街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


by polarbearmaniac

プロフィールを見る

女帝ウスラーダとシモーナ、コーラ、リアの三頭の娘たち ~ 偉大な母親たちの三代の系譜

a0151913_1425251.jpg
ウスラーダお母さん (2011年8月26日撮影 於 サンクトペテルブルク、レニングラード動物園) Nikon D7000
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダと言えば、今更何をご紹介するまでもないホッキョクグマ界の巨人です。 現在、世界のホッキョクグマ界にあって雌としては最高の地位に君臨していることは言うまでもありません。 このブログでも今まで何度もご紹介してきました。 私個人は彼女のことを「女帝ウスラーダ」として敬っています。

ウスラーダ (Sep.17 2012)

彼女は1987年11月19日に、あの飼育環境が劣悪なカザン市動物園で生まれていますから現在25歳になるわけです。 彼女はあのペルミ動物園のアンデルマの息子であるメンシコフをパートナーとして今まで15頭の子供を成育させていますが、私の知る限りでは飼育下の雌のホッキョクグマの出産・成育の最高記録は16頭のはずですので、それに並ぶのにあと1頭に迫っていることになります。 ただし、同一パートナーとの繁殖としての記録では、15頭はもう最高記録となっているはずです。 彼女の子供たちの性別の内訳は雄(オス)が12頭、雌(メス)が3頭ということになります。この雌の3頭、すなわちウスラーダの娘たちですが、これがまた大変なものです。 すべてが繁殖に成功しているわけです。

a0151913_1492114.jpg
長女のシモーナお母さん (2012年9月22日撮影 於 モスクワ動物園)
Nikon D5100
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

まず1994年11月27日生まれの長女のシモーナ (モスクワ動物園)ですが、彼女についてももう今更申し上げる必要も無いでしょう。 彼女についてはその育児の様子も含めて、ここで散々ご紹介してきた通りです。 円山動物園のララと同じ年齢で誕生日は一週間しか違いません。 シモーナは現在まで11頭の成育に成功しています(*注 – 例によってロシアの血統情報の不備のため、数え方によっては若干頭数が異なります)。 最近では一昨年2011年の11月に産んだ三つ子の母親としてマスコミの記事にも何度もその姿を登場させています。

a0151913_1532082.jpg
次女のコーラお母さん Photo(C)Radek Mica/AFP/Getty Images

次女は1998年生まれのコーラ( チェコ・ブルノ動物園) です。 このコーラについてはここでいくつもの写真と映像でご紹介しているように、昨年11月24日にコメタとナヌクの双子を産んでおり現在育児の真最中です。コーラは2007年11月にもトムとビルの双子を産んでいます。

a0151913_1553442.jpg
三女のリアお母さん Photo(C)Getty Images

三女は2000年12月9日生まれのリア (オーストラリア・ゴールドコースト、シーワールド) ですが、このリアは今年5月9日に一頭の赤ちゃんを出産しており(出産当初は2頭)、先日初めて戸外に登場した姿はすでにご紹介しています。 このリアがウスラーダお母さんに別れを告げてロシアからオーストラリアに移送される様子については以前の投稿である、「ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ」をご参照下さい。

女帝ウスラーダの3頭の娘たちはこうして見事に繁殖に成功しているわけで、「この親にしてこの娘あり」とでもいったところでしょうか。 ウスラーダお母さんは私の個人的に考えたホッキョクグマの母親のタイプとしては「理性型」であり「対象関与型」に分類されるわけですが、ではこの3頭の娘たちはどういうタイプかと言えば、シモーナは「情愛型」で「対象関与型」です。 コーラとリアについてはどういうタイプなのかは私自身が育児を見ていないのでわかりませんが、写真や映像で見る限り「情愛型」であるような気もします。 それが正しいとしますと、この点において3頭の娘たちは自分たちの母親であるウスラーダとはかなり違ったタイプの母親であるような気がします。 少なくとも私がすでに体験したシモーナの育児は、まさにウスラーダとは相当に違うタイプであることだけは間違いありません。 ホッキョクグマの母親像というのは、その母親の数だけあるという事実には驚いてしまうわけで、誰一頭として同じ子育て(子供たちへの接し方)をするホッキョクグマの母親はいないという事実に気が付いたのも私としては近年における大きな収穫でした。

さて、そうなるとこの女帝ウスラーダの母親はどんなホッキョクグマであったかも問題となるわけです。 ウスラーダの母親である名ホッキョクグマであったディクサ (1973 ~ 2006) については以前にも少しだけ触れたことがありましたが、実はこのディクサほど過去においてベールに包まれた伝説的存在のホッキョクグマはなかったでしょう。 その女帝ウスラーダの母であった今は亡きディクサの最晩年の姿を下にご紹介しておきます。
a0151913_2162153.jpg
ウスラーダの母であるディクサ (1973 ~ 2006) の最晩年の姿
Photo(C)Вечерняя Казань

このディクサは野生出身で、先日の投稿である「ロシア極北 ・ カラ海に面したディクソンの街に現れるホッキョクグマたち ~ 住民とホッキョクグマの未来」でご紹介した北極圏のディクソンの街付近で野生孤児として保護され、1975年からカザン市動物園で飼育されました。 ディクサという名前は、このディクソンという街の名前に由来しているわけです。 カザン市動物園はこのディクサは15頭の育児に成功していると述べていますが、それはいささか不正確な数字であると思われます。 ディクサと同時代に飼育されていたもう一頭の雌のホッキョクグマの繁殖の成功の数字を一部、ディクサの子供として血統登録したらしい疑惑があるわけですが、これについては稿を改めたいと思います。 ただしかしこのディクサは12~13頭出産していることは間違いなく、そして女帝ウスラーダが、今では伝説となった偉大なホッキョクグマであるこのディクサの娘であるという事実についても間違いありません。

ディクサからウスラーダへ、そしてウスラーダからシモーナ、コーラ、リアへと偉大な母親の系譜が受け継がれているわけです。
a0151913_319620.jpg
ウスラーダ (2012年9月17日撮影 於 サンクトペテルブルク、
レニングラード動物園) Nikon D5100
AF-S DX NIKKOR 55-300mm f/4.5-5.6G ED VR

(過去関連投稿)
世界一偉大なペアへのプレゼント ~ ウスラーダとメンシコフのバレンタインデー
ウスラーダお母さんの2頭の子供たちとの別れ
仙台・八木山動物公園のカイのロシア時代の写真
サンクトペテルブルクの動物園の双子の赤ちゃん(ロッシーの弟たち)の一般公開の動画映像
母親の子供達への接し方の違いとツインズの性格/好奇心
ロシア・サンクトペテルブルクのウスラーダ ~ 母としての素顔(1)
ロシア・サンクトペテルブルクのウスラーダ ~ 母としての素顔(2)
ウスラーダお母さんの10番目の子供、カイ (八木山動物公園 / ロシア名 : ラダゴル )のロシア時代の姿
ロシア・サンクトペテルブルクのツインズ別離の時来る ~ 1頭がモスクワ動物園へ!
ロシアのマスコミ、カイ(仙台)とロッシー(静岡)の地震・津波からの無事を大きく報じる
カイ (仙台・八木山動物公園 / ロシア名:ラダゴル) とウスラーダお母さんの物語
ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダが15頭目の赤ちゃんを出産!
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園で赤ちゃんの初登場の日が迫る
ウスラーダの赤ちゃんの登場を待つサンクトペテルブルクのレニングラード動物園
ロシア・サンクトペテルブルクのレニングラード動物園でウスラーダの15番目の赤ちゃんが遂に一般初公開!
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの15番目の赤ちゃんの近況
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの赤ちゃんの名前がロモノーソフに決まる
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園の赤ちゃんの最近の様子 ~ 新動物園建設計画が発表
ロシア極北・ヤクーツク動物園のコルィマーナのパートナーはレニングラード動物園のロモノーソフに決定か? 
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のウスラーダの15番目の子供、ロモノーソフの近況
秋晴れのサンクトペテルブルクでウスラーダ一家と再会 ~ ロモノーソフ君、はじめまして!
ウスラーダの15番目の子供、ロモノーソフの素顔 ~ 一人っ子の温和な性格か?
ウスラーダお母さん、堂々たる貫禄を見せつける理知的な母性の発露
夕方から満を持して登場のウスラーダとロモノーソフの親子
ウスラーダさん、メンシコフさん、ロモノーソフ君、お元気で! ~ ホッキョクグマ体験の至福の3日間
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のロモノーソフの旅立ち間近を同動物園が告知
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園のロモノーソフのヤクーツク動物園への移動が決定
息子との間近の別れを予感しているウスラーダお母さん ~ 冬の日のサンクトペテルブルクの親子の情景
ロモノーソフとウスラーダお母さんの親子最後の一日 ~ サンクトペテルブルクでの別れ
ロモノーソフ、無事にヤクーツク動物園に到着 ~ そして息子の去った日のウスラーダお母さんの姿
理性のウスラーダと情愛のシモーナ ~ 偉大なるホッキョクグマ母娘の性格の違い
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園での「国際ホッキョクグマの日」のイベント
ロシア・サンクトペテルブルク、レニングラード動物園の名ペア、ウスラーダとメンシコフの新たなる挑戦
by polarbearmaniac | 2013-09-07 02:00 | Polarbearology

