街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

ポーランド・ワルシャワ動物園のグレゴールとアレウト ~ 飼育環境の改善への期待と同園の今後の役割

a0151913_38405.jpg
グレゴールとアレウト 
Photo(C) Miejski Ogród Zoologiczny w Warszawie

ドイツ・ニュルンベルク動物園で2010年の12月2日にヴェラお母さんが産んだグレゴールとアレウトの雄の双子の兄弟が、ヴェラお母さんが次の繁殖に備えるために今年の4月にポーランドのワルシャワ動物園に移動した件についてはすでに投稿していますので過去関連投稿をご参照下さい。 このグレゴールとアレウトの双子の移動先施設選定についてもEAZAのコーディネーターが相当に苦労していたようですが、飼育環境としては理想的とは言えませんが (飼育展示場にコンクリート部分が非常に多いのが一番の欠点でしょう)、なんとかこうしてワルシャワ動物園に落ち着いたというわけです。 そういった彼らの姿を伝える映像をいくつかご紹介しておきます。







ホッキョクグマが戻ってきたワルシャワ動物園ですが、その飼育環境について早速、強い批判の声も存在するようです。 ポーランドの Bear Project という団体(とはいってもメンバーはたった二人だそうですが)は、「ワルシャワ動物園ではホッキョクグマを飼育すべきではない」と主張しています。 彼らはその主な理由を三つ挙げています。

A. 500㎡しかないこの飼育場は、そもそもホッキョクグマを飼育するには十分ではない。(少なくとも2~3000㎡ が必要である。)

B. ワルシャワの夏の気温はホッキョクグマには高すぎる。(エアコンとプールの水冷システムが必要である。)

C. 自然環境保護法 (Nature Conservation Act) の72条 (「動物園は生物学的要求を十分満たす条件を実現できる種だけを飼育できる」) に違反している。

こういう動物保護活動家は動物園の不備を指摘して批判しさえすればいい話ですから気楽なものです。 そういった彼らの上の主張を全て満たす動物園などほとんど存在しえないでしょう。 まず上のAですが、ニュルンベルク動物園の飼育展示場は2300㎡(600㎡のプールを含む)でありワルシャワ動物園は彼らの主張によれば500㎡だそうですから確かに狭い場所に来たとは言えますが、あのマニトバ基準ですら広さの最低要件は似たようなものですからワルシャワ動物園の飼育展示場自体がひどく狭いとは言い切れません。 スウェーデン独自の国内基準ではホッキョクグマ一頭当たりの最低必要飼育面積は1500㎡ だそうですが、そういった例を引き合いに出してワルシャワ動物園の飼育展示場は狭いと批判するのはどうでしょうか。 ましてやグレゴールとアレウトを引き受ける十分な環境のある動物園が西欧になかったために彼らはEAZAのコーディネーターの調整とニュルンベルク動物園の同意のもとでワルシャワ動物園に来たわけですからこういった批判は当たらないと言ってよいでしょう。

B については、ワルシャワの夏の最高平均気温ニュルンベルクの夏の最高平均気温よりずっと低いですから、こういった批判はあたりません。 また、彼らはカナダのチャーチルの平均気温を引き合いに出してワルシャワの気温と比較していますが適切な例とはいえません。

C については、ワルシャワ動物園では過去にホッキョクグマを長く飼育してきた歴史がありますし、そのノウハウがありますから批判には当たらないでしょう。
a0151913_3132422.jpg
Photo(C) Miejski Ogród Zoologiczny w Warszawie

要するに難癖をつけるために必死になって批判しているようで滑稽な話です。 しかし、シンガポールやオーストラリアの小生意気な保護活動家の主張に比べればポーランドの保護活動家は実に可愛らしいものです。 私がワルシャワ動物園を2009年に訪問した際にはホッキョクグマはもう飼育されていませんでしたが、私の見た限りでは確かに他の欧州のホッキョクグマを飼育している動物園の展示場よりははるかに貧弱でした。そうですねえ...男鹿水族館や上野動物園と同レベル程度だろうと思います。 ワルシャワ動物園の園長さんはこの Bear Project という(たった二人の)団体に反論していますが、それによればワルシャワ動物園のホッキョクグマ飼育展示場は 560㎡ だそうで、そのうちプールが230㎡ だそうです。 園長さんによればEAZAの基準では幼年個体(園長さんはこれを一頭なのかそれともペアなのかについては言及していません)に要求される地表面積は300㎡ でありプールは70㎡であると言っていますが、そうするとワルシャワ動物園の飼育展示場は面積だけに関するならばEAZAの基準を下回っているとは言えないように思います。 さらに園長さんは、ホッキョクグマ展示場と隣のヒグマの展示場を工事によって合体させることによってホッキョクグマ展示場を1000㎡ にする計画だと言っています。
a0151913_3244717.jpg
Photo(C) Miejski Ogród Zoologiczny w Warszawie

