街、雲、それからホッキョクグマ ~ Polarbearology & conjectaneum


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カナダ北部・ヌナブト準州のアーヴィアト村落に現れるホッキョクグマたち

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Photo(C)Jake MacDonald/Uphere
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カナダ北部ヌナブト準州のアーヴィアト村落 (Hamlet of Arviat) はあのチャーチルよりもさらに300キロ北に位置したハドソン湾に面した人口2300人ほどの町です。 住民の多くはイヌイットであり住民の多くは狩猟と漁業で生計を立てています。 この村落ではWWFとの協力のもとでこのアーヴィアト村落に姿を現すホッキョクグマから村民が自衛のために通電フェンスなどを設置することによってホッキョクグマを射殺せずに済むようになったという件について以前、「カナダ北部・ヌナブト準州のアーヴィアト村落で試みられた『ホッキョクグマとの衝突軽減計画』が大きな成果」 という投稿をしていますのでまずそれをご参照いただきたくとともにカナダ放送協会(CBC)がそれに関して報じている映像をご覧いただきたく思います。



この村落付近には毎年10月中旬から12月初頭までホッキョクグマがとりわけ多く姿を現すわけですが、見回り担当者に言わせると例年は毎日7~8頭を見かけたものが今年はその数が増えているそうです。 昨年は非常に効果をあげた通電フェンスですが、ホッキョクグマたちも最近は頭を働かせているようで、そういう障害を乗り越えるホッキョクグマも出てきたそうです。 そういったホッキョクグマは前脚でフェンスの一本のケーブルを他のケーブルに接触させてショートさせることによって警報システムを麻痺させ、そして悠々とフェンスを通過する術を覚え始めたようです。 10月初めにはそうやってフェンスを通過したホッキョクグマが犬ぞり用のシベリアン・ハスキーに襲い掛かって殺してしまうと言う事件も発生したそうです。 そういった状況にもかかわらず、幸いなことにまだ今年は自衛のためのホッキョクグマ射殺は発生していないとのことです。 ちなみに、このアーヴィアト村落にホッキョクグマを見に行くというツアーもあります。 チャーチルに行くよりもこちらのほうが「通好み」かもしれません。 Natural World Safari 社が紹介しています。 それから以前にもご紹介していますが、カナダの Arctic Kingdom Polar Expeditions社が企画している “Polar Bear Migration Fly-In Photo Safari” というツアーでは至近距離からのホッキョクグマ写真撮影がツアーの目玉になっているようです。 間違いなくアーヴィアト村落付近のほうがチャーチルよりもホッキョクグマ遭遇率は高いでしょう。
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アーヴィアト村落に現れたホッキョクグマ Photo(C)CBC

今年はカナダのチャーチルにしてもロシアのチュクチ自治管区にしても人家付近に現れるホッキョクグマのニュースが多いような気がします。 以前に比べてそれだけ彼らはより空腹になっているのだという解釈が自然ですが、断定するためにはもう少し厳密なデータと説明が欲しいところです。温暖化による海氷面積の縮小による生存圏の縮小といった長期的傾向よりも、別の何か短期的・中期的な要因によって生じている可能性は十分にあり、こういったことを見極めるためにはこれから5年ほどの状態つまりこれから毎年人家近くに出没するホッキョクグマたちの数がどんどん増えていくのかどうかに注視する必要があります。 この下の映像はカナダ放送協会 (CBC) の4年前の番組で、アーヴィアト村落のイヌイットたちは目撃するホッキョクグマの数は以前より増えているからホッキョクグマの頭数は減少していないと主張しているのに対して科学者は、それは食べ物を求めて人里近くに出没するホッキョクグマが増えただけであり、調査によればハドソン湾のホッキョクグマの生息数は減少しているのだと主張し、全く相容れない考え方がぶつかっていることを報じています。 この主張のぶつかり方だけに関するならばイヌイットの主張は主張としての体をなしていないというしかありません。 目撃頭数イコール生息数とは到底言えないからです。



それからこれは以前にご紹介したことがあったでしょうか、やはり2008年の"The Truth About Polar Bears" というイギリスのITV(Independent Television)が制作した番組ですが、なかなかバランスのとれた内容だと思いますのでご紹介しておきます。 もちろんアーヴィアト村落も登場しています。 やはりこの番組でも「経験」と「科学」の相克について述べられています。 Part1 からPart2まであります。









以前に 「温暖化による海氷面積減少にも影響を受けず生息数が減らないチュクチ海地域のホッキョクグマたちの謎」 という投稿をしていますが海氷面積が減少してもホッキョクグマたちの生息数を支えうるだけの逆方向のベクトルが働く要因があれば短期的・中期的には特定の地域でホッキョクグマの生息数は減少しない、あるいは場合によっては増加する場合があると言えるでしょう。 しかしそういった逆方向のベクトルによってもホッキョクグマの生息数を支えきれなくなる臨界点が必ずやってくるわけで、結局最後は海氷面積そのものが問題となることは間違いありません。 要するに、温暖化による生存圏の縮小と、それ以外の短期的・中期的なプラスマイナスの要因をごっちゃにしてはいけないということです。

(資料)
CBC (Oct.2 2013 - Polar bear kills dog in Arviat, Nunavut)
CBC (Nov.8 2013 - Arviat faces annual polar bear invasion)
Uphere (Jan/Feb 2013 – “Besieged by bears” by Jake MacDonald)

(過去関連投稿)
カナダ北部、ヌナブト準州の村落近くでホッキョクグマ親子3頭が射殺される ~ 経験と科学の相克
ワシントン条約(CITES)第16回締結国会議とホッキョクグマの保護について ~ 賛成できぬWWFの見解
カナダ北部・ヌナブト準州のアーヴィアト村落で試みられた「ホッキョクグマとの衝突軽減計画」が大きな成果
温暖化による海氷面積減少にも影響を受けず生息数が減らないチュクチ海地域のホッキョクグマたちの謎
by polarbearmaniac | 2013-11-12 07:00 | Polarbearology

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