街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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野生のホッキョクグマの脳組織から有毒物質が検出 ~ 新たなる脅威が明らかになる

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カイ (2013年2月2日撮影 於 仙台市・八木山動物公園)

近代の幕開けを告げた18~19世紀の産業革命以来、工業化に伴って生じたさまざまな物質が地球上の大気、海洋、地上に拡散・廃棄・吸収され続けており、それらの人為的に作り出された物質は程度の差こそあれ地球上の生物にとっては多くの有害な影響をもたらせ続けているわけです。 このたびデンマークとカナダの研究者が共同して行った調査の報告 (“Brain region distribution and patterns of bioaccumulative perfluoroalkyl carboxylates and sulfonates in east greenland polar bears”) において、クリーンランド東部に生息していた8頭の野生のホッキョクグマの脳組織を調べてきたところ、有毒性物質である高濃度のPFAS (ペルフルオロアルキルスルホン酸) の存在が確認されたことが判明したと報じられています。
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ホッキョクグマの脳 (C)Aarhus University

このPFASは、ここ60年ほどにわたって界面活性剤として多方面で利用されているものですが今回、食物連鎖のほぼ最上位にあるホッキョクグマの脳組織からこの物質が検出されたことにより、事態は予想以上に深刻であることが推定できることになります。この物質は遺伝子の突然変異や悪性腫瘍をもたらす可能性があり、また神経系、内分泌器、免疫系に対する悪影響を与える要因となるそうです。

こういった事実は食物連鎖のほぼ最上位にあるがために有害物質が濃縮された形で頭部に蓄積されつつあるホッキョクグマにとってのさらなる脅威と言えるだけでなく、やはり食物連鎖の最上位に位置付けされる人間にとっても脅威であることが指摘されています。 それは、ホッキョクグマにおいてこの有毒性を持つ有害物質が血液脳関門 (blood-brain barrier) を通過できるということは、すなわち人間においてもそうであるだろうということを研究者は述べています。 そもそもPFASはこういった有害性が指摘されたために欧米などの先進国の産業界では生産去れなくなったわけですが、中国では依然として生産されているそうで、まだ当分は世界から無くなるということはないようです。

(資料)
NCBI (Brain region distribution and patterns of bioaccumulative perfluoroalkyl carboxylates and sulfonates in east greenland polar bears )
UPI (Jul. 23 2013 - Study: Brains of arctic polar bears show signs of environmental toxins)
Science Daily (Jul.23 2013 - Environmental Toxins Enter the Brain Tissue of Polar Bears)
EurekAlert.org (Jul.23 2013 - Environmental toxins enter the brain tissue of polar bears)
Science World Report (Jul.23 2013 - Environmental Toxins Discovered in Polar Bear Brains: Chemical Danger for Wildlife)
by polarbearmaniac | 2013-07-24 17:00 | Polarbearology

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