街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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デンマーク・オールボー動物園、DNA鑑定するも度重なる性別取り違え ~ ミラクは雌(メス)だった!

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ミラク Photo(C)Aalborg Zoo

私のロシア旅行中に流れたニュースのうち最も興味深いのがこのニュースです。 デンマーク・オールボー動物園の間もなく5歳になるミラクは幼年期の性別発表から現在に至るまで雄のホッキョクグマだとされていたわけですが、実は雌(メス)であることが判明したというニュースです。 今年の5月にオールボー動物園では2歳半のアウゴが安全用の濠に転落して重傷を負い死亡したという事件がありましたが、このアウゴの死後の検査によって実はアウゴはオールボー動物園が以前に発表していたように雄(オス)ではなく雌(メス)であることが判明したという事件があったばかりです。 つまりオールボー動物園はこれで過去5年間に2回、同園で誕生した個体の性別を取り違えていたということを意味します。(実はそれ以前にアウゴの母親であり、やはり同園生まれであるメーリクの性別も取り違えていたという話がありますが、それは脇に置いておきます。)
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ミラク Photo(C)Aalborg Zoo

実は今回のミラクの件ですが同園の発表、及びデンマークの複数の報道その他を総合しますと以下のようなことだったようです。 このミラクが2008年12月に誕生して翌年春に戸外に登場した後に命名のために性別を早めに明らかにしようとしたオールボー動物園はミラクの性別判定をDNA鑑定に委ねようとしました。 どうもその時点では同園はミラクを雌だと考えていたような節があるようです。 さて、そのDNA鑑定による性別判定の結果が「雄(オス)」でした。 その判定結果を絶対のものと考えた同園はミラクの性別を「雄」として発表したわけでした。 ところが担当飼育員さんはその後のミラクの成長を日々見ているうちに次第にこのDNA鑑定の結果に疑念を抱くようになっていったようです。
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ミラク Photo(C)Aalborg Zoo

その「疑念」というのはいくつかあったようですが、まずミラクの体型が雄の体型ではないのではないかという点、顔つきが雌ではないかという点、次に体重が同年齢の雄としては軽いのではないかという点、そしてその行動が雄を想起させるものではなかったという点です。ミラクについては「デンマーク ・ オールボー動物園のミラクがカナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村へ!」、「カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止」という最近の2つの投稿で触れている通り、オールボー動物園は雌のパートナーを確保できそうもないミラクをカナダに売却しようとしているもののEAZAのコーディネーターがそれに「待った」をかけているという状況が続いているわけです。 ちなみにこの2つの投稿でご紹介していたミラクの写真を再度ご参照下さい。 お恥ずかしい話ですが、たしかにこれらの写真で見るミラクの顔は雌(メス)の顔ですね。

さて、こうしたDNA鑑定による性別判断結果に対する担当飼育員さんの次第に強くなった疑念、そして国外への売却に備えた準備のためにミラクのDNA鑑定が再度行われることになったわけでした。 そしてその結果は「雌(メス)」ということになったわけです。 4年半前のミラクの性別判定に対する最初のDNA鑑定が何故間違った結果を出したかですが、サンプルを取り違えていた可能性も指摘されているようです。 しかしそれは考えにくいように思いますが。

ミラクが雄ではなく雌ということになりますと、今度はカナダに売却せねばならない理由が大きく失われることになります。 欧州域内にはこの世代の雄でパートナーのいない個体が何頭も存在しているからです。 このミラクに関して早速ドイツのハノーファー動物園が入手に大きな関心を抱いているそうです。 オールボー動物園としてはミラクが雄ではなく雌と判明したために売却が容易になったと言っているようですが、いささか首をかしげたくなる発言のようにも思いますね。

このDNA鑑定による性別判断の間違いの件ですが、札幌・円山動物園でのアイラの性別判定についても最初の鑑定結果は「雄(オス)」と出ていたはずで、当時の担当飼育員さんが「そんなはずがない。」と言って再度鑑定させてみたら「雌(メス)」だったということがあったのではないでしょうか。 その件といい今回のオールボー動物園の件といい、DNA鑑定によるホッキョクグマの性別判定には幾分危うさがあるということなのでしょうか。 単なるサンプルの取り違えではなく、このDNA鑑定によるホッキョクグマの性別判断には何かそれ自身の検査・判定の過程に内在されている技術的な問題点があるような気がしないでもありません。
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ミラク (左)とヴィクトリアお母さん(右)
(2011年7月19日撮影 於 デンマーク・オールボー動物園)

私も一昨年の夏にオールボー動物園を訪問した際にこのミラクに会っています。 その時の現地からのレポートにはミラクの写真はほんの少ししかアップしていませんでしたが、ミラクとヴィクトリアお母さんが瓜二つでどちらがどちらかわからないほどでした。 そうしてみると、やはりその時に性別を疑ってみるべきだったと思っています。

このミラクがヴィクトリアお母さんと一緒に戸外に初登場した際の映像をご紹介しておきます。 2009年3月22日のことでした。



それからこの下は生後11か月のミラクです。 確かに今になってみれば雌のようにも思いますが、これをDNA鑑定では雄なのだと言われてそれに対して 「この映像で見る限り実は雌である」 と反論できるほどの確たる映像にも見えませんが、是非ご覧になってみて下さい。



「性別取り違い」とはいうものの今回の件はオールボー動物園に責任があるとは言えないように思います。 ただし、事前にミラクを雌ではないかと思っていたらしい(多分、視診での判定) ものの、最初のDNA鑑定の結果がそれとは正反対で雄と判定されたときにその時点で他の検査機関に再鑑定を依頼しておくべきだったという選択肢はあったかもしれません。

(資料)
Aalborg Zoo (Sep.27 2013 - Kønsbestemmelse af isbjørn)
TV 2 | Danmark A/S (Sep.27 2013 - Zoo tog fejl af køn: Hanisbjørn er en hun)
Berlingske (Sep.27 2013 - Ups. Han-isbjørn fra Aalborg er en hun)
Fyens Stiftstidende (Sep.27 2013 - Aalborg Zoo er nu en hun)
Ekstra Bladet (Sep.27 2013 - UPS! Han-isbjørn er en hun)
JydskeVestkysten (Sep.27 2013 - Hanisbjørn fra Aalborg er en hun)

(過去関連投稿)
デンマーク ・ オールボー動物園のミラクがカナダ・コクレーンのホッキョクグマ保護教育生活文化村へ!
カナダ・コクレーン、保護教育生活文化村へのイヌクシュクの帰還とEAZAの狙うミラクの欧州域外流出阻止
デンマーク・オールボー動物園のアウゴが約5メートル下の堀に転落、重傷を負い安楽死の処置にて死亡!

(過去関連投稿  - 2011年オールボー動物園訪問記)
雨のオールボー動物園に到着、そして2組の親子と対面!
メーリクお母さん余裕のポリタンク遊び ~ 2組の親子同居の驚異!
アウゴ、その温和な性格が醸し出す満ち足りた時間
オールボー動物園2日目 ~ ホッキョクグマに魚のプレゼント
アウゴと来園者の子供たちとの交流
オールボー動物園3日目 ~ この動物園の質の高さは住民の品性の高さに見事に合致
アウゴ君は犬はお嫌い?
オールボー動物園のホッキョクグマ君たち、本当にありがとう! ~ 是非また近いうちにお会いしましょう!
by polarbearmaniac | 2013-10-08 17:00 | Polarbearology

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