街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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アメリカ・デンバー動物園、コロンバス動物園などがホッキョクグマの妊娠判定にビーグル犬の嗅覚を利用へ

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ビーグル犬のエルヴィス君 Photo(C)AP

なかなか興味深い報道がなされています。それは訓練されたビーグル犬の嗅覚によってホッキョクグマの妊娠の有無を判定しようというシンシナティ動物園が主導する研究による試みです。 何か冗談でもあるかのように感じますが、しかしこれはアメリカ動物園・水族館協会 (AZA - Association of Zoos and Aquariums) でホッキョクグマの繁殖プランを担当しているトレド動物園のメイヤーソン博士もこの試みを称賛しているそうですから、これは大真面目な話のようです。 ともかく、ホッキョクグマの妊娠の有無の判定は非常に困難であり、ホルモン値の変化によっても本当に「妊娠」と「偽妊娠」を区別する決定的な判定は現時点でも困難であるわけで、こうした犬の嗅覚を利用する試みは非常に斬新です。 アメリカでなければ考え付かない方法であると思いますね。

今回それに挑戦するのは2歳になるビーグル犬のエルヴィス君で、このエルヴィス君は極めて高い嗅覚の判別能力があるそうで、カンザス州の訓練所でいろいろなものの嗅覚による判別の訓練を受けてきたそうですが、過去に本当に妊娠していたホッキョクグマの200個もの訓練用のサンプルが訓練所に送られ、それと全く繁殖行為のなかったホッキョクグマのサンプルを加えてそれらを用いてエルヴィスを一か月ほど訓練してみたそうです。 その訓練の様子をご紹介しておきます。



最初はしばらくの間、正解率は50%ほどだったそうですが、ある時から急に正解率が飛躍的にアップし、現在では彼は95パーセントの確率で妊娠していた雌のサンプルを嗅ぎ分けることに成功しているとのことです。 こういったことからコロラド州のデンバー動物園やオハイオ州のコロンバス動物園は自園で繁殖行為のあった雌のサンプルをこの訓練センターに送ってエルヴィスの嗅覚による判定に期待しているとのことです。 デンバー動物園では11歳のクランベアリー(彼女は以前にピッツバーグ動物園で堀に転落して重傷を負ったものの大手術によって救われたホッキョクグマです。 過去の投稿の「ホッキョクグマが堀に落ちたらどうなるか? ~ 大ケガから回復したホッキョクグマ、元気に故郷に里帰り!」をご参照下さい。 
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コロンバス動物園のオーロラとアナーナ Image : NBC4i.com

そしてコロンバス動物園も双子姉妹であるオーロラとアナーナのサンプルを訓練センターに送付したそうです。 このオーロラとアナーナについては先日の投稿である、「アメリカ・オハイオ州、コロンバス動物園のアナーナとオーロラの双子姉妹、初産でのダブル出産なるか?」をご参照下さい。
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訓練センターに送られたサンプル(プロテイン) Photo(C)AP

実はこの訓練センターには全米の動物園で今春に繁殖行為にあった17頭のホッキョクグマのサンプルがそれぞれ二個ずつ、合計34のサンプルを入手しているそうで、それらを全てにエルヴィスの嗅覚による妊娠判定を行う予定だそうで、近日中に結果が各動物園に通知される予定だそうです。 それから、下のニュース映像はカンザスシティー動物園のバーリンの出産への期待と今回のエルヴィスの嗅覚判定について報じているものです。カンザスシティー動物園もエルヴィスの嗅覚判定に期待しているようですね。 冒頭はCMです。



この下のTVニュースはデンバー動物園のクランベアリーの妊娠判定について報じています。 冒頭はCMです。



今回注目されるのは、エルヴィスが訓練を受けたときに使用されたサンプルは「妊娠した(pregnant)個体のサンプル」と「繁殖行為のなかった個体」のサンプルが用いられている点です。 この「妊娠した」は「出産した」ということをストレートに意味するのであれば、「偽妊娠(pseudopregnancy」 のサンプルは排除されていることを意味します。 こういうやり方でエルヴィスが訓練を受けたのであれば、「偽妊娠(pseudopregnancy」 の場合についてエルヴィスは反応しない可能性があり、つまりそうなると「妊娠」と「偽妊娠」をこのやり方で区別することも不可能ではなくなることを意味します。 AZAとしては今回のエルヴィスの嗅覚判定によって「妊娠していない」 とされた個体でも引き続き産室内に留め置くことを該当動物園に通知しているそうですが、それは妥当なことだと思います。

それからもう一つ、全米の動物園で今春に繁殖行為のあった雌が少なくとも17頭もいるという事実です。おそらく毎年そのくらいの数だと思います。しかし実際に出産に成功し、そして春になって赤ちゃんと一緒に戸外に出てくるお母さんは17頭のうちせいぜい1頭ほどでしょう。実に厳しい確率であるということです。

今回のエルヴィス君の嗅覚判定、いったいどういう結果が出るでしょうか。非常に楽しみです。

(*追記 - デンバー動物園がこのエルヴィスの嗅覚識別能力に期待している様子を伝える営巣をご紹介しておきます。11月7日の段階でクランベアリーの食欲は落ちていないことも明らかにされています。 つまり妊娠の兆候がまだ見られないという状態のようです。 冒頭はCMです。)



(資料)
Cincinnati.com (Nov.4 2013 - Beagle's nose knows when polar bears are pregnantElvis the beagle may help fetch more polar bears)
The Washington Post (Nov.4 2013 - Can a beagle’s nose tell when a polar bear is pregnant? Ohio zoo’s conservationists think so)
WAVE News (Nov.4 2013 - Beagle to 'sniff out' pregnant polar bears at Cincinnati Zoo)
NYDailyNews (Nov.4 2013 - Ohio zoo uses beagle named Elvis to determine when polar bears are pregnant)
NBC4i.com (Nov.4 2013 - Columbus Zoo Uses Beagle To Test For Polar Bear Pregnancies)
9NEWS.com (Nov.4 2013 - 'Elvis' will predict Denver polar bear pregnancy)
KSHB (Nov.4 2013 - Dog sniffs out polar bear pregnancies)
The Scotsman (Nov.4 2013 - Hopes beagle Elvis can detect polar bear pregnancy)
(追加資料)
Fox8WGHP (Nov.7 2013 - Beagle helps determine if polar bear is pregnant)
by polarbearmaniac | 2013-11-05 16:00 | Polarbearology

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