街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ベルリン動物公園のトーニャと「謎の幼年個体」との間の繁殖は姉弟間の近親交配との大きな批判起きる

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トーニャ (2013年1月2日撮影 於 旧東ベルリン、ベルリン動物公園)
Nikon D5200
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR
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モスクワ動物園の三つ子 (2012年9月23日撮影 於 モスクワ動物園)
Nikon D5100
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

このひとつ前の投稿でご紹介したモスクワから到着した「謎の幼年個体」に対して、やはり予想していた通り早々とドイツ国内の動物保護団体から大きな批判の声が上がっていることをヴェルト (Die Welt) 紙、ベルリンモルゲンポスト(Berliner Morgenpost) 紙、及び B.Z.紙が早速報じています。 現在、旧東ベルリンのベルリン動物公園 (Tierpark Berlin) で飼育されている間もなく4歳になる雌のトーニャと今回モスクワから到着した間もなく2歳になる雄の幼年個体との間での繁殖は姉弟の間での近親交配 (Inzucht) となり種の保護に反することであり、さらに動物福祉法 (Tierschutzgesetz) にも違反するという批判です。 現時点ではベルリン動物公園はまだこの個体の存在を公式に発表したわけではなくブラスキエヴィッツ園長がマスコミに断片的な情報を語っただけの段階ですが、この個体の存在が公式に公表され、そして姉弟とわかっていて将来の繁殖を行わせる意向でも明らかになれは、EAZA 内部からも批判が出ることは必至でしょう。 EAZA のコーディネーターは苦心惨憺して欧州域内の飼育下のホッキョクグマの血統の多様性を維持しようとしてかなり成果をあげている一方で、ベルリン動物公園がこのような形で安易に繁殖を狙うとすればベルリン動物園(及び経営が一体であるベルリン動物園) はかなり厳しい状況になるでしょう。 日本のホッキョクグマに当てはめれば、これはピリカとイコロ、アイラとキロルとの間で繁殖を狙うということと全く同じ意味となるわけです。
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シモーナ (2009年生まれのトーニャと2011年生まれの三つ子の母)
(2012年9月23日撮影 於 モスクワ動物園)
Nikon D5100
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

さて、こういったドイツ国内からの批判が成立するためには以下の2つが前提条件となります。 仮にこの2つが共に正しければ今回湧きあがっている批判は正しいということになります。

(A)「謎の幼年個体」はモスクワ動物園で2011年11月にシモーナの産んだ三つ子の一頭である。

(B)「謎の幼年個体」はベルリン動物公園のトーニャのパートナーとなり、将来繁殖を目指す。

さて、(A)についてですが、これが正しいためには本当に現在、シベリアのノヴォシビルスク動物園にまだムルマお母さんの息子である「謎の個体」が依然として待機中であるという情報が本当に正しいかどうかが問題となります。 ノヴォシビルスク動物園自身は「待機中」 だと言っているそうです。 私の感じでは、それは事実ではないかと思っていますが、根拠があるわけではありません。 そしてベルリン動物公園のブラスキエヴィッツ園長は、このベルリンに到着した「謎の幼年個体」をモスクワ動物園の三つ子の一頭であると認める発言はしていません。 しかし、この一つ前の投稿の「追記」でご紹介した映像などを見ると、モスクワ動物園の三つ子は一頭が欠けてしまっているように見えます。 こういったことの全体から推察すれば、(A)は正しい可能性が強いように思われます。

次に(B)についてですが、これもブラスキエヴィッツ園長は自身がそう発言しているわけではありません。 今回の雄の「謎の幼年個体」を欧州内の動物園の別の雄の個体と交換し、そしてそれをトーニャのパートナーにしようという考え方は当然、十分に成立するでしょう。 ですので(B)は現時点では正しいとも正しくないとも断言できない状態です。

ベルリン動物公園では金曜日の午前11時にこのモスクワから来た「謎の幼年個体」を飼育展示場に出してお披露目を行い、その際に「近親交配」という批判に対して回答のコメントを行う予定だそうです。 私は多分、ブラスキエヴィッツ園長は上の(A)は認めるものの(B)を認めないことで批判に対応するのではないかと思います。 しかし最悪のシナリオは次のようなものでしょう。 それは、モスクワ側からの情報では「謎の幼年個体」の母親はムルマであってシモーナではないからトーニャとの繁殖は近親交配にならないと主張して実際にこの2頭での繁殖を試みるというシナリオです。 この最悪のシナリオに突き進むとすれば、それはモスクワ側がこの「謎の幼年個体」の血統に関して事実とは異なる血統情報をベルリン側に伝え、それをベルリン側が信じているということを意味します。 仮にそうなるとすればモスクワ側がまさに、故意でそうした偽りの血統情報を国外の動物園に流しているという、今までもあった強い疑惑が現実のものであることを示すことになるわけです。 これについては、「ロシア・西シベリア、ノヴォシビルスク動物園にモスクワ動物園から雄の幼年個体が到着 ~ 謎と暗黒の闇」 という投稿を再度、御参照願います。
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モスクワ動物園の三つ子 (2012年9月23日撮影 於 モスクワ動物園)
Nikon D5100
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

世界の飼育下のホッキョクグマ界においてこの今回の件ほど近年では興味深い状況は滅多にないかもしれません。 私自身はトーニャには2010年5月と7月にモスクワで、そして今年の1月のベルリンで会っています。 シモーナの産んだ三つ子には2012年の3月と9月にモスクワで会っています。 彼らには札幌のララの子供たちに匹敵するほどの親しみを感じているわけで、今回の件はそういった意味でも非常に心配しているわけです。

金曜日のベルリン動物公園のブラスキエヴィッツ園長の反論に注目が集まります。 私の予想では(B)を否定するということで落ち着くのではないかと思います。 現時点では、「近親交配」への批判に対してブラスキエヴィッツ園長もホッキョクグマ担当者もノーコメントという状態だそうです。 すべては金曜日の公式発表とお披露目を待つのみです。

(資料)
Die Welt (Aug,21 2013 – Inzucht befürchtet)
Berliner Morgenpost (Aug.21 2013 - Neuer Eisbär - Tierschützer befürchten Inzucht im Tierpark Berlin)
BZ (Aug.21 2013 - Zeugt Russen-Knut mit Schwester Eisbären? )

(過去関連投稿)
雌の入手を求めてペルミ動物園を訪問したベルリン動物園のブラスキエヴィッツ園長
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ロシア・西シベリア ノヴォシビルスク動物園に移動したモスクワ動物園生まれの幼年個体の姿
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ドイツ・ベルリン動物公園のトーニャのパートナーとしてモスクワから到着した「謎の幼年個体」の正体は?
by polarbearmaniac | 2013-08-22 01:00 | Polarbearology

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