりダメで元々と考えてのことでしょう。 ノルウェー政府が行っているホッキョクグマ保護政策を知ってか知らずか、ノルウェー政府に野生のホッキョクグマを捕獲して(しかも性別や年齢の指定までして)日本に送ってほしいというような依頼した日本の動物園すら存在したわけですから、ダメで元々ならば何でも言えるというわけです。

ラヌア動物園でヴィーナスお母さんとランツォが暮らす飼育場は1800平方メートルあるそうです。 その他に雄のマナッセが単独で暮らしている飼育場もそれに匹敵する広さが確保されていたと記憶しています。 ラヌア動物園の園長さんは、フィンランドで初めて飼育下でのホッキョクグマの自然繁殖に成功して誕生したこのランツォの移動先を、なんとか環境の優れた動物園であってほしいと願い苦闘しているわけですが、ランツォは欧州域内に留まるだろうと語っています。 ということはランツォはEEPの枠内で将来繁殖を担わせる個体であると認識しており、欧州域外への売却の意思は無いということを意味します。 ラヌア動物園の園長さんが、「早く欧州内でこのランツォを引き受ける動物園が現れてくれないとランツォは日本に行くことになりますよ。」と言ってEAZAのコーディネーターにブラフをかけたと考えられなくもありません。 しかしそれならば日本よりも中国の名前を挙げたほうが効果的でしょう。 それから園長さんが、カナダの動物園からも問い合わせがあったと言っていることからも、日本の名前をEAZAとの駆け引きのために持ち出したというわけではなさそうです。 となれば、やはり日本のどこかの動物園がランツォの入手を狙っていることだけは事実だと思われます。 しかし、成功の見込みはまずないと言ってよいでしょう。 「ダメで元々」...まさにそういうことでしょう。

(資料)
Kaleva.fi (Jul.21 2013 - Ranzo kasvaa vauhdilla)

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by polarbearmaniac | 2013-07-23 23:30 | Polarbearology

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