街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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「雪男 (イエティ)」 の祖先はホッキョクグマなのか? ~ 完全に一致した両者の遺伝子配列に深まる謎

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ネパールの僧院に保存されている「雪男」の頭皮と言われているもの
Photo : Nuno Nogueira (wikipedia)

俗に、「雪男 (Abominable Snowman)」 と呼ばれる未確認動物が世界の屋根と呼ばれるヒマラヤ山脈に生息していると信じられています。 「雪男」というのは正式にはイエティ (Yeti) というらしいのですが、その「雪男」については少ないながらも以前から目撃証言が後を絶ちません。
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1996年にネパールで撮影された「雪男」と言われる動物の姿 
Photo:Stephen Wagner

このたびイギリス・オックスフォード大学の遺伝学者であるブライアン・サイクス (Bryan Sykes) 教授が40年前にヒマラヤ山脈の奥地でこの「雪男」を射殺したという猟師が手元に残していた体毛と、10年前に採取したという「雪男」の一本の毛を入手しDNAの塩基配列を調べてみた結果、なんとその両方ははノルウェーのスヴァールバル諸島で発見された約12万年前のホッキョクグマのあごの骨のものと100%完全に一致 ("genetically identical") したとのことです。 この結果にサイクス教授自身が大きな驚きを感じているそうです。 この研究結果について英米のマスコミが一斉に大きく報道を始めています。
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ノルウェーのスヴァールバル諸島で発見された11万5千年前のホッキョクグマの顎の骨  Photo(C)Ólafur Ingólfsson/UNIS

サイクス教授が考える一番大きな可能性は、この「雪男」は古い時代のホッキョクグマとヒグマのハイブリッドではないかと考えているようですが、その他の可能性としてサイクス教授は、この「雪男」はその祖先がホッキョクグマである亜種のヒグマではないかという可能性、またヒグマと古い時代のホッキョクグマの雑種である可能性も指摘しています。 いずれにせよ、「雪男」は遺伝的にはホッキョクグマと深い関係があると考えて間違いないのでしょう。 このあたりは難しいところですね。
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「雪男」の想像図 Image : Metro News

ただしかし私が不思議に感じるのは、目撃された「雪男」は多くのケースで二足歩行であり、ホッキョクグマやヒグマは基本的に四足歩行です。 このあたりがどうも理解に苦しむところです。 有史以前のホッキョクグマの原型である「古ホッキョクグマ (Prehistric Polar Bear)」 が独自の進化を遂げて二足歩行可能となったのが「雪男」の正体なのでしょうか? しかしともかく約12万年前のホッキョクグマと100% 同じ遺伝子配列をもつ生物が現在も存在しているというのは事実であるということでしょう。 そして「雪男」は霊長類ではないことははっきりしたと思います。  サイクス教授はこの研究結果を来春に発売となる "The Yeti Enigma: A DNA Detective Story" という著作の中で正式に詳しく発表するそうです。

(*追記 - サイクス教授自身がBBCのニュース番組で今回の件を説明している映像をご紹介しておきます。 サイクス教授はこの番組の中でホッキョクグマの顎の骨の化石を4万年前のものと言っていますが、ノルウェーの研究所は11万5千年前のものだと判定しています。 どちらが正しくても今回の研究結果そのものには全く影響しません。)



(*追記2 - このサイクス教授の研究についてイギリスのChannel-4 が三部構成のドキュメンタリー番組としてこの日曜日から放送するそうです。 その予告篇をご紹介しておきます。)



(資料)
The Daily Telegraph (Oct.17 2013 - 'Yeti lives': Abominable Snowman is 'part polar bear and still roams the Himalayas')
The Independent (Oct.17 2013 - Has the Yeti mystery been solved? New research finds 'Bigfoot' DNA matches rare polar bear)
Daily Express (Oct.17 2013 - The mystery of the Abominable Snowman may have been solved – by DNA)
Phys.Org (Oct.17 2013 - Mythical yeti 'could be descended from ancient polar bear')
The Guardian (Oct.17 2013 - 'Yeti' DNA matches ancient polar bear, scientists find)
Mirror (Oct.17 2013 - Has Yeti mystery finally been solved? Bigfoot could be cross between ancient polar bear and brown bear)
The University Centre in Svalbard (Jul.24 2012 - Polar bears much older than assumed)

(過去関連投稿)
ホッキョクグマの起源について(1) ~ 諸説の成立過程を整理する
ホッキョクグマの起源について(2) ~ ホッキョクグマ版 「イヴ仮説」 の登場
ホッキョクグマの起源について(3) ~ 画期的な新説が登場するも依然として残る謎
ホッキョクグマの起源について(4) ~ 衝撃的で強力な新説の登場により通説が遂に崩壊へ
ホッキョクグマの起源について(5) ~ ホッキョクグマとヒグマとの進化過程での交配を否定する新説登場
by polarbearmaniac | 2013-10-18 01:00 | Polarbearology

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