街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ・マニトバ州 チャーチルの街中で2頭のホッキョクグマが自然保護官に射殺される

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Photo(C)Getty Images

9月の事件に引き続いてまたチャーチルで事件が起きました。 ごく簡単にまとめますとこういうことです。 先週金曜日の早朝5時頃にハロウィーンのパーティーから帰宅中の二人連れが街の通りを歩いていたところホッキョクグマに遭遇したため恐怖で叫び声を上げたのを聞きつけた住民の一人である69歳の老人が外に出たところ、ホッキョクグマは二人連れの一方である30歳の女性を背後から襲い掛かっており、その老人はシャベルを使ってホッキョクグマの注意をその女性から逸らそうとしたところ、そのホッキョクグマは今度は外に出てきたその老人に襲い掛かってきたそうです。 別の家の18歳の青年が20発近く銃を威嚇発砲してホッキョクグマを追い払おうとしたものの効果がなかったために、その青年は今度はトラックを発進してホッキョクグマに突進したところやっとそのホッキョクグマを追い払うことに成功したそうです。 その車を運転した青年はすぐに負傷した老人を車に引きこみ、そして病院まで運ぶ途中で連絡で駆け付けた救急車に負傷した老人を引き渡したとのことです。 老人はいくつもの傷を負っていて血だらけになっており、かなりの苦痛に耐えていたそうです。 一方、最初に襲われた女性も別の住民に助けられて病院に運ばれたそうですが、やはり出血しており後頭部を噛まれていたそうです。この二人の負傷者はチャーチルからウィニペグの病院に移送されたそうです。
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69歳の老人宅とホッキョクグマの注意を引くため使用されたシャベル
Photo(C)CTV

連絡を受けて駆け付けた自然保護官は、2人を襲ったこのホッキョクグマを追跡し、そして射殺したとのことです。 さらに付近にいたもう一頭のホッキョクグマも射殺したそうですが、この2頭目のホッキョクグマは子供を連れていた母親だったそうで、その子供は麻酔銃で眠らされチャーチルのホッキョクグマ保護収容施設 に収容されたそうです。 この施設については先日、「カナダ・マニトバ州、チャーチルのホッキョクグマ保護収容施設 (俗称 “Polar Bear Jail”) について」 という投稿でご紹介したばかりでした。 今回の件を報じるカナダ放送協会 (CBC) のニュース映像をご紹介しておきます。 尚、映像に登場しているホッキョクグマは今回射殺されたホッキョクグマではありません。



さて、先日の投稿である「カナダで人里に現れたホッキョクグマに対する2つの事件への自然保護官の対応」でご紹介した2つの事件ではホッキョクグマは人家付近に現れたり、あるいは押し入ったりしてはいたものの人間を襲っていないために射殺されるということはなかったわけですが、今回は2名の人間を襲っており、こういうケースは射殺されるケースが非常に多いということです。 一度人間を襲ったホッキョクグマは再度また人間を襲うだろうと考えられているためです。 しかし今回の事件ではやや問題があるように思います。 それは、今回の事件でホッキョクグマが人間を襲った現場からそれほど離れていない場所にたまたまいた親子のホッキョクグマのうち母親のほうを自然保護官は射殺しているわけで、百歩譲ってこれが誤射だったとしても発砲は本当に必要だったでしょうか。 この親子は、とんだとばっちりを受けてしまったわけです。 実に可哀想なことをしたものです。 保護収容施設に収容された子供はおそらくまだ一歳になったかならないかの幼年個体ですので、チャーチルのホッキョクグマ保護収容施設としては例の30日間の収容期間の終了後も幼すぎて野生に放つことはできませんので、結局はどこかの動物園に行くことになるのではないでしょうか? 

それから、次はこれは毎度のことですが人間の側の非についてです。、チャーチルの街付近にホッキョクグマたちが集結してくるこの季節の朝の5時に通りを歩くなどということはホッキョクグマに「襲ってください」というようなものです。 チャーチルの町では、こういうことは絶対にせず自動車で街中を移動しなさいという注意が住民に徹底されているはずです。 にもかかわらずこの二人連れ、そして9月の事件の被害者(「カナダ・マニトバ州チャーチルで人を襲った3歳のホッキョクグマがアシニボイン公園動物園で飼育へ」 という投稿でご紹介しています)は共に朝の5時に街中を徒歩で移動していてホッキョクグマに襲われたわけで、そういったこの街での注意事項を無視しているわけです。 人間の側の不注意そして非が、結局はホッキョクグマの射殺につながってしまうのは何か釈然としません。 今回襲われた30歳の女性は病院で、”That crazy bear tried biting my head off.” と語っているそうですが、crazy だったのはホッキョクグマよりも、こんな季節のこんな時間に街を歩いていた御自分の感覚のほうではないでしょうか。 彼女を助けようとした69歳の住民の老人が重傷を負ったのも、もとはと言えばこの女性の不注意と慢心が招いたことだと言っても過言ではないでしょう。 チャーチルの町長さんは今回の事件についてこう語っています。

"That's just how it is in this community. We co-exist with
bears; they're coming through the area, waiting for the ice
to form. This is one of those challenges that we, as a
community, are faced with."


チャーチルの街に暮らすということが何を意味するかについて全てを語っているように思います。

(資料)
CBC News (Nov.1 2013 - Man, woman attacked by polar bear in Churchill)
The Globe and Mail (Nov.1 2013 - Man and woman hurt in attack by polar bear in Churchill)
Winnipeg Free Press (Nov.1 2013 - Two people injured in polar bear attack in Churchill) (Nov.4 3013 - Woman released following polar bear attack)
CTV News (Nov.1 2013 - Two polar bears shot after attack injures two people in Churchill) (Nov.3 2013 - Neighbours fired guns, threw shoes, to stop Manitoba polar bear attack)
Global News (Nov.3 2013 - Neighbours raced to save man from polar bear)

(過去関連投稿)
カナダ・ニューファンドランド島で民家に押し入ったホッキョクグマが射殺される
カナダ・ニューファンドランド島で再びホッキョクグマが射殺 ~ カナダ警察による 「緊急処置」 との説明
カナダ・ニューファンドランド島で目撃されたホッキョクグマがまた射殺される
カナダ・ニューファンドランド島で目撃されたホッキョクグマ、生け捕りにされ無事に無人地帯に移送される
カナダ、ニューファンドランド・ラブラドール州でまたホッキョクグマが射殺される
カナダ・ニューファンドランド島で無許可でホッキョクグマを射殺した男が訴追される
カナダ・マニトバ州チャーチルで人を襲った3歳のホッキョクグマがアシニボイン公園動物園で飼育へ
カナダで人里に現れたホッキョクグマに対する2つの事件への自然保護官の対応
カナダ・マニトバ州、チャーチルのホッキョクグマ保護収容施設 (俗称 “Polar Bear Jail”) について
by polarbearmaniac | 2013-11-06 02:00 | Polarbearology

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