街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ドイツ・ベルリン動物公園のトーニャのパートナーとしてモスクワから到着した「謎の幼年個体」の正体は?

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トーニャ (2013年1月2日撮影 於 旧東ベルリン、ベルリン動物公園)
Nikon D5200
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

さて、実に不可解、かつ興味深い情報が報道されています。それは旧東ベルリンのベルリン動物公園にロシアから一頭の雄の幼年個体すでに到着しているという報道です。旧西ベルリンのベルリン動物園 (Zoologischer Garten Berlin) と旧東ベルリン、フリードリヒスフェルデのベルリン動物公園 (Tierpark Berlin) は一元的に経営されていますので、どちらの施設もその園長はこのブログでも何度がご紹介したことのあるベルンハルト・ブラスキエヴィッツ氏です。 このブラスキエヴィッツ氏がマスコミ取材に対して明らかにしたところによりますと、この雄の幼年個体はモスクワ動物園からやってきて間もなく2歳になり、まだ名前はないということと、この幼年個体の導入については動物園間での動物交換の一環としてなされているために購入費用はかかっていないと語っています。
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ブラスキエヴィッツ園長 Photo(C)dpa

報道の伝えるモスクワからの情報によれば輸送費は8000ユーロ(約95万円)だったそうです。 実は50万ユーロ(約6000万円)が購入費用として支払われたのではないかという一部の憶測については当事者(モスクワ動物園)によって否定されています。 この50万ユーロという数字がドイツで憶測された理由は、日本における例の件での数字が海外に広く流布していることの表れでしょう。 それからブラスキエヴィッツ園長自身が直接は語ってはいないようですが、今回ベルリンに到着した雄の幼年個体は当然、元来はクヌートのパートナーとなるべく予定されていたものの、クヌートの死後になってからベルリンに到着した2009年11月にモスクワ動物園で生まれたあのトーニャの新しいパートナーとして導入されたことはほぼ間違いないでしょう。 旧東側のベルリン公園は入園者が少ないために、そこへのテコ入れといった意味もあるでしょう。 こういった点についてはドイツの報道の言っている通りだと思われます。

さて、実はここからが重大な問題です。今回ベルリン動物公園に移動してきた雄の幼年個体はいったい何者なのかということです。 ドイツにおけるホッキョクグマ報道としては情報量の多い B.Z.紙は、一昨年の11月にモスクワ動物園で生まれた三つ子のうちの雄の一頭であると報道しています。年齢的にはまさにピッタリです。 つまりシモーナお母さんの息子ということになります。 ということはつまり、「冒険家ちゃん」と「慎重派ちゃん」のどちらかということになります。 しかし、ブラスキエヴィッツ園長は現時点では今回ベルリンに到着した雄の幼年個体が三つ子の一頭であるとは明言していないようです。 ですから、現時点でB.Z.紙がそう伝えていることは同紙の推測に基づいていると言ってよいでしょう。 そしてこの雄の幼年個体をトーニャのパートナーにするということも確実だろうと考えられるものの現時点に関する限りではまだ推測です。
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トーニャ (2013年1月2日撮影 於 旧東ベルリン、ベルリン動物公園)
Nikon D5200
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

さて、もし今まで注意深くこのブログを読んでいただいた方にはもう気が付かれているかと思いますが、モスクワ動物園の三つ子の母親はシモーナ、父親はウランゲリです。 そしてベルリン動物公園のトーニャの母親もシモーナ、父親もウランゲリです。 つまりベルリン動物公園のトーニャとモスクワ動物園の三つ子とは両親が同じ姉弟にあたるわけです。 B.Z.紙がそれを知らずに報道していることは明らかです。 また、もしB.Z.紙の報道が事実であるならブラスキエヴィッツ園長はトーニャとモスクワの三つ子との間の血統関係に無関心であることを示していることになります。

さて、実はモスクワ動物園で一昨年暮れに誕生した雄の個体はもう一頭いるわけです。 その雄の幼年個体こそ、先日私が「ロシア、西シベリアのノヴォシビルスク動物園にモスクワからやってきた 『謎の幼年個体』の正体は?」という投稿でご紹介しているムルマお母さんの産んだ息子が存在しているわけです。 そうなると、今回ベルリン動物公園に到着した雄の幼年個体はムルマお母さんの産んだ息子であると考える方がはるかに自然でしょう。 このモスクワ動物園によって秘匿されていたムルマお母さんの息子についてはB.Z.紙を含むドイツのマスコミは全然情報を持っていないようです。 ただしかし、このノヴォシビルスク動物園に預けられているムルマお母さんの息子ですが現時点でもノヴォシビルスク動物園で待機中であるという情報をドイツのホッキョクグマファンの方が把握しています。 そうなると、この今回ベルリンに到着した雄の幼年個体はトーニャのパートナーとなるべく、ベルリンにやってきたという前提条件そのものを否定しないと理解ができなくなります。 あるいは本当にこの前提条件を否定して理解するにが正しいのかもしれません。

金曜日にベルリン動物公園でこの雄の幼年個体がお披露目になる予定のようです。 その姿に注目したいと思います。

(*追記 - 実は、もう一つだけ今回の「謎の幼年個体の謎」を説明しうる仮説が存在します。 それは、モスクワ側からベルリン側へ事実とは異なる情報が流されているのではないかという仮説です。 実際はシモーナの息子であるにもかかわらず、これをムルマの息子であるとして今回の幼年個体をベルリン側に引き渡したという可能性です。 仮にモスクワ側が故意にそれをやったとしますと、以前にも申し上げましたように、モスクワ側には血統を偽って個体を外国に出しているのではないかという疑惑をさらにここで裏付けることとなるでしょう。 今回の件の推移を注意深く追っていく必要があります。)

(*追記2 - 以下のモスクワ動物園での映像はいつ撮影されたのかが不明ですが、公開されたのは8月11日です。 映っているにはシモーナお母さんと2頭の子供たちです。 三つ子であるはずなのに一頭の姿は確認できません。 そしてこの親子は広い上の展示場からやや狭い下の展示場に移動していることがわかります。 つまり、2012年3月に一般公開されたときの展示場に戻っているわけです。 これから考えますと、今回ベルリンに到着した幼年個体はやはりシモーナお母さんの産んだ三つ子の一頭ではないかと推察されます。 しかし断言は難しいと思います、)



(資料)
Sterne (Aug.20 2013 - Berlin hat einen neuen Eisbären)
BZ (Aug.20 2013 - Russen-Bär Hier krabbelt Berlins neuer Knut herum)
Berliner Morgenpost (Aug.20 2013 - Nach Knut - Berlin hat wieder einen neuen Eisbär)
Rundfunk Berlin-Brandenburg (Aug.20 2013 - Berliner Tierpark hat einen neuen Eisbären)

(過去関連投稿)
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ロシア、西シベリアのノヴォシビルスク動物園にモスクワからやってきた 「謎の幼年個体」 の正体は?
by polarbearmaniac | 2013-08-21 16:00 | Polarbearology

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