街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・オハイオ州、コロンバス動物園のアナーナとオーロラの双子姉妹、初産でのダブル出産なるか?

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コロンバス動物園のオーロラとアナーナの双子姉妹
Photo(C)National Geographic/Joel Sartore

とうとう10月も下旬になってしまいました。 いよいよこれから来年の1月初旬まで、ホッキョクグマの出産シーズンを迎えることになります。 本当に早いものです。 昨年のホッキョクグマの出産シーズンではアメリカ動物園・水族館協会 (AZA - Association of Zoos and Aquariums) が作成した 「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Polar Bear Care Manual)」(pdf) をテキストにしてその時その時の具体的な事例を検証しつつ、ホッキョクグマの出産に関する知識を蓄積しようと試みたわけです。 今年の出産シーズンにあたってもその姿勢は維持してきたいと思っています。 (*追記 - さらにもう一つテキストを用意しています。) それから今までもそうですが、視野は全世界に拡げて見ていきたいと考えています。 ホッキョクグマという同じ種を扱うわけですから、そこに国内と国外を分ける必要性などないからです。 今年のシーズンの日本では、世界的レベルでも「大本命」であるララの出産の順番の年ではありません。 ですから日本の状況は混沌としていると言って良いでしょう。 また、同じく常に「大本命」であるモスクワ動物園のシモーナも出産の順番の年ではありません。 しかし世界にはまだまだウスラーダも含めて「大本命」「本命」が何頭か控えていますので低調な年にはならないだろうと予想しています。 それどころか、今まで予想もしなかった動物園で出産のニュースが流れるケースが今年はむしろ多いのではないかと予想しています。

現時点で国内外のいくつかの動物園でホッキョクグマの妊娠・出産の可能性があるというニュースも流れてはいますが、あまりそれに拘泥しない姿勢で行きたいと思っています。 いちいちそういった情報にここで敏感に反応してしまうと、結果にたいする失望も大きくなってしまうからです。 しかしそういった中でも一つだけ、ここで「ホッキョクグマの出産の可能性」に関するニュースについてご紹介しておくのも無駄ではないのではないかと思われる動物園があります。 それはアメリカ・オハイオ州のコロンバス動物園 (Columbus Zoo and Aquarium) です。 最初に予備知識の意味も兼ねていただき、「アメリカ ・ オハイオ州、コロンバス動物園のアナーナとオーロラ、美しき双子姉妹の楽しいハロウィーン」、「アメリカ ・ オハイオ州、コロンバス動物園に登場したナヌークへの期待 ~ 25歳の雄の繁殖能力への希望」 という2つの過去の投稿をご参照いただければ幸いです。 ここで今年の夏のコロンバス動物園でのアナーナとオーロラに対する氷のプレゼントの映像を見ておくことにしましょう。



2006年11月に同じオハイオ州のトレド動物園で生まれた双子の姉妹であるアナーナとオーロラは間もなく7歳になろうとしています。 この双子姉妹と昨年10月にニューヨーク州のバッファロー動物園から移動してきた野生出身で間もなく26歳になるはずの雄のナヌークとの間で今年の2月と3月に繁殖行為が確認されていたそうで、コロンバス動物園としては双子姉妹のダブル出産に大きな期待をかけているというニュースです。 仮に出産があればこの双子姉妹にとっては初産となるわけです。 雄のナヌークはコロンバス動物園に移動してくる前のバッファロー動物園で2012年春にアナーナ(札幌のデナリの異父同母の妹)との間で繁殖行為があり、そしてあの人工哺育で育てられたルナが誕生していますので繁殖能力は証明済です。 双子姉妹と繁殖との関係については以前にも「カナダ・トロント動物園のオーロラとニキータの物語 ~ 双子姉妹と繁殖との関係」という投稿で考察をくわえてみたことがありましたし、さらに「『ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)』よりの考察(9) ~ 同居を許容しうる雌雄の頭数構成」 という投稿に書きましたように、雄1頭に雌2頭で同居させるのは繁殖成功の可能性が高くなる傾向があると考えられ、かつてのソ連などでも基本的にこの組み合わせての繁殖を行って成功してきたことにも触れています。 今回のこのケースはまさにそれに当たりますね。
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ナヌーク Image : WIVM.com

コロンバス動物園はこの姉妹のダブル出産に備えて、それぞれがメインの展示場とは隔離さえた特別スペースに移動しており、産室のある室内につながるその屋外のスペースにはそれぞれプールもあるそうで、このアナーナとオーロラの双子姉妹がリラックスした気持ちで出産に備えられるように事前に施設を改良して万全の準備をしていたそうです。 産室につながる室内にはいつでも自由に出入りできるようにしてあるようです。 これはなかなか良いですね。 日本でよくあるように、ある日を境にして「室内(産室)に閉じ込める」、「室内(産室)に収容する」 という発想は全くないということです。 雄のナヌークは展示場に出ているそうですから来園者がコロンバス動物園でホッキョクグマが見られないということにはならないわけです。 やはり面積が広く、そしてこうした特別スペースを用意できるほどの施設はやはり素晴らしいと思います。

コロンバス動物園がこのアナーナとオーロラの双子姉妹の両方が妊娠しているのではないかと考える理由は以下の事実からだそうです。 まず、2頭共に夏に体重が70キロ近くも増加し、2頭共に雄のナヌークに対して敵対的な態度を取っていたこと、そして食べ物にえり好みが生じていることを理由にしています。 ここで昨年11月初旬の投稿である「『ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)』よりの考察(3) ~ 胸部の変化は妊娠の兆候と言えるのか?」を再度ご参照いただきたく思います。 そして再度AZAのマニュアルをチェックしてみましょう。 AZAのマニュアル妊娠の(可能性)の兆候として以下を挙げています。 抜粋します。

- Pregnant females tend to gain a lot of weight, ...towards
 the end of summer.

- (Female Polar Bears) become less tolerant of the male as
 parturition approaches.

- ...and her appetite will also decrease.


まさにアナーナとオーロラはAZAのマニュアルで示す「妊娠(の可能性)」通りの兆候を示しています。 この姉妹が見せていた偏食というのは、今まで食べていたもののなかで食べなくなったものがあるということでしょうから、実質的には食欲の減少を意味すると考えてもよいでしょう。 やはりコロンバス動物園はAZAのマニュアルの線に基本的に沿って考えていることがわかります。 飼育員さんへのインタビューの答えにも明らかにそういったものが良く感じ取れます。

さて、25歳の雄と現在は6歳の双子姉妹との間での繁殖に成功するかどうかは注目したいところです。 今回の出産シーズンではこのコロンバス動物園に一番注目したいと思っています。 2頭の雌の出産に関わる飼育員さんの負担は大変なものだろうと思います。 私の予想では...そうですね、やはり2頭共にちょっと厳しいのではないかと思っています。 楽観的な気持ちではないといったところでしょうか。 姉妹の2頭共に妊娠(の可能性)の兆候があるという点がひっかかるのです。 双子姉妹の両方に妊娠の兆候が見られるということは、それは偽妊娠 (pseudopregnancy) である傾向のほうが強いのではないでしょうか。 姉妹の間での心理的交感反応ではないかと考えたくなるのです。 つまり、相手が妊娠しているだろうから自分も妊娠しているのだ(つまり、負けたくないという心理)と、お互いがお互いに対して考えていることを自己に無意識に投影しているのではないかということです。 これがどちらか一頭だけの兆候であれば、それは本当の妊娠ではないかと考えたく思うのです。 1984年と88年の2回、ホッキョクグマの繁殖に成功しているコロンバス動物園ですが、その旧展示場は1994年に閉鎖され、それから2010年に全米でも屈指と評価されている現在の新展示場がオープンするまではホッキョクグマを飼育していない時代が長く続いていたコロンバス動物園が果たして今回素晴らしい快挙を成し遂げるかどうか、注目して結果を待ちたいと思います。

(資料)
Association of Zoos and Aquariums - Polar Bear (Ursus Maritimus) Care Manual
Columbus Dispatch (Oct.11 2013 - Columbus Zoo’s polar bear twins may be moms-to-be)
UPI (Oct.11 2013 - Twin polar bears may be pregnant at Columbus Zoo in Ohio)
10TV (Oct.10 2013 - Baby Polar Bears May Soon Arrive At Columbus Zoo)

(過去関連投稿)
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(3) ~ 胸部の変化は妊娠の兆候と言えるのか?
「ホッキョクグマ飼育マニュアル(Care Manual)」よりの考察(9) ~ 同居を許容しうる雌雄の頭数構成
アメリカ ・ オハイオ州、コロンバス動物園のアナーナとオーロラ、美しき双子姉妹の楽しいハロウィーン
アメリカ・バッファロー動物園のナヌークがコロンバス動物園へ ~ 新ホッキョクグマ展示場の建設開始
アメリカ ・ オハイオ州、コロンバス動物園に登場したナヌークへの期待 ~ 25歳の雄の繁殖能力への希望
by polarbearmaniac | 2013-10-21 06:00 | Polarbearology

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