とにかく、現在の環境を改良していく予定だそうですからワルシャワ動物園の飼育環境は改善されていくでしょう。 園長さんの言うには、グレゴールとアレウトには4人の飼育員さんが担当していていつもプールの水の状態をチェックし、グレゴールとアレウトの体調管理については特に配慮しているそうです。一度ホッキョクグマがいなくなってしまったワルシャワ動物園ですが、こうして再びホッキョクグマが戻ってきたわけですし、園長さんはEEP を担っていく動物園でありたいと飼育環境の改善計画を実行に移すために大きな抱負を胸に抱いているようです。
a0151913_3245856.jpg
Photo(C) Miejski Ogród Zoologiczny w Warszawie

さて、こうしてワルシャワ動物園を当面の落ち着き先としたグレゴールとアレウトですが、この先もずっとワルシャワ動物園で飼育され続けるかといえばそうではないでしょう。 雄の双子ですから、どちらかがパートナーを得れば他の一方は移動が不可欠となります。 そもそもこのワルシャワ動物園で繁殖を試みるということ自体をEAZAのコーディネーターやニュルンベルク動物園が当初から想定しているとも考えにくく、このワルシャワ動物園は当分は中継基地としての役割を担っていくことになるでしょう。

(資料)
BearProject (Niedźwiedzie polarne w zoo w Warszawie)
tvn warszawa (May.20 2013 - Dyrektor zoo zapewnia: niedźwiedzie są w dobrych rękach)

(過去関連投稿)
ドイツ・ニュルンベルク動物園でホッキョクグマの双子の赤ちゃん誕生!
ドイツ・ニュルンベルク動物園の生後6週目に入った赤ちゃんの映像
ドイツ・ニュルンベルク動物園、育児に奮闘中のヴェラお母さんに遂に食事を与える
ドイツ・ニュルンベルク動物園の双子の赤ちゃんの性別判明 ~ グレゴールとアロイトの予防接種
ドイツ・ニュルンベルク動物園の双子の赤ちゃん、遂に戸外へ!
ニュルンベルク動物園到着!
ヴェラお母さんの性格と子育て
グレゴールとアレウトの双子の性格の差
ヴェラお母さんの食べる物は全部欲しがるグレゴールとアレウト
ドイツ・ニュルンベルク動物園のグレゴールとアレウトの最近の様子 ~ ヴェラお母さんにも変化の兆し?
ドイツ・ニュルンベルク動物園のグレゴールとアレウトの双子の移動先調整にEAZAが難航?
ポーランド ・ ヴロツワフ動物園のシニェシュカとの告別 ~ 最初で最後のホッキョクグマとの別れの哀感
ドイツ・ニュルンベルク動物園の双子の兄弟、グレゴールとアレウトがポーランド・ワルシャワ動物園へ!
ポーランド・ワルシャワ動物園に到着したグレゴールとアレウトの双子兄弟の近況
by polarbearmaniac | 2013-08-10 23:45 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

アメリカ・トレド動物園のホー..
at 2017-09-26 10:00
ロシア北東部の内陸をさまよう..
at 2017-09-26 03:00
ウクライナ・ハリコフ動物園の..
at 2017-09-25 03:00
ロシア北東部サハ共和国で北極..
at 2017-09-23 22:00
ロシア・ペルミ動物園が間もな..
at 2017-09-23 00:30
大阪・天王寺動物園がゴーゴの..
at 2017-09-22 01:00
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2017-09-21 01:00
アメリカ・オレゴン動物園のノ..
at 2017-09-21 00:30
ピョートル(ロッシー)とクラ..
at 2017-09-20 06:00
ロシアのサーカス団の4頭のホ..
at 2017-09-20 00:30

以前の記事

2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Lenin's Tomb: The Last Days of the Soviet Empire


Resurrection: The Struggle for a New Russia


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag