街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum
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ポーランド・ワルシャワ動物園のグレゴールとアレウト ~ 飼育環境の改善への期待と同園の今後の役割
Photo(C) Miejski Ogród Zoologiczny w Warszawie
ドイツ・ニュルンベルク動物園で2010年の12月2日にヴェラお母さんが産んだグレゴールとアレウトの雄の双子の兄弟が、ヴェラお母さんが次の繁殖に備えるために今年の4月にポーランドのワルシャワ動物園に移動した件についてはすでに投稿していますので過去関連投稿をご参照下さい。 このグレゴールとアレウトの双子の移動先施設選定についてもEAZAのコーディネーターが相当に苦労していたようですが、飼育環境としては理想的とは言えませんが (飼育展示場にコンクリート部分が非常に多いのが一番の欠点でしょう)、なんとかこうしてワルシャワ動物園に落ち着いたというわけです。 そういった彼らの姿を伝える映像をいくつかご紹介しておきます。
ホッキョクグマが戻ってきたワルシャワ動物園ですが、その飼育環境について早速、強い批判の声も存在するようです。 ポーランドの Bear Project という団体(とはいってもメンバーはたった二人だそうですが)は、「ワルシャワ動物園ではホッキョクグマを飼育すべきではない」と主張しています。 彼らはその主な理由を三つ挙げています。
A. 500㎡しかないこの飼育場は、そもそもホッキョクグマを飼育するには十分ではない。(少なくとも2~3000㎡ が必要である。)
B. ワルシャワの夏の気温はホッキョクグマには高すぎる。(エアコンとプールの水冷システムが必要である。)
C. 自然環境保護法 (Nature Conservation Act) の72条 (「動物園は生物学的要求を十分満たす条件を実現できる種だけを飼育できる」) に違反している。
こういう動物保護活動家は動物園の不備を指摘して批判しさえすればいい話ですから気楽なものです。 そういった彼らの上の主張を全て満たす動物園などほとんど存在しえないでしょう。 まず上のAですが、ニュルンベルク動物園の飼育展示場は2300㎡(600㎡のプールを含む)でありワルシャワ動物園は彼らの主張によれば500㎡だそうですから確かに狭い場所に来たとは言えますが、あのマニトバ基準ですら広さの最低要件は似たようなものですからワルシャワ動物園の飼育展示場自体がひどく狭いとは言い切れません。 スウェーデン独自の国内基準ではホッキョクグマ一頭当たりの最低必要飼育面積は1500㎡ だそうですが、そういった例を引き合いに出してワルシャワ動物園の飼育展示場は狭いと批判するのはどうでしょうか。 ましてやグレゴールとアレウトを引き受ける十分な環境のある動物園が西欧になかったために彼らはEAZAのコーディネーターの調整とニュルンベルク動物園の同意のもとでワルシャワ動物園に来たわけですからこういった批判は当たらないと言ってよいでしょう。
B については、ワルシャワの夏の最高平均気温はニュルンベルクの夏の最高平均気温よりずっと低いですから、こういった批判はあたりません。 また、彼らはカナダのチャーチルの平均気温を引き合いに出してワルシャワの気温と比較していますが適切な例とはいえません。
C については、ワルシャワ動物園では過去にホッキョクグマを長く飼育してきた歴史がありますし、そのノウハウがありますから批判には当たらないでしょう。
要するに難癖をつけるために必死になって批判しているようで滑稽な話です。 しかし、シンガポールやオーストラリアの小生意気な保護活動家の主張に比べればポーランドの保護活動家は実に可愛らしいものです。 私がワルシャワ動物園を2009年に訪問した際にはホッキョクグマはもう飼育されていませんでしたが、私の見た限りでは確かに他の欧州のホッキョクグマを飼育している動物園の展示場よりははるかに貧弱でした。そうですねえ...男鹿水族館や上野動物園と同レベル程度だろうと思います。 ワルシャワ動物園の園長さんはこの Bear Project という(たった二人の)団体に反論していますが、それによればワルシャワ動物園のホッキョクグマ飼育展示場は 560㎡ だそうで、そのうちプールが230㎡ だそうです。 園長さんによればEAZAの基準では幼年個体(園長さんはこれを一頭なのかそれともペアなのかについては言及していません)に要求される地表面積は300㎡ でありプールは70㎡であると言っていますが、そうするとワルシャワ動物園の飼育展示場は面積だけに関するならばEAZAの基準を下回っているとは言えないように思います。 さらに園長さんは、ホッキョクグマ展示場と隣のヒグマの展示場を工事によって合体させることによってホッキョクグマ展示場を1000㎡ にする計画だと言っています。
とにかく、現在の環境を改良していく予定だそうですからワルシャワ動物園の飼育環境は改善されていくでしょう。 園長さんの言うには、グレゴールとアレウトには4人の飼育員さんが担当していていつもプールの水の状態をチェックし、グレゴールとアレウトの体調管理については特に配慮しているそうです。一度ホッキョクグマがいなくなってしまったワルシャワ動物園ですが、こうして再びホッキョクグマが戻ってきたわけですし、園長さんはEEP を担っていく動物園でありたいと飼育環境の改善計画を実行に移すために大きな抱負を胸に抱いているようです。
さて、こうしてワルシャワ動物園を当面の落ち着き先としたグレゴールとアレウトですが、この先もずっとワルシャワ動物園で飼育され続けるかといえばそうではないでしょう。 雄の双子ですから、どちらかがパートナーを得れば他の一方は移動が不可欠となります。 そもそもこのワルシャワ動物園で繁殖を試みるということ自体をEAZAのコーディネーターやニュルンベルク動物園が当初から想定しているとも考えにくく、このワルシャワ動物園は当分は中継基地としての役割を担っていくことになるでしょう。
(資料)
BearProject (Niedźwiedzie polarne w zoo w Warszawie)
tvn warszawa (May.20 2013 - Dyrektor zoo zapewnia: niedźwiedzie są w dobrych rękach)
(過去関連投稿)
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ポーランド・ワルシャワ動物園に到着したグレゴールとアレウトの双子兄弟の近況
by polarbearmaniac
| 2013-08-10 23:45
| Polarbearology
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