街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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ロシア・ペルミ動物園でのセリクとユムカの初顔合わせは不調に終わる

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セリク (左)とユムカ (右)  Photo(C)Комсомольская правда

ロシア極北のカラ海に面したヤマロ・ネネツ自治管区のベルイ島で孤児として保護されペルミ動物園に送られた雄のセリク、そしてそのセリクの将来のパートナーとしてカザン市動物園から10月2日にペルミ動物園に到着した雌のユムカ、このまだ一歳にも満たない2頭のホッキョクグマの幼年個体の様子についてはここのところ何回も投稿しています。 私がつい先日、カザンペルミで会ってきたばかりの個体ですので、私は彼らへの関心が非常に高いわけです。 このように野生孤児として保護された個体と飼育下で育った幼年個体の組み合わせというのは最近ではアメリカ・バッファロー動物園でのカリーとルナの件が知られていますが、こういったことは日本の動物園では決して見ることのできない組み合わせで、私としても注意深く彼らの動向を追い続けるつもりです。 ここで復習のため、数日前のユムカの様子を下でご紹介しておきます。仕切りを隔ててセリクの唸り声が聞こえてきます。 ユムカもかなり慎重な表情を見せています。



さて、ところが実は10日にペルミ動物園で非常に短い時間ではあるもののセリクとユムカの初顔合わせが行われたようです。 「初顔合わせ」というのは、要するにこの2頭が分かれて暮らすスペースの仕切り扉を開けて一緒にしてみたという意味です。 その様子は、開いた扉から頭を出したユムカに対してセリクは頭を低くして唸り声を上げたにもかかわらず、今度はセリクのスペースに堂々と自信満々で入ったユムカに対してセリクは頭をさらに大きな唸り声をあげでユムカを威嚇するように近づいたそうです。 ユムカはそれ以上の冒険はせずに自分のスペースに戻ったそうです。 ペルミ動物園も随分早くこの2頭のスペースの仕切り扉を開けたわけで、これは現在の状態では無理だろうと思います。 私が先週現地で見たところでは、セリクはまだまだこのスペースにさえ慣れていない状態ですから、ましてや他の個体が自分の近くに接近するのを極度に嫌うのは当然でしょう。 まだまだ時間はたっぶりとありますから事を急ぐ必要は全くないように思います。 こういった様子の映像はコムソモリスカヤ・プラウダ紙のサイトのこのページで見ることができます。 最初に映っているのは雄のテルペイで、隣にいるユムカに対する給餌を気にしている様子が映っています。 奥に見えるのはアンデルマです。次に映っているのはユムカです。 その後には、セリクがユムカに唸り声を上げて威嚇するシーン、そしてセリクに対する給餌のシーンが続きます。

コムソモリスカヤ・プラウダ紙の報道でも、ペルミ動物園はテルペイを一時的にロストフ・ナ・ドヌの動物園に移すことを計画していることを報じています。 ただ、いつ移動させるかは未定だそうです。 また、アンデルマを現在このセリクとユムカが暮らすスペースに移動させてセリクとユムカを大きなプールのあるメインの展示場に出す計画だそうです。 もともとアンデルマは泳ぐことをほとんどしないホッキョクグマですからプールはなくてもよいかもしれませんが狭い場所に移ることになるわけですから非常に残念な話です。 世代の交代とでも考えたらよいでしょうか。 ただしメインの展示場はアンデルマとの交代展示にしてやってほしいと思います。

それからやはりペルミ動物園はユムカの名前を 「ミルカ (Милка)」 としてしまったようです。 この「ミルカ」というのはスラヴ語の語感としては非常に素晴らしい名前ではあるのですが、せっかくカザンで公募で決まった名前を変えてしまうというのは感心しません。 コムソモリスカヤ・プラウダ紙は 「ミルカ・ユーコノヴナ (Милка Юконовна)」 と父称を付けて彼女を呼んでいますが、これは素晴らしい言い方だと思います。 ロシア(語)においてこの父称というのは父親の名前をミドルネームのようにして用いる呼び方です。 たとえばあのソ連最後の書記長だったゴルバチョフは名前がミハイルですので通常はミハイル・ゴルバチョフとなりますが、父称を入れるとミハイル・セルゲーエヴィチ・ゴルバチョフ (Михаил Сергеевич Горбачёв) となります。 このセルゲーエヴィチ (Сергеевич) は彼の父親の名前がセルゲイ (Серге́й) であることを示しています。 敬意をこめて彼を呼ぶときには 「ミハイル・セルゲーエヴィチ (Михаил Сергеевич)」 とだけ呼ぶ習慣があるわけです。 ミルカと改名されたユムカの場合は父親がユーコンですので父称を付けて呼ぶとすると女性形にして 「ミルカ・ユーコノヴナ (Милка Юконовна)」 となるわけです。 このブログでこれから彼女のことをどう呼んだらよいかを考えたのですが、やはり「ユムカ」のままで行きたいと思います。 場合によっては「ユムカ (ミルカ・ユーコノヴナ)」 とも呼ばせてもらうことにします。

ともかく、ペルミ動物園はセリクとユムカ (ミルカ・ユーコノヴナ)との同居を決して急がないでほしいと思います。

(追記 1) ちなみにロシア語のアルファベット(キリル文字) のВ, в はラテン文字の V, v です。 ですので「ヴ」と表記しています。 一方、ラテン文字の B, b はロシア語 (キリル文字) では Б, б です。 この場合は「ブ」と表記しています。 ただし慣用表記がある場合は必ずしもこの限りではありません。

(追記 2) 大阪・天王寺動物園のゴーゴはこの言い方でいいますと、「クライ・ユーコノヴィチ (Край Юконович) 」 となります。 「クライ」はゴーゴのロシア時代の名前で、これに彼の父親であるユーコンの名前を父称としてつけるわけです。 ただし今度は女性形の「ユーコノヴナ(Юконовна)」ではなく男性形にして「ユーコノヴィチ(Юконович) 」 にするわけです。 実はこの「クライ」という名前もペルミで120名の応募者のなかから公募で付けられた名前です。

(資料)
Комсомольская правда (Oct.10 2013 - В пермском зоопарке встретились два Умки)
Телекомпания «Рифей - Пермь» (Oct.4 2013 - В пермском зоопарке появился второй белый медвежонок)
(追加資料)
Новый Регион (May.23 2005 - Белого медвежонка в пермском зоопарке назвали «Край»)

(過去関連投稿)
*ユムカ関連
ロシア連邦 ・タタールスタン共和国、カザン市動物園でホッキョクグマの赤ちゃん誕生!
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*2013年カザン市動物園訪問記
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*セリク関連
ロシア極北、カラ海のベルイ島で前脚をケガをして動けなくなっていたホッキョクグマの赤ちゃんが保護される
ロシア極北、カラ海のベルイ島で保護された赤ちゃんはセリクと命名され、ペルミ動物園での飼育が決定
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ロシア極北のベルイ島で密漁者の銃撃により負傷し保護されたセリク、ペルミ動物園で報道陣に公開される
ロシア極北で負傷、ペルミ動物園で保護されたセリクについて ~ ロシアでの野生孤児の個体保護の問題点
ペルミ動物園で保護されている野生孤児セリクの素顔 ~ まだ順応できない環境の激変
ロシア・ペルミ動物園におけるセリクとユムカの近況 ~ テルペイがロストフ動物園に移動か?
by polarbearmaniac | 2013-10-12 07:00 | Polarbearology

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