カテゴリ

全体
Polarbearology
しろくま紀行
異国旅日記
動物園一般
Daily memorabilia
倭国旅日記
しろくまの写真撮影
旅の風景
幻のクーニャ
エッセイ、コラム
街角にて
未分類

最新の記事

フィンランド・ラヌア動物園の..
at 2017-04-28 02:00
アメリカ・コロンバス動物園の..
at 2017-04-27 11:00
ロシア極東・沿海州、ハバロフ..
at 2017-04-27 00:30
チェコ・ブルノ動物園の一歳半..
at 2017-04-26 00:30
ベルリン動物園 (Zoo B..
at 2017-04-25 00:30
モスクワ動物園の二歳半の雄(..
at 2017-04-24 01:30
ロシア・西シベリア、ボリシェ..
at 2017-04-24 00:30
オランダ・ヌエネン、「動物帝..
at 2017-04-23 00:30
ベルリン動物公園で死亡した赤..
at 2017-04-22 01:00
ロシア・シベリア中部、クラス..
at 2017-04-22 00:30

以前の記事

2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月

検索

ブログパーツ

  • このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。

ライフログ


人生と運命 1


スターリン―青春と革命の時代


モスクワは本のゆりかご


私のモスクワ、心の記憶


自壊する帝国 (新潮文庫)


甦るロシア帝国 (文春文庫)


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


ロシア 春のソナタ、秋のワルツ-1999-21st


それからのエリス いま明らかになる鴎外「舞姫」の面影


ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌 (新潮文庫)


わがユダヤ・ドイツ・ポーランド―マルセル・ライヒ=ラニツキ自伝


ベルリン戦争 (朝日選書)


Hof――ベルリンの記憶


カチンの森――ポーランド指導階級の抹殺


北京烈烈―文化大革命とは何であったか (講談社学術文庫)


慟哭の通州――昭和十二年夏の虐殺事件


主題と変奏―ブルーノ・ワルター回想録 (1965年)


藤田嗣治 異邦人の生涯


Barle's Story: One Polar Bear's Amazing Recovery from Life As a Circus Act


Hotel Adlon: Das Berliner Hotel, in dem die grosse Welt zu Gast war


Ein seltsamer Mann


Alma Rose: Vienna to Auschwitz


St Petersburg: A Cultural History


Gulag


The Guest from the Future: Anna Akhmatova and Isaiah Berlin